数日お休みをいただきありがとうございました。
石垣島を訪れて、市役所や商工会議所など回っていたのですが、場所場所で貴重なお話を聞くことができて大変勉強になりました。
それにしても石垣島、何度行っても良いところですね。
さて、今回のメモは閉経のタイミングとその症状に関する興味深いデータをまとめてみます。
自然閉経と同時に、女性体内ではホルモン動態が変化して多様な症状が現れる。
閉経時期や関連症状の重症度は、遺伝的要因、喫煙や飲酒、食習慣、病歴、肥満、社会経済状態など様々な要因に影響される。
上記の要因のうち、食事と更年期障害に関する研究が近年増加しており、様々な研究でタンパク質を多く含む食品(大豆や乳製品など)や地中海食が更年期症状を緩和すること、またn-3系多価不飽和脂肪酸を豊富に含み、n-6系多価不飽和脂肪酸を適切なバランスで含む食事が更年期症状の緩和に役立つことが示されている。
また、タンパク質リッチ食、ビタミンD、カルシウムサプリメント、乳製品摂取は閉経の開始を遅らせる可能性がある。
一方で、ベジタリアン食は自然閉経の年齢を早める可能性があり、固形脂、スナック菓子、赤身肉の摂取は更年期症状を悪化させることが示されている。
しかし、アジア圏とその他の国では食文化が大きく異なるため、海外の研究結果がどの程度アジア人に適合するかは不明。
リンクの研究は、タンパクリッチ食やサプリメント摂取量と自然閉経年齢および更年期症状との関係を分析した中国の大規模横断研究。
中国12省13都市26地区・郡から35~60歳の住民52,3437人を対象とした。
平均自然閉経年齢を平均値と中央値で示し、ロジスティック回帰モデルを用いてタンパクリッチ食の摂取、サプリメントの使用、自然閉経年齢および更年期症状との関係を調査。
【結果】
平均自然閉経年齢は49.46歳(±3.22歳)、中央値は50歳だった。
魚の摂取頻度が増加するにつれて自然閉経年齢は遅れ、更年期症状の重症度は徐々に低下し、特に身体症状、精神症状、泌尿生殖器症状との関連で有意な負の相関を示した。
牛乳と大豆製品は、更年期症状の様々な側面と有意に負の相関を示した。
カルシウムと鉄サプリメントは、更年期症状重症度と有意に正の相関があった。
BMIが18.5以上の集団で、魚の摂取は更年期症状と有意に負の相関を示した。
BMIが18.5~27.9の集団で、牛乳摂取が更年期症状と有意な負の相関を示した。
すべての集団において、大豆製品の摂取は更年期症状と有意な負の相関を示した。
【結論】
上記の結果は、魚、乳製品、大豆製品の摂取を増やすことが更年期症状緩和のための効果的な戦略である可能性を示唆しており、更年期女性への食事介入に貴重な指針を与えている。
この研究は横断的デザインであるため因果関係を確立することはできないが、鉄サプリメントの使用には注意が必要。
魚摂取と閉経年齢および症状との関連性
・この研究では魚の摂取頻度が高いほど閉経が遅れることが示された。魚に豊富に含まれるオメガ3脂肪酸とビタミンDが重要な保護的役割を果たすと考えられる。魚の摂取量と閉経年齢との間に用量反応関係があることを強調している。魚摂取量を増やすことが女性生殖機能の健常性を維持し、生殖寿命を延ばすための効果的な食事介入となる可能性を示唆している。
・魚摂取量は更年期症状の重症度と有意に負の相関があることが判明した。具体的な症状を分析した結果、魚の摂取は体性症状、心理的症状、泌尿生殖器症状を有意に緩和した。血管運動症状については統計的有意な緩和は認められなかった。体性症状および心理的症状との間の負の相関が特に強かったことは注目に値する。サブグループ解析では、異なる年齢層、閉経状態、およびBMIが18.5以上の女性で、魚の摂取が更年期症状と有意な負の相関が示された。
メカニズム
神経伝達物質の調節:魚に含まれるオメガ3脂肪酸は神経細胞膜の流動性を高め、セロトニンとドーパミンのレベルを増加させることで脳の健康を促進することが研究で示されている。これらの神経伝達物質は気分調節に重要な役割を果たし、不安や抑うつ症状を軽減する可能性がある。
抗炎症作用:オメガ3脂肪酸であるEPAとDHAはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPAR-γ)依存性経路を介して、核因子κ-軽鎖-活性化B細胞(NF-κB)の活性化を阻害することで炎症を緩和する。この抗炎症作用によって、関節痛などの更年期症状が軽減される可能性がある。
心血管系と血流の改善:オメガ3脂肪酸はトリグリセリドを多く含むリポタンパク質代謝を再プログラムし、炎症性メディエーター(サイトカインとロイコトリエン)を減少させて細胞接着分子を制御することで心血管系の更年期症状を緩和し、高血圧を軽減する可能性がある。
ほてりの軽減:オメガ3脂肪酸は視床下部のセロトニン5-HT43受容体とノルエピネフリン経路が関与する体温調節と自律神経系バランスを調整することでほてりを軽減する可能性がある。
牛乳摂取と閉経年齢および症状の関連性
・牛乳摂取頻度の増加は閉経の遅れと関連することが示唆された。先行研究では、低脂肪乳またはスキムミルク摂取が51歳未満の女性の自然閉経を遅らせる可能性があると報告されているが、これは牛乳摂取に伴う循環エストロゲン濃度の上昇が閉経開始を遅らせる可能性がある。
・更年期症状の分析では、牛乳摂取量は更年期症状の重症度と有意な負の相関があることが判明。血管運動症状、体性症状、心理的症状、泌尿生殖器症状など様々な症状の重症度を緩和することが示された。魚の摂取と同様に、牛乳は体性症状と心理的症状により顕著な効果を示した。しかし低体重や肥満の女性ではこの効果は認められなかった。牛乳にはビタミンDとカルシウムが豊富に含まれており、更年期女性における骨粗鬆症の緩和と骨密度改善に極めて重要。ビタミンDとカルシウムは骨密度改善に大きな効果があるだけでなく、卵巣保護にも重要な役割を果たしている。卵巣は1,25-ジヒドロキシビタミンD3の標的臓器で、卵巣組織ではビタミンD受容体の発現が有意であることが研究で示されている。
・α-ラクトアルブミンを豊富に含む乳清タンパクの摂取はストレスに敏感な集団の認知能力を改善し、脳機能を高め、うつ病や不安症の発症率を低下させることが研究で示されている。研究では標準体重女性における牛乳摂取について明確な用量反応関係が認められ、体性症状と精神症状に対してより顕著な効果が認められた。この知見は、更年期女性、特に顕著な身体的・心理的症状を経験している女性は牛乳摂取量を増やすことが有益である可能性を示唆している。
大豆製品と更年期年齢およびその症状との関連
・大豆の摂取頻度が増加すると自然閉経が遅れる傾向があることが示された。更年期症状の分析では、大豆摂取は更年期症状の重症度と有意な負の相関があることがわかった。大豆には大豆イソフラボンが豊富に含まれており、女性の更年期症状を効果的に緩和できる。この化合物はエストロゲン作用と抗エストロゲン作用の両方を示すと考えられている。エストロゲンレベルが低い場合(閉経後女性)イソフラボンはエストロゲン様作用を示すが、エストロゲンレベルが高い場合は抗エストロゲン作用を示す。
・大豆製品には、イソフラボン、ビタミンE、ポリフェノール、セレンなどの抗酸化物質が豊富に含まれており、酸化ストレスを軽減し、細胞の健常性を守り、健康全般を改善する。
・大豆製品摂取量と更年期症状の重症度との間に明確な用量反応関係があることがわかった。大豆摂取量が増加するにつれて症状緩和の確率も徐々に増加し、様々な次元で更年期症状と負の相関が強くなった。その効果は、身体的症状と心理的症状で最も顕著であった。
卵と更年期年齢およびその症状との関連性
・卵の摂取頻度が増加すると自然閉経が遅れる傾向があることが示された。卵白には良質のタンパク質が豊富に含まれており、卵に含まれるω-3脂肪酸は更年期の血管運動症状を効果的に緩和する可能性がある。しかし卵黄にはコレステロールも豊富に含まれており、コレステロールの過剰摂取が心血管系の健康に悪影響を及ぼすことは、数多くの研究で証明されている。
・・・じっくりとKメモをチェックしてきた方や当院で私と会話したことがある方は、ここでのテーマにもピンときたかもしれません。閉経症状のみならず多くの婦人科疾患でテーマとなる現象。
オメガ3が良いのは文句なしで同意しますが、できればサプリじゃなくて魚として摂取した方が良いと思うのですが皆さんはどう思いますか?
閉経移行期〜閉経後の様々な症状緩和におけるより具体的な栄養戦略をお探しの方は、当院の栄養マニュアルのご利用を是非ご検討ください。
ダイエット、体質管理にも非常に有益な内容になっています。
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