活性酸素種(ROS)と抗酸化物質との不均衡によって生じる酸化ストレスは、心血管疾患、糖尿病、神経疾患、そしてがんなど様々な病態に関与している。
ROSはDNA、タンパク質、脂質、アミノ酸、炭水化物、ビタミン、金属など幅広い生体分子と反応してそれらの構造や機能を損ない、その際に生成される代謝産物や化合物はの代表例が脂質過酸化産物であるマロンジアルデヒド(MDA)で、一般にチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)法によって測定される。DNA酸化産物である8-ヒドロキシ-2′-デオキシグアノシン(8-OHdG)も広く用いられる酸化ストレス指標。タンパク質酸化はタンパク質カルボニル(PC)の測定によって評価される。過去の研究では、肺がんや卵巣がんにおけるTBARSの上昇、頭頸部がんにおける8-OHdGの増加、胃がんにおけるPCレベルの上昇が報告されている。
酸化ストレスは、血管新生、浸潤性、幹細胞性、転移など、がんの複数の特徴(hallmarks)に寄与しているため、強力な抗酸化物質によって酸化ストレスを低減することはがん予防戦略の一つ。
近年、がんにおけるビタミンDの役割が注目されている。ビタミンDは前立腺がんや胃がんでアポトーシスを誘導し、大腸がんで分化を促進し、乳がんや前立腺がんにおいて血管新生、浸潤、転移を抑制することが報告されている。また、乳がんや卵巣がんにおける抗炎症作用や、乳がんに対する抗増殖作用も示されている。
ビタミンDが酸化ストレスから保護する可能性を示すエビデンスも蓄積されつつある。
ビタミンDは乳がんや骨がんにおいて、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)やカタラーゼ(CAT)などの抗酸化酵素レベルを増加させる。また、大腸がんにおける8-OHdGや、扁平上皮がんにおけるTBARSを低下させることも示されている。
一方で、乳がん、大腸がん、頭頸部がんにおける酸化ストレスに対するビタミンDの影響についてのエビデンスはいまだ限定的。
リンクの研究は、乳がん、大腸がん、頭頸部がんを代表する複数のがん細胞株を用いて、ビタミンDが酸化ストレスに及ぼす影響を評価したもの。それらのがん細胞株においてビタミンDによるPC調節を評価した初のin vitro研究。
ビタミンD処理は、ROS(過酸化水素:H₂O₂)およびプロオキシダント酵素(XOD)を低下させるとともに、抗酸化防御機構(SOD、CAT)を強化することで、がん細胞における酸化ストレスを軽減するという仮説を立てて検証。
【結果】
対照群と比較して、ビタミンDはすべての細胞株においてROSレベルを用量依存的に有意に低下させた。
8-OHdGおよびTBARSのレベルは全細胞株で有意に減少した一方、PCおよびXODの減少は細胞種依存的であった。
ビタミンDはすべての細胞株においてSOD活性およびタンパク質発現を有意に増加させ、多くの細胞株でCAT活性も上昇した。
【結論】
ビタミンDががん細胞において用量依存的かつ細胞種特異的な抗酸化作用を示すことを示す概念実証的エビデンスを提供する。この知見は、乳がん、大腸がん、頭頸部がんの予防または治療におけるビタミンDの潜在的な抗酸化的役割を示唆している。
In Vitro Investigations on the Antioxidant Effects of Vitamin D in a Panel of Cancer Cell Lines
・乳がん(MCF-7、MDA-MB-231)、大腸がん(HCT-116、HT-29)、および頭頸部がん(Detroit-562、FaDu)細胞株において、用量依存的にROS(H₂O₂)を有意に減少させ、100nMで最大効果を示した。特定の実験条件では生理的範囲を超える高用量ビタミンDが細胞毒性またはプロオキシダント作用を示す可能性が示唆されているが、研究では一貫してROS減少が観察され、抗酸化活性が保持されていることが示された。
・メカニズム
SODおよびCATなどの抗酸化酵素の発現増加、NADPHオキシダーゼなどのプロオキシダント酵素の発現低下、およびNrf2経路の活性化が考えられる。100nMでより顕著な効果が観察されたのは、高濃度リガンドにおけるVDR媒介転写活性の増強を反映している可能性が高い。1nMではHL60-G白血病細胞におけるH₂O₂誘導ROSにほとんど影響しなかったが、100nMでは有意にROSを低下させた。
・タンパク質損傷(PC)、脂質過酸化(TBARS)、DNA損傷(8-OHdG)といった酸化ストレスバイオマーカーへの影響を評価した。
ビタミンDはMDA-MB-231およびDetroit-562細胞においてPCレベルを有意に低下させたが、他の細胞株では有意差は認められなかった。これは細胞種特異的効果を示唆する。メカニズムとしては、細胞内ROS低下およびNF-κBなどのレドックス感受性転写因子のVDR媒介抑制によりプロオキシダント遺伝子発現が低下し、間接的にタンパク質酸化損傷が制限される可能性がある。さらに、脂質過酸化の抑制は脂質酸化産物由来の二次カルボニル生成を減少させ、タンパク質構造の保護とPC全体の低下につながる可能性がある。この観察は、ビタミンDまたはその類似体補充後にPCレベルが低下した骨格筋、血液透析患者、腰痛または変形性関節症患者に関するin vitroおよび臨床研究によって支持されている。
・TBARSレベルは全細胞株で有意に低下し、特に10nMおよび100nMで顕著だった。これは、ビタミンDによる脂質過酸化抑制を支持するもの。8-OHdGは全細胞株で用量依存的に有意に低下し、ROS誘導DNA損傷に対する保護作用が示された。
VDR欠損マウスでは8-OHdG上昇が報告されており、1α(OH)ase欠損乳腺腫瘍モデルでもROSおよび8-OHdG増加が観察されたが、1,25(OH)₂D₃補充により回復した。ビタミンDは塩基除去修復などDNA修復機構の調節にも関与している可能性がある。
・酸化酵素および抗酸化酵素の調節を評価した結果、ビタミンDはXODタンパク質発現を10nMおよび100nMで有意に低下させ、特に頭頸部がん細胞で顕著だった。SOD活性およびタンパク質発現は全細胞株で増加し、CAT活性もDetroit-562を除き増加した。これらの効果はVDR依存的転写活性化による可能性が高い。
・マイクロアレイ解析ではヒト前立腺上皮細胞でチオレドキシンレダクターゼ-1が約3倍増加したことが示されている。MG-63骨肉腫細胞では48時間でSOD2増加およびSOD1減少が観察された。ビタミンDは膵細胞においてもROSおよびDNA損傷を低下させ、CAT、SOD1–3、GPx-3など抗酸化遺伝子を上昇させる。
まとめ
上記の結果は、ビタミンDががん細胞においてレドックス感受性シグナル伝達およびゲノム安定性を調節する因子であることを強く支持するもの。
ビタミンDの抗酸化作用は、プロオキシダントXODの抑制によるROS産生低下と、抗酸化酵素の増強によるROS解毒促進という二重機構によって説明される。これらはROS、PC、TBARS、8-OHdGの用量依存的かつ細胞種依存的減少を説明する。これらのレドックス調節作用は、ビタミンDががん関連経路に影響を与える初期上流イベントである可能性がある。
・・・文中に出てきたガン種でお悩みの方、がん家系の方は日常的に摂取してみてはいかがでしょうか?
ただし、妊活中の方は妊娠後に悪心が増悪する可能性があるの摂取しないほうがいいかもしれません。適宜タイミングが重要です。