スポーツアロマテラピーという興味深い分野。
過去にデータをご紹介したことはあったかなぁ・・・おそらく一回あったかどうかというとこ路だったと思いますが、いずれにせよきちんとデータとして出てくるものは珍しい。
今回ご紹介するのは日本で行われたラベンダーオイルに関する研究。
どんな結果が出るでしょうか?
もともとアロマテラピーは睡眠の質の改善、抗不安作用、抗ストレス作用、抗うつ作用、抗菌作用を目的に使用されており、近年ではビデンスの蓄積に伴って「メディカルアロマテラピー」として臨床でも使用されている。
アロマオイルの使用は吸入、経皮塗布、まれに経口摂取で、最も一般的な吸入試験では、ストレスホルモンの低下や認知・情動状態の改善といった内分泌応答が報告されている。
外用による生物学的効果に関するエビデンスは限られている。抗炎症作用や抗酸化作用が示唆されているものの皮膚バリアを超えた生理作用の機構は十分に解明されていない。
精油は比較的高い皮膚透過性を有することから、特定成分が角質層を通過して深部組織に到達する可能性があると考えられてはいる。
アロマオイルはスポーツおよびリハビリテーション領域におけるマッサージにも組み込まれており、運動後アロマテラピーはリラクゼーションおよび回復促進戦略として注目を集めているが、運動後アロママッサージによってマイオカイン応答が調節され、筋回復が改善される可能性を実験的に検証した研究はない。
リンクの研究は、治療グレードのラベンダー精油(LEO)がin vitroにおいて筋関連分子経路を調節するかどうかを検討し、LEOが骨格筋の適応および回復に関与する分子経路を調節することを示した初の報告。
再構築ヒト表皮モデルを用いたLEO成分の皮膚透過性、IL-6発現を指標としたin vitroモデルにおけるLEOの効果、筋代謝、リモデリング、適応に関与する広範な遺伝子発現変化の解析をおこなっている。
【結論】
リンクの研究は、in vitro運動モデルにおいてラベンダーオイル(LEO)が筋関連分子応答を調節することを示す新たなエビデンスを提供している。
LEOの添加は電気パルス刺激(EPS)に対するIL-6発現を増強し、筋適応、代謝リモデリング、および構造調節に関連する転写プロファイルを誘導した。
DNAマイクロアレイ解析では、LEO+EPS(−)群の方がLEO+EPS(+)群よりも多くの筋機能関連遺伝子が検出された。これは、運動刺激がミトコンドリア新生や血管新生関連遺伝子を選択的に活性化し、不要な経路を抑制するためと考えられる。一方で、LEO+EPS(+)群ではマイオカインなどの筋機能関連遺伝子が多く検出されており、LEOとEPSの併用による相乗効果も期待される。
成分分析および透過試験の結果から、リナロールが再構築皮膚バリアを透過可能であることが示され、経皮投与の可能性が示唆された。
LEO濃度が5%を超えると皮膚透過が飽和傾向を示したことは、高濃度が必ずしも高い組織曝露につながらないことを示している。
LEOは運動応答性シグナル伝達経路に影響を及ぼすことで、運動後の筋コンディショニングを支持し得る。
リンクの研究はin vitro条件下だが、スポーツマッサージ、回復戦略、統合的運動ケアにおけるLEOの治療的利用に分子基盤を与えるだろう。
3つの重要な知見
①化学分析および皮膚透過試験によって、LEOには再構築表皮バリアを透過可能な生理活性成分が含まれていることが明らかとなった。
②LEO添加は電気刺激を受けたC2C12筋管細胞においてIL-6発現を増強し、マイオカイン応答を増幅する。
③トランスクリプトーム解析の結果、電気刺激の有無に応じて異なる遺伝子発現調節パターンが認められ、LEOは条件依存的な作用を示す。
・リナロールおよび酢酸リナリル高含有LEOは、鎮静作用、抗不安作用、抗炎症作用、ならびに経皮吸収特性を有することが報告されており、メディカルアロマセラピーへの応用可能性が示されている。これらのモノテルペン成分は小型で脂溶性が高く、皮膚透過を促進する性質を持つ。
・三次元皮膚モデル解析によって、リナロールは角質層を超えて透過したのに対し、酢酸リナリルは表皮内に蓄積し、深部層には移行しないことが示された。この成分特異的かつ層依存的な皮膚分布は、スポーツアロマセラピーにおける精油マッサージ作用機序の理解に重要な示唆を与える。表在層に保持される揮発性成分は嗅覚刺激や皮膚感覚入力を介して間接的に筋機能や回復に影響する可能性があり、リナロールのように角質層を透過する成分は、皮下組織や筋組織近傍に到達し、IL-6を含む運動誘導性マイオカイン応答を調節する可能性がある。
IL-6は、運動中に顕著に誘導される代表的マイオカインで、ミトコンドリア新生、グルコース取り込み、脂質酸化、脂肪分解促進など、エネルギー代謝調節に重要な役割を果たす。また、運動後や筋損傷後の免疫調節および筋衛星細胞活性化を介して筋適応や再生にも関与する。
・研究では、電気パルス刺激(EPS)によって誘導された運動様条件下において、LEOは対照のホホバ油と比較してIL-6発現を有意に増強した。これは、LEOが単なる感覚的あるいは化粧的刺激として作用するのではなく、運動適応に関与する細胞内シグナル伝達経路を能動的に調節し得ることを示唆してる。
・興味深のは、リナロールおよび酢酸リナリルの単独投与でも有意なIL-6発現増加が認められたが、その誘導強度は精油全体を投与した場合の方が一貫して大きかったこと。これは、単一成分ではなく、LEOの完全な植物化学的マトリックスが運動応答性分子経路の十分な活性化に重要であることを示している。精油における相乗作用は広く認識されており、リナロールと酢酸リナリルの相互作用もLEOの生理活性に寄与する。
全ゲノムDNAマイクロアレイ解析の結果もこれを支持している。EPS条件下では、LEOはNr4a1、Nr4a2、IL-6といった収縮応答性遺伝子発現を強く誘導した。これらは代謝リモデリングおよび骨格筋可塑性に中心的役割を果たす。一方で、細胞骨格固定や細胞間接着に関連する遺伝子は抑制され、一過性の構造的緩和を通じて組織リモデリングを促進する可能性が示唆された。これらの協調的遺伝子発現変化は、収縮刺激後により代謝適応性の高い状態へ移行するためのプライミング応答を示す。
・・・面白いですね。手軽に手に入るLEO。運動後のセルフ筋コンディショニングに是非取り入れてみてはいかがでしょうか?