定期的な運動は、心血管疾患、がん、骨粗鬆症、糖尿病のリスクを減らす。
運動によって活性酸素種(ROS)を断続的に低〜中程度発生させることは、細胞レベルのシグナル伝達経路を調節することで抗ストレス効果ももたらす。
一方で、急激で激しい有酸素・無酸素運動は高レベルのROSを生み出して酸化ストレスを誘発し、体内の抗酸化物質を消耗させたり、疲労や損傷からの回復率とに悪影響を及ぼす。
酸化ストレスは、ROS産生と反応性中間体を解毒する能力や抗酸化能とのバランスが崩れることで起こる。ROS過剰産生による酸化ストレスは、脂質、細胞膜、タンパク質、DNAを含む細胞成分にダメージを与える重要因子であり、運動中誘発性ROSは炎症に関連した筋損傷や筋機能の遅延的低下にも関与する。
激しい運動中の乳酸蓄積は水素イオンの発生による筋肉内pHの低下と関連し、これが酸塩基平衡を乱して筋収縮機能を損なわせる。乳酸や水素イオンといった疲労関連代謝物を効率よく除去できれば、回復を早めて運動パフォーマンスを向上させられることが報告されている。
ポリフェノールはその抗酸化能によって運動パフォーマンスを高めるが、生体利用効率が低いという課題がある。この問題を解決するために、高分子(HMW)ポリフェノールを低分子化して腸管吸収を高める戦略が開発された。オリゴマー型プロアントシアニジンの生物学的可能性を示す最近のエビデンスや、重合型プロアントシアニジンを水素添加分解で低分子化できるという研究に裏付けられており、その一例として「オリゴノール」がある。
オリゴノールはプロアントシアニジン(PC)を低分子化したポリフェノールで、カテキン型モノマーやオリゴマー型PCを含んでいる。PCはカテキンの重合体なので、そのまま経口摂取しても分子量が大きすぎて吸収が限られるため、ライチ由来の高分子PCを低分子化することで開発された。
ラット実験で、20mg/kg/wを投与したところ、オリゴノールは (+)-カテキンや (−)-エピガロカテキン3-O-ガレートよりも有意に高い血中抗酸化能を示している。さらに、抗酸化物質としてのオリゴノールは、炎症性サイトカインや関連するシグナルタンパク質を抑制することで、酸化ストレス誘発性の様々な疾患を改善する。
運動誘発性酸化ストレスについては、男性がVO2maxの75%の強度で60分間ランニングした際、オリゴノール摂取がインターロイキン(IL)-6、IL-1β、コルチゾールの上昇を有意に抑え、高強度インターバルトレーニングのパフォーマンスも向上させている。この結果は、オリゴノールの抗酸化能が高強度トレーニング中のパフォーマンス維持に役立つ可能性を示唆している。
低分子ポリフェノール(LMWP)製剤であるオリゴノールはROSシグナルを完全に消失させることなく抗酸化・抗炎症効果を発揮することが示されている。この特性から、LMWPは高強度運動からの回復期において、過剰な酸化ストレスや疲労反応を和らげるための短期的・単発的な介入に適している可能性がある。
上記の効果から、疲労関連物質や酸化ストレスに対するLMWPの効果への関心がアスリート会で高まっているにもかかわらず、健康な人が高負荷運動を行った際におけるLMWPの単回または短期間の摂取がどのような影響を与えるかについての情報はまだ限られている。
リンクの研究は、ランダム化盲検クロスオーバー試験を用いて、単回または短期間のLMWP摂取が最大運動テスト中の運動誘発性疲労や酸化ストレス反応に影響を与えるかどうかを調査したもの。
プラセボ、単回LMWP摂取(S-LMWP)、および5日間LMWP摂取(5-LMWP)を含む無作為化単盲検クロスオーバーデザインで実施され、各介入間には2週間以上のウォッシュアウト期間を設定。10人の参加者がすべての条件を完遂。
運動パフォーマンス、疲労関連代謝指標、酸化ストレスマーカーは、運動前、運動直後、運動30分後に測定され、心拍数および乳酸値は運動後5分間にわたり追加測定。
【結果】
運動パフォーマンスおよび身体計測値は各条件間で有意差を示さなかったが、両LMWP群は回復30分時点における血中乳酸値がプラセボ群と比較して有意に低値を示した(プラセボ:17.09±1.29、S-LMWP:8.36 ± 0.73、5-LMWP:9.18 ± 0.60)。
運動直後に上昇したマロンジアルデヒド(MDA)は、LMWP群において30分後によりベースライン近くまで回復し、特にS-LMWP群で顕著であった。MDA変化率は、S-LMWP群がプラセボ群と比較して有意に低値だった(プラセボ:26.80 ± 3.01、S-LMWP:−8.41 ± 4.86)。
【結論】
短期LMWP(オリゴノール)補給は、パフォーマンスや運動直後の急性応答には影響を与えなかったが、乳酸値の低下や酸化ストレス指標の迅速な正常化を含む、より良好な回復プロファイルと関連していた。この結果は、健康な男性における最大運動後の回復を促進する可能性を示唆している。
・運動誘発性酸化損傷は細胞膜に悪影響を及ぼし、細胞腫脹、膜流動性の低下、イオン勾配の破綻、組織炎症、DNA損傷、タンパク質修飾などを引き起こす可能性がある。
脂質過酸化の代表的マーカーであるマロンジアルデヒド(MDA)の上昇は、筋細胞の構造的完全性の低下および細胞機能障害と関連している。
運動直後に上昇したMDA値が、S-LMWP期では30分後に有意にベースライン近傍まで回復した。この結果は、LMWPの単回摂取が運動後のMDA上昇の回復を促進することで運動誘発性酸化ストレスの軽減に寄与している可能性を示唆している。
・CKおよびLDHは筋損傷関連の代表的指標で、血清中濃度の上昇は筋細胞膜の破綻や他の組織構造の損傷を示す。研究では、S-LMWP期においてCK値がプラセボ期よりも上昇傾向を示したが個人差が大きかった。また、運動前のベースラインCK値はS-LMWP期で有意に高値だった。過去の研究では、7日以上のポリフェノール補給により運動誘発性CK値がより速やかにベースラインへ回復したと報告されていることから、S-LMWP期のCK変化は補給期間が短かったためCK応答に影響を及ぼすには不十分であった可能性がある。
・タイプI筋線維損傷の潜在的マーカーとされるCK-MBも測定した。両LMWP期におけるCK-MB値はプラセボ期より低値を示したが、統計学的有意差には至らなかった。
・LDHは筋収縮時の無酸素性解糖過程において乳酸とピルビン酸の相互変換を触媒する酵素。血清LDH活性は乳酸代謝および基礎的細胞損傷の程度を反映し、運動後の筋肉痛と関連する。5日間のLMWP補給によって、最大運動負荷試験後のLDH活性が有意に低下したことを確認した。この結果は、30日間連続でオリゴマー化ライチ抽出物を摂取した場合に運動誘発性LDH上昇が有意に抑制されたという先行研究によって支持される。
・乳酸蓄積は、最大負荷下において産生が除去を上回る状態を示し、NAD+/NADH比の変化および無酸素性解糖への依存増大を示唆する。リンクの研究では、運動後安静時の乳酸値と血清MDA値との間に正の相関が認められた。S-LMWP期では、30分安静時に血清MDAおよび乳酸がプラセボ期より有意に低下した。先行研究でも7日間のLMWP補給群では血中乳酸変化率(%)が有意に低下しており、高強度間欠運動中のパワー出力が向上したと報告されている。5-LMWP期において最大心拍数(HRmax)が最も高く、AT到達が早かった一方で、30分安静後の血中乳酸はプラセボより有意に低値だった。この結果は、5日間のLMWP摂取が最大運動負荷試験後の回復を支持する可能性を示唆している。
・有酸素運動は組織の酸化損傷増加をもたらす可能性がある。この損傷は酸化LDL(ox-LDL)産生につながり、血管内皮炎症を促進して動脈硬化の進行に寄与する。研究では、短期LMWP摂取によりMDAの有意な回復が認められたことから、LMWP摂取は最大運動負荷試験によって誘発される酸化ストレスの軽減に寄与する可能性がある。
・慢性的な抗酸化補給の効果が限定的または有害である可能性を示した先行研究の解釈も重要。高用量かつ長期のビタミンCおよびE補給は、運動誘発性ROSシグナル、ミトコンドリア新生、内因性抗酸化酵素活性化を減弱させ、トレーニング適応を阻害する可能性が示されている。これは、特に高パフォーマンスアスリートにおけるROSの無差別な抑制が逆効果となり得ることを示唆する。
LMWP補給は運動パフォーマンスや最大酸素摂取量を変化させなかったことから、短期摂取が最大運動時の生理応答を妨げることはなかったと考えられる。むしろ、回復期における血中乳酸およびMDAの低下は、LMWPが運動後の代謝回復を促進し、過剰な酸化ストレスを軽減する可能性を示唆している。
注目すべき点として、酸化ストレス指標はすべての条件で運動直後に上昇したが、ベースライン方向への回復はLMWP期、とくに単回摂取後にのみ認められた。このパターンは、LMWPが運動誘発性酸化ストレス応答を完全に消失させるのではなく、「調節」する可能性を支持している。
・・・個人的に使用したことはないので体感は分かりませんが、トレ効果やアスリートパフォーマンスの向上の前に疲労感のほうが前に出てくる時期にいる方はオリゴノールの短期摂取を試してみてもいいかもしれない。
他の抗酸化物質と組み合わせて使用するか、単体で摂取するか悩ましいところですがまずは単体で摂取して体感を見るのが良さそう。