先進国における大腸がんの5年生存率は大きく改善しているが、生存率は診断時の病期に強く依存している。
現代における大きな問題は、大腸がん(CRC)サバイバーの生活の質の低下、睡眠障害、疲労、およびがん再発リスクが高いこと。
手術後の大腸がんにおける5年再発リスクはステージII~IIIでは約30%で、手術単独で治療された進行期症例ではさらに高率となる。再発の大半は術後1~2年以内に発生し、化学療法を併用した場合の割合は6~30%に低下する。
また、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用やオメガ3多価不飽和脂肪酸によって大腸がん再発リスクを低減できる可能性も示唆されている。しかし、NSAIDsの長期使用は心血管リスクを増加させ、オメガ3補充の有効性も確立されていない。
従って、より高い有効性と少ない副作用を持つ代替戦略の特定が不可欠となっている、。
がん関連疲労(CRF)は一般的な合併症で、大腸がんサバイバーの41%で報告されている。この症状は5年以上持続することがあり、最大35%のサバイバーに影響を及ぼす。認知機能障害、早期かつ持続的な倦怠感、ほてり、身体機能低下、不眠、抑うつ、著しい生活の質の低下に直面する。特に化学療法を受けた者は高リスクとされている。
その他の寄与因子として、性別(女性が男性より多い)、独居、低学歴、少なくとも1つの併存疾患が挙げられる。
疲労の機序は完全には解明されていないが、視床下部–下垂体–副腎(HPA)軸機能障害、概日リズムの乱れ、炎症性サイトカイン、骨格筋量減少、SLC6A4遺伝子の特定遺伝子型などが関与している。
CRFではHPA軸の調節異常、慢性炎症、神経伝達物質活性の変化が報告されている。
CRF管理戦略には、薬物療法と非薬物療法の併用が含まれる。なかでも運動は、がんサバイバーの疲労軽減および生活の質向上に有益な戦略として広く認識されている。
また、健康的体重の維持、禁煙、定期的運動、高品質で健康的な食事の遵守、節度ある飲酒といったライフスタイルの改善は、がんサバイバーの死亡リスクを低減する。
健康的な食習慣を採用することは、診断前の食習慣に関わらず、全死亡およびがん特異的死亡リスクの低下と関連する。
しかし、診断後の食事改善は不可欠な一方で、疲労や再発リスク低減を目的としたエビデンスに基づく特異的栄養ガイドラインは存在しない。
がんサバイバーの食事は全ての食品群を含み、筋肉量維持・増加のための十分なタンパク質摂取、多価不飽和脂肪酸の適切な摂取、食物繊維に富む複合炭水化物の摂取増加が推奨されている。また、果物・野菜・全粒穀物に富む食事、すなわち地中海食(MD)が無病生存期間を延長する可能性を示唆されている。
リンクの研究は、地中海食遵守とがんサバイバーにおける再発および疲労との関連性を調査したもの。
1995年1月から2024年5月までのPubMed、CINAHL、Cochrane Libraryを体系的に検索し、診断後のMD遵守を報告した前向きコホート研究およびランダム化比較試験(RCT)を抽出。主要評価項目はがん再発およびCRF。
【結果】
診断後のMD遵守が高いほど、再発またはがん特異的死亡のハザードが低いことと関連していた。
CRFについては、統計学的に有意な全体効果は認められなかった。
【結論】
地中海食の高遵守はがんサバイバーにおける再発リスク低下と関連している可能性がある。
がん関連疲労に関するエビデンスは小規模なランダム化比較試験2件に限定されており、統合解析では統計学的に有意な効果は示されなかった。
Post-Diagnosis Adherence to the Mediterranean Diet and Cancer Recurrence and Fatigue Outcomes in Cancer Survivors, with Emphasis on Colorectal Cancer: A Systematic Review and Meta-Analysis
がん再発
本メタ解析では、地中海食(MD)への高遵守が、がん再発またはがん特異的死亡のハザード低下と関連していた。信頼区間はわずかに帰無値を除外したにすぎないが、関連の方向性は研究間で一貫していた。
より広範なサバイバー定義や死亡のみをアウトカムとした研究を除外した感度分析でも同様の結果が得られ、異質性は低減した。
抗酸化作用および機序的考察
MD遵守は、抗酸化物質豊富な食品を通じて疲労軽減や予後改善に寄与する可能性がある。血中リコペンやβカロテン高値は炎症低減と関連する。また、腸内細菌叢の調節や短鎖脂肪酸産生増加も大腸がんの関連機序である。
食物繊維・脂肪酸・グリセミック負荷
1日25g超の食物繊維摂取は疲労低減と関連していた。高グリセミック食は再発リスク増加と関連し、中等度のグリセミック負荷というMD特性を支持する。
脂肪酸プロファイルも重要で、低いω6:ω3比は疲労軽減と関連する可能性がある。
前立腺がんでは炭水化物を植物性脂肪に置き換えることで予後改善が示されている。
その他の食事要素
赤肉・加工肉は大腸がん転帰悪化と一貫して関連する。
カルシウムや乳製品は胆汁酸代謝やKRAS変異への影響を通じて保護的な可能性がある。
カフェインや豆類の潜在的役割も示唆されている。
がん関連疲労(CRF)
MD遵守と運動の組み合わせは、疲労および体重調整改善と関連する。
脂質プロファイルの良好さは疲労の認知面にも影響し得るが、疲労を直接評価したRCTは2件のみであり確実性は低かった。
地中海食とがん特異的ガイドラインの整合
がん生存率の向上に伴い、腫瘍学は急性治療から長期サバイバーシップへと重点が移行している。食事パターンは重要な修正可能因子である。
野菜・果物はDNA修復や免疫調節を補助し、ナッツや大豆タンパクは乳がん・前立腺がんでがん特異的死亡低下と関連する。
PUFA/SFA比や低トランス脂肪摂取は抗炎症的脂質プロファイルを反映する。
そこで本研究は、「Cancer-Adaptive Mediterranean Pattern」という実践的統合モデルを提案する。抗炎症・抗酸化フレームワークを維持しつつ、文化的背景、病期、治療歴に応じた調整を行うものである。教育、臨床家研修、腫瘍チームへの管理栄養士の統合が鍵となる。
地中海食およびAHEI-2010に関する他の研究
Baguleyら(2021)は前立腺がん患者でCRF改善を報告し、Klecknerら(2022)も化学療法中患者で疲労改善傾向を示した。Xiaら(2025)は米国サンプルでMD遵守と疲労低下の横断的関連を示した。
・・・再発に対して予防的であるというだけでも、地中海色が十分価値のある食事形態だと言えると思いますがいかがでしょうか?
現在闘病中の方にとっては、エビデンス強度に拘って試すか試さないかを判断している時間はないと思われますので、まずは食生活に取り入れていくことが大事ではないでしょうか?
地中海色で検索すれば構成食品はすぐにAIが答えてくれます。
食べるのがキツかったら、どの食品を避けるべきかの判断材料にもなるでしょう。