トレーニング理論にはいろんな方法論と自分に合う合わないがあり、エンドレス様々な議論が長年繰り返される。それもトレーニーの楽しみの一つだが、なるべく早く結果を出したいトレーニングを始めたばかりの人や結果が全ての競技者は議論よりもより正確なプロトコルを模索しているだろう。
そこで今回のメモは、高強度ローレップと低強度ハイレップがパワーリフターに及ぼす影響を比較したデータをまとめてみたい。
様々なジャンルの競技者に参考になるだろう。
様々な負荷とボリュームが筋力、肥大、持久力に及ぼす影響を広範囲にわたって調査した過去の研究では、競技パワーリフティングに必要な特異的最大筋力の向上は1RM近似値のトレーニング強度とされてきた。
高負荷低ボリューム(HL-LV)トレーニングは運動単位の同期改善や発火頻度の増加、および筋協調の強化を含む神経適応に関連し、筋力発達の基礎になると考えられている。
しかし一方で、近年示されている新たなエビデンスは低負荷高ボリューム(LL-HV)アプローチも筋力増加を引き出すことを示唆している。筋肥大に関する最近の研究でも、高負荷から低負荷まで幅広い負荷を用いることの利点が強調されている。LL-HVはリボソーム生合成の増加と相関しており、筋肥大と筋力発達の両方に寄与している。
リンクの研究は、近年の選手間におけるHL-VLからLL-HVへの趣向の変遷を踏まえて、十分にトレーニングされたパワーリフターにおける主要パフォーマンスおよび構造的アウトカムに対する12週間のLL-HVベンチプレストレーニングプロトコルと従来のHL-LVアプローチの効果を評価したもの。
26名の十分にトレーニングされた男性パワーリフターをLL-HV群とHL-LV群にランダムに割り当て、12週間の監督付きトレーニング介入を実施。
LL-HVプロトコル群は1RMの45〜60%で実施されるベンチプレスセットと高レップを行い、HL-LV群は1RMの75〜90%でセットを実施。両群とも週2回トレーニングを行い、予備反復回数(RIR)に基づいて同一の失敗近接誤差で実施。
【結果】
ほとんどの変数において群間でのパーセント変化は同程度であり、80%1RMでのMVおよび腕囲においてLL-HV群で有意な改善が観察された。LL-HVは、パワーリフターにおいてHL-LVと同等の機能的および構造的適応をもたらし、従来のHL-LVプロトコルに代わる実用的かつ効果的な選択肢となりえる。サブマックス負荷での平均速度の向上や腕囲の増加といった顕著な利点は、傷害リスクを軽減しながらトレーニング戦略を多様化できる可能性を強調している。この知見はストレングストレーニングプログラムの最適化に役立つ貴重な洞察を提供している。
・両トレーニング法ともに様々なサブマックス強度において平均速度(MV)を大幅に改善したが、LL-HVグループは1RMの80%でのMVにおいて明確な利点を示し、HL-LVグループはこの強度で同等の変化を示さなかった。この結果は負荷-速度関係と一致しており、LL-HVは高レップという性質によりサブマックス負荷での速度をより良く高める可能性がある。
・最大筋力に関して両グループとも1RMに大幅な改善が観察され、これは過去の研究結果とは対照的だった。
・筋力向上に影響を与える重要な要素として”意図的ベロシティ”が浮上した。両グループの参加者は負荷に関わらず全てのレップを最大意図的ベロシティで実行するように指示され、この意図的ベロシティへの焦点がLL-HVグループでHL-LVグループと同等の筋力向上を説明できる可能性がある。この指示がなければより軽い負荷では努力が少なくなって適応が制限される可能性があるが、重い負荷は指導に関係なく自然に最大の努力を必要とする。したがって研究で観察された差異は負荷の変動だけでなく、パワーリフターが最大意図で持ち上げるように明示的に指示されたかどうかによっても生じる可能性がある。この知見は最適な筋力を達成するために意図的ベロシティと正確なトレーニング調節を組み合わせることの重要性を強調しており、熟練パワーリフターが多様なトレーニング刺激に適応できることを示している。
・介入期間中、体重は実質的に一定のままだった。これは相対筋力の改善がLL-HVトレーニングによって達成された絶対筋力増加の直接的な反映であることを示している。これはLL-HVトレーニングが体重の変化を必要とせずに体重当たりのパフォーマンス指標を改善することで、パワーリフティングなどのストレングススポーツにおいて従来のHL-LVトレーニング法と同等、または潜在的により効果的であることを示唆している。
・構造的にも選手はLL-HVトレーニングによって良い影響を受けた。LL-HVグループは腕囲に有意な増加を示し、胸囲はHL-LVグループと比較して増加傾向が見られた。より高ボリューム、特に多様な負荷スキームを組み込むと、訓練されたアスリートの筋肥大を促進する可能性があることを示している。LL-HVにおける反復数(約15〜50回)と相対負荷(1RMの45%と約70%)は筋成長に適したより多様な刺激を提供する可能性がある。
・LL-HVグループはクレアチンキナーゼ(CK)や乳酸脱水素酵素(LDH)などの筋損傷マーカーの減少を示し、回復時間と疲労を最小限に抑えるという利点が強調された。この知見は高レップ数でトレーニング刺激を多様化することが筋肉や関節への機械的ストレスを軽減することで傷害リスクを軽減し、訓練されたアスリートの適応を高め、パフォーマンスの向上と生理学的負担の軽減のバランスを取る可能性があることを示唆している。
・・・興味深い部分を抜粋してまとめました。当院でもスポーツ障害の治療でお越しになられた患者さんからトレーニングのご相談をいただくたびにLL-HVをお勧めしてきた。関節への機械的負荷は低い方がいいに決まってますからね。
ピーキングなど特殊条件下では話がまた違うんだろうけど。
では”広範なハイレップ負荷”とはなんぞや?と疑問に思う方はぜひ当院のパーソナル体験のご利用をご検討ください。
実際にトレーニングしなくてもフォームチェックやアイデア交換でも十分有意義なお時間になると思います。
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