世界的に骨粗鬆症が公衆衛生問題になっている。
最近は50歳以上の女性の約3人に1人、男性の約5人に1人が骨粗鬆症性骨折を経験し、米国では大腿骨頸部または腰椎の骨密度(BMD)が低い50歳以上の成人の数が2030年までに1720万人増加すると予測されている。
女性はもともと骨量が少なく、閉経後に骨量減少がさらに加速するため、特に脆弱とされている。
世界で最も広く消費されている飲料であるコーヒーと紅茶に含まれるカフェインは、その骨代謝への潜在的影響が研究対象となっているが、コーヒーと紅茶の摂取とBMDとの関係に関するエビデンスは依然として一貫していない。
また、長期間の追跡調査において曝露とアウトカムの両方を反復測定した研究はこれまでに存在しない。
リンクの研究は、骨粗鬆症性骨折研究(SOF)からの反復測定データを用いて、閉経後女性におけるコーヒーと紅茶の摂取とBMDとの縦断的な関連性を調査したもの。
9704人の65歳以上の女性が対象。
コーヒーと紅茶の摂取量は、約10年間におよぶ訪問2回目、4回目、5回目、および6回目の際に、自己記入式質問票により反復的に評価。
大腿骨頸部と全股関節のBMDは、二重エネルギーX線吸収測定法により反復測定。
【結果】
10年間の追跡期間中、紅茶の摂取は全股関節BMDと正に関連を示した。
コーヒー摂取と大腿骨頸部または全股関節BMDとの間に、全体的な有意な関連性は観察されなかったが、スプライン分析は、1日に5杯以上のコーヒーを摂取することとBMD低下と関連する可能性があることを示唆した。
相互作用分析は、コーヒーとアルコール摂取の間、および紅茶摂取とBMIの間に有意な相互作用があることを示した。
【結論】
紅茶摂取が閉経後高齢女性において、より高い全股関節BMDと関連していることが示唆された。
10年間の追跡調査では、コーヒー摂取とBMDとの間に全体的な関連性は確認されなかったものの、1日あたり5杯を超えるコーヒーの摂取がBMDに有害である可能性があることを示唆した。
観察された相互作用効果は、個々の要因の重要性を浮き彫りにしている。すなわち、コーヒー摂取はアルコール摂取量が多い女性において大腿骨頸部BMDと負に関連していた。
一方で、紅茶の摂取は肥満の女性にとって特に有益であるように見受けられた。
Longitudinal Association of Coffee and Tea Consumption with Bone Mineral Density in Older Women: A 10-Year Repeated-Measures Analysis in the Study of Osteoporotic Fractures
・サブグループ分析では、生涯アルコール摂取量が多い女性はコーヒー摂取を制限することで恩恵を受ける可能性があり、一方、肥満の女性は紅茶摂取からより大きな恩恵を得る可能性があることが示唆された。
・複数の研究で、高コーヒー摂取が低いBMDと関連していると報告されているが、他の研究では関連性はみつかっておらず、逆に一部の研究は保護効果を示唆している。カフェインはアデノシン受容体の非特異的拮抗薬として作用し、骨形成を阻害し、骨吸収を促進する可能性がある。in vitro研究は、カフェインがビタミンD受容体の発現を下方制御し、骨芽細胞における1,25(OH)2D3 の骨形成作用を損なう可能性を示唆している。しかし、ヒト実験研究では、カルシウム摂取が不十分な個人では、カフェインの影響は最小限であり、吸収効率の低下によるわずかな負のカルシウムバランスを引き起こすに過ぎない。この効果は、コーヒー1杯にスプーン1〜2杯の牛乳を加えることで相殺できるほど無視できることが多い。
・遺伝的要因がカフェインと骨粗鬆症リスクとの関連を修飾する可能性がある。台湾バイオバンクのデータを用いた研究では、ESR1rs982573遺伝子型を持つ個人のうち、週に3杯以上コーヒーを摂取する人は骨粗鬆症のリスクが低いことがわかっている。
・一部の研究で、習慣的な紅茶飲用がさまざまな骨格部位でより高いBMDと関連していることがわかった。65歳から76歳の女性を対象とした英国の研究、および70歳から85歳のオーストラリアの女性を対象とした研究でも、同様の正の関連性が報告されている。紅茶の効果の潜在的なメカニズムには、カテキン、特にエピガロカテキン(EGC)が関与している可能性があり、これは骨芽細胞の活動を促進し、破骨細胞の分化を阻害する可能性がある。
・・・5杯/day飲む方も少ないかもしれませんが。紅茶のpolyphenolは骨密度以外にも効果的な抗酸化効果を示すので、閉経移行期〜の女性は紅茶を飲む習慣を作ってみてはいかがでしょうか?