思春期は身体、感情、社会性が急速に発達する重要な時期で、この時期の生活習慣は将来の健康に長く影響する。
近年、日本では若者の精神疾患が急増しており、不安症とうつ病がその代表的な症状。
お隣韓国の研究で、10代の精神的健康に影響を与える食事や行動要因が徐々に明らかにされている。ファストフードの摂取はうつ病のリスクを高める一方で、果物や野菜は予防効果があることが示されている。
また、朝食の不規則な摂取や、砂糖入り飲料(SSB)やファストフードの多量摂取は不安障害と関連し、オンライン飲食/料理番組を頻繁に見ることはストレスや抑うつ症状と関連があることもわかっている。
夕食時の孤食も10代の精神的な健康問題を引き起こす。
若者の精神疾患リスク要因として近年世界的に懸念されているのがSSBと高カフェイン飲料、いわゆるエナジードリンクだ。エナジードリンクは、血糖の調節、睡眠、神経系を乱し、メンタルヘルスを悪化させる可能性がある。また、SSBはインスリン抵抗性や神経伝達物質の機能変化に関与し、高カフェイン飲料は不安の増大、不眠症、慢性疲労と関連している。
アメリカ、カナダ、ヨーロッパで行われた研究では、SSBやエナジードリンクを多く摂取することは、10代のうつ病、不安、学業成績の悪化のリスク上昇と一貫して関連していると報告されている。
最近のメタ解析では、カフェインや糖分が多い飲み物の過剰摂取が、睡眠パターンを乱したり全身炎症を進行させるすることでメンタルヘルスを損なう可能性があると示唆されている 。
リンクの研究は、韓国の10代のメンタルヘルス状態を評価し、SSBおよび高カフェイン飲料の摂取頻度とメンタルヘルスアウトカム(ストレス認知、抑うつ症状、自殺念慮、および孤独感)との関連を調査したもの。
はたして、韓国の10代におけるSSBおよび高カフェイン飲料の摂取に影響を与える要因は何か? そして、エナジードリンク摂取頻度はこの集団における様々な有害な精神的な健康アウトカムとどのように関連しているか?
これらの結果はエビデンスに基づいた戦略を支持し、10代の精神的幸福を高めるための貴重な情報を提供するだろう。
対象は12~18歳の韓国の10代51,850人を含む、韓国全土に代表性のあるデータセット。
【結果】
非摂取者と比較して、SSBを週に5~6回以上摂取する10代は、ストレス認知、抑うつ症状、自殺念慮、および孤独感のオッズが有意に高かった。
同様に、高カフェイン飲料の頻繁な摂取(週に5~6回以上)は、ストレス認知、抑うつ症状、自殺念慮、および孤独感のオッズ増加と関連していた。
【結論】
SSBや高カフェイン飲料を頻繁に飲むことと、韓国の10代のメンタルヘルス状態が悪化することの間に有意な相関があることが明らかになった。
SSBや高カフェイン飲料を週に5~6回以上飲む10代は、ストレスを感じやすく、抑うつ症状が出やすく、自殺を考えやすく、孤独を感じる可能性が高かった。
若年層のエナジードリンク摂取量が増えていること、そしてこの層のメンタルヘルス問題が深刻になっていることを踏まえ、SSBや高カフェイン飲料の摂取を減らし、幼い頃からより健康的な飲料習慣を促す食事に関する教育プログラムが不可欠と考えられる。
Association Between the Consumption of Sugar-Sweetened Beverages and High-Caffeine Drinks and Self-Reported Mental Health Conditions Among Korean Adolescents
・SSBを週に5~6回以上摂取する10代は、ストレス認識、抑うつ症状、自殺念慮、孤独感を報告する可能性が高かった。高カフェイン飲料を同様の頻度で摂取する10代も、ストレス認識、抑うつ症状、自殺念慮、孤独感のオッズが高かった。
・SSBには砂糖や高果糖コーンシロップが多く含まれてい、栄養上のメリットはほとんどない。過去の研究では、SSBの頻繁摂取は10代と成人両方で肥満、2型糖尿病、全死因死亡リスク増加と関連することがわかっており、身体的な健康リスクは十分に文書化されている。
精神的な健康への影響、特に10代においては、まだ十分に探求されていない。
米国、中国の成人に焦点を当てた研究でも、SSB摂取とうつ病の発症率の高さとの関連が示唆されている。
メタ解析では、1日あたりコカ・コーラ2カップに相当するSSBの摂取でうつ病リスクが増加することが示しされている。
105,061人の10代を対象とした大規模研究では、炭酸飲料摂取と自殺未遂の間に有意な相関があることが特定され、所得水準によってばらつきが見られた。中国の研究でも、SSBの摂取と子供や10代の抑うつ症状の間に正の関連が報告されている。
・SSBの摂取と有害なメンタルヘルスアウトカムとの関連の根底にある正確なメカニズムとして、いくつかの経路が考えられる。1つはSSBの血糖作用。これらの飲料に含まれる高糖分は血糖値を急速に上昇させてインスリンの急激な分泌を引き起こす。時間が経つと、慢性的な変動はインスリン抵抗性につながり、うつ病や自殺行動と関連する。もうひとつの経路は、視床下部-下垂体-副腎皮質軸(HPA軸)の機能不全。血糖値変動がこのストレス応答システムを活性化させてコルチゾールを上昇させ、海馬の機能を損なう可能性がある。これらはどちらもうつ病、不安、その他の精神疾患と関連している。過剰な糖分摂取は、神経細胞の健康に不可欠な脳由来神経栄養因子(BDNF)を低下させる可能性もある。BDNFの減少は、海馬の萎縮、認知機能の低下、気分障害のリスク増加と関連している。この仮説は、高脂肪・高糖質の食事を与えられたげっ歯類では、高脂肪食のみを与えられたげっ歯類と比較して、BDNFの発現が有意に減少することを示した動物実験によって裏付けられている。
・韓国の10代は平均16.2mgを摂取しており、その50%以上はエナジードリンクを含む炭酸飲料から来ている。メンタルヘルスへの影響は、これらの飲料に含まれるカフェインと糖分や刺激剤との相互作用が脳に影響を与えることで生じている可能性がある。集中力や気分を高めるために使われることが多いが、過剰摂取は神経系を過度に刺激し、睡眠を妨げ、不眠症につながり、これが不安、興奮、神経過敏の原因となる。さらに、カフェイン依存性により習慣的な使用が促進され、時間の経過とともに精神的な健康症状を悪化させる可能性もある。
過去にも何度かエナジードリンクに関するメモを残しましたが、今回まとめたデータもメンタルヘルスに関する懐疑的な内容で一貫していました。
今回は10代の若者が対象でしたが、個人的には成人のメンタルヘルスにも関与しているのではと疑っています。成人の常飲者には攻撃性とうつ症状が交互に増幅する両極性障害の方が多い印象。運動不足で代謝が著しく低下しており、栄養摂取の知識が皆無の方は特に。