激しい運動が誘発する炎症、骨格筋損傷、そして筋修復と適応プロセスには、抗酸化物質摂取による回復戦略が用いられるのが近年では一般的だ。
メラトニン(MEL)(N-アセチル-5-メトキシトリプタミン)は激しい運動後の回復を促進し、その後の運動セッションにおける身体能力を向上させる可能性のある抗酸化物質として近年注目されている。クロノバイオティックと呼ばれるMELは松果体によって合成されるホルモンで、MELの合成と分泌は主に明暗サイクルによって調節され、暗闇への移行時に活性化され、特にブルーライトへの曝露によって強く阻害される。
活性酸素種(ROS)および活性窒素種(RNS)によって引き起こされる損傷からミトコンドリアを保護する役割も認識されており、強力なスカベンジャーとして作用して酸化的およびニトロソ化ストレスを軽減する。酸化ストレスは運動能力の制限因子であり、この保護効果は筋疲労の軽減に役立つ可能性がある。
運動能力が睡眠パターンと質に密接に関連していることから、外因性MEL補給は睡眠の質を向上させ、最終的に運動後の身体的および精神的回復を改善する戦略と考えられている。しかし、外因性MEL摂取の潜在的な利点に関する文献は乏しく、就寝前のMEL摂取が翌日の運動能力に与える影響を調査した研究はごくわずかである。
リンクの研究は、翌日に実施される短時間の反復最大運動テスト後の睡眠パラメーター、身体能力、および筋損傷と炎症の生化学的マーカーに対する夜間の急性経口MEL投与の影響を運動後最大72時間まで追跡評価した無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー研究。
12名の訓練された男性が、5mシャトルテスト(5mSRT)を実施する前夜にメラトニン (MEL) 6mg またはプラセボ (PLA) を摂取。5mSRTの前後で血液サンプルを採取。テスト中は最大心拍数 (HRpeak) と自覚的運動強度 (RPE) を記録。自覚的回復状態 (PRS) および遅発性筋肉痛 (DOMS) は、テスト5分後、24時間後、48時間後、72時間後に測定。
摂取後の夜間は睡眠/覚醒サイクルをモニタリング。
【結果】
PLAと比較して、MELは睡眠パラメーターや血液マーカーのいずれも変化させなかったが、MELは5mSRTにおいて、総距離、疲労指数、スプリント間の減少率、およびHRpeakをPLAと比較して改善した。また、運動後72時間までのPRS値を向上させDOMSを減少させた。
【結論】
夜間のメラトニン6mg摂取は、睡眠パラメータの改善がない場合でも翌日の高強度反復運動中のいくつかの身体能力変数に肯定的な影響を与える。具体的には、メラトニン摂取は5mシャトルテストにおける総距離と疲労指数を向上させ、スプリント間の減少率を低下させた。
この身体能力の向上は最大心拍数の値の低下とRPEへの影響なしで達成された。
加えて、メラトニン摂取はプラセボと比較してより高いPRSスコアとより低いDOMS値によって示される、運動後72時間まで知覚される回復を向上させた。
これらの結果は、夜間のMEL摂取が訓練された男性における翌日の高強度身体能力を向上させる潜在的戦略として役立つ可能性を示唆している。特に激しい夜間トレーニングや競技の後など、翌日のパフォーマンスと回復が重要となる状況において有用である。
・MEL摂取後の夜間の睡眠変数に変化が見られなかった。しかしMELは5mSRT中の翌日のパフォーマンス関連変数において潜在的エルゴジェニック効果を示した。同様の結果は過去の研究でも報告されており、就寝30分前のMEL5mg 摂取が睡眠変数に意味のある影響を与えないことが示されている。一方で夜間のMEL10mgおよび8mgの摂取が主観的睡眠の質を改善することを示す研究もある。これらの研究間の相違は、MEL投与の用量と時間の違い、ならびに睡眠障害レベル、年齢および参加者のクロノタイプに起因する可能性がある。複数のエビデンスに基づくと、8mgから10mgの高用量のメラトニンは総睡眠時間、睡眠効率の改善、入眠潜時の短縮など、睡眠の質により一貫した利益をもたらすようだ。したがって、メラトニンの睡眠増強効果を求める個人にはこれらの高用量を検討することが推奨される。
・身体能力と心拍数応答に関して、5mSRT中に身体能力(Total distance (TD)、Fatigue index (FI)、Peak distance(PD))の改善とHeart Rate(HR)peak値の低下を報告した。参加者12 名中10名がMEL条件でより高いTDを示し、10名がFIの減少を示し、10名が5mSRTにおけるスプリント間のPDの低下を示したことは特筆に値する。一部の被験者間にはこのサプリメントに対する反応にばらつきがあったものの、ほとんどの参加者がMELに肯定的に反応したことを示している。
・多くの証拠が、MELの短期および持久力パフォーマンスを向上させるエルゴジェニックな可能性を裏付けている。それらの研究は健康な男性青年アスリートにおいて、疲労困憊する夜遅くの運動後に摂取した夜間MEL 10mgが、翌朝の同じテストのパフォーマンスにプラスの影響を与え、ピークパワーと平均パワーを増加させ、総時間とFIを減少させると結論付けている。同様に、持久力テスト後および就寝15分前に摂取したMEL10mgに続いて、YYIRT-1および5段階跳躍テストによって評価された朝のパフォーマンスが向上したことも示されている。
最近では、プロサッカー選手12名における夜間のMEL8mg摂取が握力、スクワットジャンプ、ウィンゲートピークパワーおよび平均パワーの改善に有効だった。
・MEL摂取後のHR減少は交感神経抑制の削除とカテコールアミンレベルの減少に関連付けられている。
・MELがPerceived Recovery Scale(PRS)およびDelayed Onset Muscle Soreness(DOMS)レベルに運動後72時間まで持続する肯定的な影響を及ぼすことが明らかになった。この効果は侵害受容性、鎮痛性、抗炎症性および抗酸化性によって説明できる。複数の研究が、6日間のトレーニングキャンプ中に毎日夜間に摂取したMEL 5mgが、運動中の酸化ストレスと筋損傷を軽減することでアスリートの回復に有益な効果をもたらす可能性があると結論付けている。
大会期間中などの連続的な高パフォーマンスと疲労回復が求められるアスリートの方は是非試してみてはいかがでしょうか?
ではメラトニンの大会期間中の効果をよりブーストするために大会期間以外の期間の栄養戦略はどうデザインするのがベストなのか?より具体的な栄養戦略をお探しの方は、当院の栄養マニュアルのご利用を是非ご検討ください。
アスリートが陥る健康(精神と肉体)被害の予防にも非常に有益な内容になっています。
当院に直接お越しいただくか、またはLineまたはメールによるカウンセリングに基づき、皆様の症状や体質に合わせて摂取カロリー数の計算や、食事デザイン、サプリメントの選択、排除すべき食材などを最新データを元にパッケージでデザインし、ご提案いたします。お気軽にお問い合わせください(お電話、LINE、インスタグラムのメッセージまたは連絡先をご利用いただけます)