本日も妊娠後期の方の腰痛を診させていただいた。
分娩方法をお聞きしたうえで想定される産後の腰痛予防も考慮した治療を行い、治療結果はまずまず。何手か先を読んで予防的にアプローチするのもカイロプラクターの仕事の一つです。
さて、今回のブログは、乳がん生存率と亜鉛、銅およびクーパー/亜鉛比レベルとの関連性を調査した興味深いデータをまとめてみたい。
過去に多くの研究者が、微量元素の血清濃度が乳癌生存率に及ぼす影響について研究しており、これまでに血清セレン濃度が低いと乳癌患者の5年生存率および10年生存率が低下することが報告されている。
近年、乳がん転帰で注目される金属に亜鉛と銅がある。
亜鉛はゲノムの安定性維持、アポトーシス、酸化ストレスへの応答、細胞シグナル伝達など多くの生理的過程に関与し、正常な乳腺の成長とリモデリングに重要である。また、効果的なT細胞の機能に必要で、抗腫瘍免疫に役割を果たしている。血清亜鉛濃度は食事からの摂取量とサプリメントの使用量に依存的である。
亜鉛の血中濃度は乳癌の危険因子として評価されており、乳癌患者の血漿中亜鉛濃度が健常対照群と比較して低いことが報告されていることから、亜鉛は乳癌の危険因子というよりも、乳癌の存在を示すバイオマーカーである可能性が示唆されている。
銅は血管新生、腫瘍増殖、癌の進行、転移に関与する。
銅の調節異常は活性酸素の過剰産生につながり、DNAやタンパク質を傷つけることで発がんプロセスに影響を与える。銅はエストロゲン受容体α(ERα)に対する親和性が高いため、エストロゲンが制御する経路を通じて細胞増殖を活性化する。
韓国の研究では、がん患者の銅濃度が対照群よりも高いことが示されている。
しかし、血清中の銅濃度と乳がんリスクとの関係を調べた研究はわずかで結果は一致しない。
銅濃度と亜鉛濃度の最適なバランスは、多くの酵素の働きに重要な役割を果たしており、銅と亜鉛のバランスが悪いと(銅が増え、亜鉛が減ると)、いくつかの酵素の抗酸化活性が損なわれます。慢性的酸化ストレスは乳癌のリスクを増加させ、発癌と進行の初期段階に影響を及ぼす可能性がある。
銅/亜鉛比(Cu/Zn比)は、銅や亜鉛の値だけよりも正確な予後因子であると考えられている。
最近のメタ解析では、Cu/Zn比の増加は乳がんリスク増加と関連すると結論づけている。
また、銅の高値/亜鉛の低値と生存率との関係を評価したでは、様々ながん種で生存率が比較的低いことが示されている。
一方で、乳がん患者に焦点を当てた研究は少ない。
リンクの研究は、ポーランドで2008年から2015年の間に診断された乳がん患者583人を対象に、治療前に採取した血液サンプルの血清亜鉛/銅濃度を質量分析法で4つのカテゴリー(四分位)のいずれかに割り当て、患者を診断から死亡まで平均10年間追跡したもの。
【結果】
10年生存率は、血清Cu/Zn比が最高四分位の女性で58.3%、最低四分位の女性で82.1%だった。乳癌死亡の多変量ハザード比(HR)は、血清Cu/Zn比が最も高い四分位群では最も低い四分位群に比べて2.07だった。Cu/Zn比の高値と全生存率および乳癌特異的生存率との間には明らかな相関関係が認められた。
血清Cu/Zn比は乳癌診断後の全生存期間と乳癌特異的生存期間に対して独立した予測値を与える可能性がある。
【結論】
乳がん診断時にCu/Zn比が高い(≧1.563)ことは、全10年生存率および乳癌特異的生存率の低下と関連する。
Serum Levels of Copper and Zinc and Survival in Breast Cancer Patients
・血清亜鉛値が低く、銅/亜鉛比が高いと10年生存率および乳癌特異的生存率の低下と関連することが観察された。10年乳癌特異的生存率は、血清Cu/Zn比が最も高い四分位の女性で67.2%であったのに対し、最も低い四分位の女性では84.9%だった。
・2372人の乳癌患者を対象に亜鉛濃度と乳癌リスクとの関係を評価したスウェーデンの研究では、亜鉛レベルと全生存率との間に統計学的に有意な相関は認められなかったが、血清亜鉛Q2-Q4とQ1とを比較すると乳癌生存率が低く、亜鉛レベルも低い傾向がみられた。
・989人の患者を対象とした研究では、銅値およびCu/Zn比と肝細胞癌の生存率との相関が観察された。血清銅の高値は癌特異的生存率および全生存率の悪化と強く相関していた。
・乳癌発症のメカニズムは、主に酸化ストレスへと関連しており、腫瘍形成や癌の進行と相関している。Cu/Zn比の上昇は抗酸化物質と負の相関があり、酸化産物と正の相関がある。
・亜鉛は、炎症、酸化、免疫反応、細胞死プログラムに関与する300以上の酵素の重要な補酵素として認識されている。亜鉛は銅-亜鉛ジスムターゼ(CuZnSOD)と約1000の転写因子の必須成分である。亜鉛と銅のバランスが崩れると酸化ストレスが生じ、多くの酵素の抗酸化機能が損なわれる。
・最近、乳癌リスクと予後におけるミトコンドリアDNAの役割に関する研究が発表された。ミトコンドリアゲノムの変異とエピジェネティックな修飾は乳癌の発生と進行を促進する。ミトコンドリアDNAは酸化的損傷や他の遺伝的損傷に対して敏感である。銅と亜鉛のバランスが崩れると活性酸素が過剰に生成され、ミトコンドリアDNAは活性酸素に対して特に敏感である。乳がん細胞における銅と亜鉛のレベルとミトコンドリアDNAの突然変異の間には理論的な関連がある可能性がある
今のところ乳がん患者における亜鉛補給に関する臨床試験はないが、この研究は亜鉛レベルの低い乳癌患者に対する亜鉛補給の可能性を示唆している。今後臨床試験が発表されたら改めてブログにまとめてみたい。
当院には、乳がんも含む様々な種類の癌治療または再発予防のためのデータが蓄積されています。より具体的な栄養戦略をお探しの方は、当院の栄養マニュアルのご利用をご検討ください。
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