近年、ドーピングチェックの回避を目的に、アスリート界では天然のサプリメントが注目されている。
天然サプリメントとは自然に生育した植物や動物から非化学的合成法により得られたものと定義され、エキスや合成サプリメントに比べてバイオアベイラビリティが高く、効果も高いとされている。
免疫機能の調節調節を目的とした天然サプリメントでは、「スピルリナ」が注目されている。
スピルリナに含まれる物質の一つであるγ-リノレン酸は、免疫系を調節することが証明されている。
動物実験では、γ-リノレン酸がラットの免疫力を向上させ、細胞モデルにおける免疫応答を調節することが判明しているが、ヒトに関する研究結果はほとんどない。
特に評価指標として免疫細胞を使用した研究はほとんどない。
リンクの研究は、中国サッカーリーグの練習に参加した大学サッカー選手39名を対象にスピルリナとプラセボの介入実験を無作為二重盲検法により行い、ハイレベルなアスリートの末梢血中の白血球、好塩基球、単球の割合にスピルリナが与える影響を評価したもの。
合計8週間にわたる練習の前後に、彼らの肘静脈血サンプルを採取。
グループ内およびグループ間の差異を記録し、分析した。
スピルリナ(SP)群では、テスト前とテスト後の好塩基球の比率が統計的に有意に異なっていた。
プラセボ(PB)群では、白血球と単球の前後の割合が統計的に有意に異なっていた。
SP群とPB群では、単球と好塩基球の割合が統計的に有意な差を示した。
単球のデルタ変動は群間で有意な差があった。
結論
長期間の激しいトレーニングは、アスリートの白血球と単球の比率を有意に減少させた。
しかし、スピルリナサプリメント群ではこの現象は観察されなかった。
スピルリナサプリメントは、エリート大学スポーツ選手の白血球、単球、好酸球、好塩基球の比率の安定化に有益でだった。
さらに、スピルリナは免疫調節の改善に役立ち、寄生虫や病原性細菌、急性アレルギー応答にプラスの効果を持つ。
Effects on Spirulina Supplementation on Immune Cells’ Parameters of Elite College Athletes
・PB群では白血球と単球の比率が、激しいトレーニング後に有意に低くなるように変化していた。これは、8週間のトレーニングによってアスリートの免疫細胞が変化したことを意味する。
長期間のスポーツトレーニングや激しいエクササイズは、免疫力を低下させることが過去のエビデンスで示されている。激しい運動がアスリートの免疫細胞比率を著しく低下(白血球数を減少、単球の機能を低下)させるという先行研究でも確認されている。
・PB群で白血球が減少しているのは体にダメージを受けているサインの可能性がある。また、免疫機能の低下が原因である可能性もある。
・PB群では単球の割合も減少していた。単球は炎症シグナルがあると8〜12時間以内に感染組織に集まり、マクロファージや樹状細胞に分化して免疫反応を起こす。したがって、その減少が免疫に悪影響を与える可能性がある。
・8週間の激しいトレーニングを行ったPB群のアスリートでは、白血球と単球がテスト前よりも減少した。しかしSP群ではスピルリナ補給がこの免疫細胞の変化を抑制し、アスリートの免疫力や病原体感染に対する抵抗力の向上に役立つ可能性があることがわかった。
スピルリナサプリメントは、エリート大学アスリートの免疫系機能を調節することができると仮定できる。
・他のパラメータは、ベースラインからエンドポイントまで統計的に重要でない変化を示した。つまりSP群のアスリートは8週間の高強度介入中に有害な変化を経験しなかった。
スピルリナサプリメントは正常な範囲で免疫細胞を維持し、トレーニングに起因する免疫細胞の変化の現象を改善する可能性がある。
・単球の差はPB群の減少に起因すると思われる。SP群ではサプリメントが単球の比率を維持している可能性がある。スピルリナに含まれるγ-リノレン酸という物質が単球の機能を変化させることが他の研究で報告されている。単球の機能が変化することで、単球の比率が変化している可能性がある。
・好塩基球がトレーニング前より少なくなることは多くの研究で確認されている。
今回の研究では、SP群の好塩基球は有意な変化がなかったがPB群に比べ有意に高かった。SPサプリメントはこのパラメーターを安定した範囲に維持するのかもしれない。
・多くの研究でエストロゲンとテストステロンの両方が免疫反応に不可欠な因子であることを指摘している。女性の免疫系はエストロゲン調節によって支配され、男性の免疫系はテストステロンに支配されている。
ある調査では、Bリンパ球の免疫反応における性差はエストロゲンの保護反応に起因するとされている。