筋膜リリース・・・今や至るところで整体院の看板や商品名に使われている治療方法。
セルフ筋膜リリース(SMR)は、簡単にアスリート地震が施術を行えることでから人気を博しているが、実際には、最適な使用方法についてはコンセンサスは未だ得られていないのが現状。
過去のデータでは、スローに長く行うSMRは可動域を向上させる可能性があり、可動域の改善には少なくとも90秒のSMRが必要であるとの仮説が報告されている。
他方で、SMRのアスリートパフォーマンスへの急性効果については明らかになっていない。
相反する研究結果の報告が多く、SMRの生理的反応の基礎メカニズムに関する知識はまだ不完全なまま。
宣材としての「筋膜リリースの効果」を鵜呑みにするのは時期尚早だろう。
リンクの研究は、アマチュア及び大学生アスリートを対象に短時間で集中的に行うセルフ筋膜リリース(SI-SMR)がジャンプに及ぼす影響を調査したもの。
研究サンプルは、平均年齢21.8歳の30名の被験者で構成。
実施テストは、スクワットジャンプ(SJ)、カウンタームーブメントジャンプ(CMJ)、ドロップジャンプ(DJ)。
結果
全てのジャンプテストパラメータ(高さ、力、パワー)、反応筋力指数、スティフネスがSI-SMRによって改善する傾向が見られたが、その差は小さく、重要といえるほどではなかった。
SJ高の改善のみが統計的に有意となったが、ESが小さかったためこの結果は減衰した可能性があり、二元混合型ANOVAを適用した場合、その差は有意ではなかった。
SI-SMRは、ジャンプ能力の直接的な改善には効果がなかった。
SI-SMRが悪影響を及ぼすことはなかったが、アスリートはSI-SMRプロトコルを使用せず、スポーツ競技のために他の具体的な準備に焦点を当てるべきであると結論。
・SI-SMRが様々なジャンプパラメータに及ぼす急性効果を調査したが、SI-SMRプロトコルの使用中参加者に副作用は認められなかった。
測定されたパラメータの多くに改善の傾向が見られたが、統計的に有意となったのはSJ高さのみがで、その差は微小だった。
さらに、ANOVAを実施したところ統計的有意性が消失した。
したがって、アスリートパフォーマンス直前のSI-SMRの使用はパフォーマンスへの影響が弱く効果がないと思われる。この結果は、フォームローリングの使用はCMJまたはスプリントにおいていかなる改善ももたらさなかったことを指摘する他の研究とも一致する。
・このの研究で有意な改善が観察されなかった理由の1つは、SMR介入時間が短かったことによるかもしれない。しかし、SMRの長時間の実施は筋出力を減衰させる可能性があり、同様の結果を報告する研究が複数ある。
一方で、SMR短時間介入(5~10秒)は、筋電図(EMG)変化を伴わずに可動域にポジティブな効果をもたらす可能性がある。
・短時間(体の部位ごとに30秒)SMR後のパワー、筋力、敏捷性の改善を観察した研究もあるが、1筋群あたり30秒未満のSMRは、有意な効果を得るには短すぎることを反証するデータもあり研究結果は一致しない。
上記の結果は、運動能力に影響を与えるための最適なSMRの時間について疑問を提起している。
・他の研究では、1筋群あたり30秒のSMR使用でジャンプパラメータにわずかな効果があることが指摘されたが、SMR実施時間の延長は効果的な解決策とはならないようだった。
・様々な形態のSMRを使用した多くの研究で、副作用は報告されていない。
しかし、いくつかの観察ではSMRがパワーと筋力に対して減衰効果を持つことが報告されていることにも注意したい。
・SMRが身体的パフォーマンスを向上させる効果的な方法である、と明確に考えることはできない。利用可能な研究はSMRプロトコルなど多くの側面で異なっており、研究間の比較や信頼できる結論を導き出す能力を妨げている。
・SMRは、侵害受容器と機械受容器の感受性と血流を変化させることができる組織の硬直と癒着に影響を与えることが提案されているが、心理的な影響を排除することはできない。幸福感が向上するという感覚がプラシーボ効果を生むのかもしれない。