閉経後の女性は尿路の萎縮による尿失禁に悩まされることが多い。
くしゃみ、咳、ジャンプ動作、笑ったとき、性行為などの腹腔内圧の上昇で尿失禁が発生し、不快感や無力感が重要な心理的影響を生み出して、QOLに深刻な影響を与えることになる。
尿失禁の発症には、高齢妊娠、経膣分娩歴、閉経などいくつかの危険因子があり、性別に関係なく肥満と加齢も尿失禁の発症因子となる。
また、閉経移行期〜閉経期のエストロゲン欠乏は尿路および膣・尿道周囲組織の萎縮性変性を誘発し、何かしらの負荷による不随意の尿失禁や尿意切迫感・頻尿の増加と関連している。
しかし一方で、このような関連性があるにもかかわらずホルモン剤による管理で改善されるという明確なエビデンスはない。
非侵襲的かつ非薬物的治療の選択肢として、骨盤底筋群(PFM)の機能、筋緊張、強度、協調性、持久力の向上に焦点を当てたPFMトレーニングが挙げられる。
骨盤底筋力トレーニングの成功は、骨盤底筋群の収縮および保持力、協調性、速度、持久力の向上を達成し、膀胱の機能を高く保ち、適切な尿道閉鎖圧を維持して骨盤内臓器を支え安定させる。
定期的に適切な指導を受けた閉経後女性では、ほとんどあるいは全く指導を受けずにPFMトレーニングを行う女性よりも介入成果を達成する可能性が高く、尿失禁の減少を報告することが観察されている。
リンクのレビューは、尿失禁治療のために閉経後女性におけるPFMトレーニングの効果を評価したランダム化比較臨床試験の系統的レビューを行うことを目的としたもの。
8論文が含まれ、各研究で少なくとも1つのグループがPFMエクササイズ介入を単独または複合で行っていた。
すべての研究で筋力、QOL、および/または尿失禁の重症度において、PFMエクササイズの支持に有意差があることが報告されていた。
PFM運動は、閉経後の女性における尿失禁を治療するための介入として非常に推奨されるものであると結論。
・分析の結果、研究対象集団における失禁に対する効果的な介入としてPFMトレーニングの使用を支持する科学的根拠が見出された。
・参加者のBMIに関係なく、トレーニング効果はすべての研究で統計的に有意だった。
・論文のうち、5論文はストレス性尿失禁のみに焦点を当て、2論文はストレス性または切迫性尿失禁の患者を対象とし、1論文はストレス、切迫または混合性尿失禁の患者を含む論文だったが、PFMトレーニングの効果はいずれのケースでも統計的に有意だった。
・骨盤底筋力については、すべて統計的に有意な好ましい変化が認められた。
筋力の生成は主に筋繊維トロフィズムと運動単位リクルートメント能力で、トレーニングプロトコル初期8週間における筋力変化は、主に運動単位の動員力増加によって引き起こされることが示唆されている。
このレビューでは、筋力に関して良好な結果が得られたものは6週間から12週間のもの。
・尿失禁の有病率と重症度は、急性期と慢性期の両方でPFMエクササイズを行ったグループに有利で、統計的に有意な変化が観察された。
・PFMトレーニングは単独または組み合わせでの適用でも、閉経後女性の尿失禁を治療するために強く推奨される。