今回のメモは、棘下筋の退行変性(炎症、萎縮、癒着、硬縮)が患部及び肩甲骨周辺(背中、首)に関連痛を引き起こしていた症例を簡単にまとめてみたい。
患者さんは40代男性。ベンチプレスのボトムで力を入れた瞬間に肩に痛みを感じ、しばらく様子見するも痛みが引かず当院を受診。
痛みを感じる範囲は首〜上部僧房〜中部胸椎あたりまでと広範囲。
結論からいくと、痛みの主因は棘下筋(↓)で、星印の部分の退行変性(特に炎症後の硬縮、機能不全)。

初回の治療は頸椎〜胸椎、標的軟部組織(筋肉、腱、神経、靭帯)を一通り治療して痛みのレベル10→3くらい。
2回目の治療では、初回時に棘下筋に対して行なったベーシックリリーステクニックから独自開発したリリーステクニックに変更。
これが功を奏して違和感程度まで改善。棘下筋組織の修復が促進されて違和感も時間の問題かなという印象。
同じ現象、同じリリース理論でも視点を変えてスパイスを加えるだけで結果が変わるので、治療家側の選択判断が非常に重要。
棘下筋は、肩甲上腕関節の運動中に上腕骨頭を関節窩内で安定させる重要な役割を果たしている。この安定化は、すべての回旋腱板筋の協調的な活性化によって達成される。
ベンチプレス時の痛み発症は、慢性的な棘下筋の機能不全によるローテーターカフ全体の機能低下とそれによる関節不安定性、そしてさらなる棘下筋のcrashが引き起こされたことが原因かもしれない。