うつ病の発症は男性よりも妊娠適齢期の女性に多く、米国では7%から9%の女性が妊娠中にうつ病を経験するが、世界的にはさらに高い割合になると見込まれている。
妊娠中にうつ病を経験する女性は様々なストレスから飲酒、喫煙、不適切な食事など、望ましくない行動をとる可能性が高くなる。これらの行動は母親だけでなく胎児にも悪影響を及ぼし、低出生時体重や発達障害リスクを高める。
また、妊娠中うつ病は産後うつ発症リスクも高め、子供との絆や愛着の問題を抱えるリスクが高くなる。
したがって、妊娠中うつ病の治療は母親と子供の健康にとって不可欠である。
22年のレビューでは、食事が炎症、酸化ストレス、神経可塑性、ミトコンドリア機能、腸内細菌叢など様々な生理学的メカニズムを変化させ、変化したメカニズムは神経機能およびうつ病発症リスクの関連性が指摘されている。
23年の系統的レビューでは、地中海食(MD)の遵守と、うつ病のリスクとの関係が調査され、MD遵守とうつ病リスクとの間に有意な相関があることがわかっている。
しかし、MDの遵守度によって妊娠中鬱の発症リスクが変化するかどうかははっきりしていない。
リンクのレビューは、MDの高遵守が妊娠中うつ病またはうつ症状の発生率の低下と関連するかどうかを調査したもの。
方法:PubMedを用いた文献検索。過去5年間の原著論文、参加者は18歳から50歳までの妊婦、介入が地中海食または地中海食類似食、アウトカムが妊娠期うつ病または妊娠期うつ症状。
結果:9件中6件の研究で、地中海食または地中海食類似食の遵守度が高いほど、うつ病またはうつ症状の発生率が低いという有意な関連性が報告された。
サンプルサイズが大きい研究ほど有意な結果が得られる傾向があった。
・MDまたはMD類似食とうつ病との間に観察された関連性の大きさでは、MDの高遵守による周産期うつ病の可能性は2倍以上低下した。
・うつ病妊婦ではMD遵守率がかなり低いことが高確率で認められ、MDの高遵守が中等度から重度のうつ症状のオッズ低下と関連していた。
・妊婦のうつ病またはうつ症状の発生率を増加または減少させた特定の食品群に関して、9つの研究のうち複数で示された食品群は果物だった。21年の系統的レビューでは15歳から45歳までの若者および成人における果物と野菜の摂取とうつ症状との関連性が調査され、果物の摂取量増加がうつ病発症リスクの低下と関連していることがわかった。
果物や野菜に含まれる特定の成分(抗酸化物質、食物繊維、ビタミンなど)が、炎症、腸内細菌叢、酸化ストレスなどのさまざまなメカニズムを通じて、うつ病に有益な影響を与える可能性がある。
・11年のレビューで論じられたMDの定義。毎食摂取する果物、野菜、全粒穀物、低脂肪乳製品、ナッツ、種子類、一価不飽和脂肪酸が豊富なオリーブオイル、週に2回以上の魚、白身肉、卵。週に2回以下の赤身肉と週に1回以下の加工肉摂取。週に3回以下のジャガイモを摂取。砂糖、キャンディー、ペストリー、甘味飲料は制限。全体として植物性食品の食生活パターンで、より健康的な脂肪の摂取を意識する。
・不健康な食生活パターンスコアが高く、健康的な食生活パターンスコアが低いほど、うつ症状の発生率が高いことが発見された。
妊娠中の鬱よりも産後うつの方に注目がいきがちですが、産後うつの機序もまた妊娠中に醸成されることを考えると妊娠前からの栄養戦略が非常に重要な鍵となりそうです。
妊娠中のうつだからといって妊娠中に慌てて対応しても時既に遅しのケースもありますので、栄養戦略の立案はくれぐれも計画的にといったところです。
果物と言っても色々あるしどんなものが良いのか?また、地中海食と言ってももっと具体的な細かいデータがほしいという方は、当院の栄養マニュアルのご利用を是非ご検討ください。
産後ダイエット、体質管理にも非常に有益な内容になっています。
当院で治療の際にご質問いただくか、またはLineまたはメールによるカウンセリングに基づいて、皆様の症状や体質に合わせて摂取カロリー数の計算や、食事デザイン、サプリメントの選択、排除すべき食材などを最新データを元にパッケージでデザインし、ご提案いたします。お気軽にお問い合わせください(お電話、LINE、インスタグラムのメッセージまたは連絡先をご利用いただけます)
