変形性関節症(OA)は全世界で5億2,800万人が罹患し、中でも変形性膝関節症と変形性股関節症が大きな割合を占めている。OAの危険因子としてまず過体重や肥満が挙げられ、股関節よりも膝関節において高い発症リスクを有している。
様々な治療法がある中で、運動療法はOA治療の基本となる。
当院もOA患者さんにトレーニングを提供しているが、進行の遅延や疼痛管理において非常に効果を発揮している。投薬や注射では痛みの軽減が見られない場合も、運動療法によって痛みが軽減することは少なくない。
過去データでは、運動療法直後の疼痛緩和効果は股関節OAに比べて膝関節OA患者でより大きいことが示唆されているが、運動療法の結果を生活の質(QOL)や歩行速度などの機能を客観的に評価し、報告した研究はまだ少ない。
リンクの研究は、膝・股関節OA患者を対象に、GLA:D®(Good Life with osteoArthritis in Denmark:デンマークで開始された膝および股関節OA患者の教育および運動療法プログラム)参加後の臨床的特徴および転帰の変化を比較することを目的にしたもの。
膝関節24,241人、股関節8,358人の患者が同じプログラムに参加し、グループで一緒に運動。
患者および臨床医が報告するアウトカムを収集。
疼痛強度、膝関節障害/股関節障害アウトカム得点のサブスケールQOLおよび40m歩行試験の3ヶ月から12ヶ月における変化を膝と股関節の患者間で比較。
治療後3ヶ月と12ヶ月の時点で、膝と股関節の両OA患者において臨床的に意義のある改善がみられた。膝と股関節のOA患者は、患者教育と監視下での運動療法による治療をプライマリーケア同様に優先させるべきである。
・このデータは、プライマリケアを受けた膝・股関節OA患者の臨床的特徴を比較し、アウトカムの変化を個別に報告した最初の大規模試験の一つ。痛みや機能に関する治療結果に加え、関節や健康関連QOL、歩行速度に関するデータも示している。
・肥満の程度、怪我や手術の経験、膝や股関節の患部は平均的に異なっていたが、自己報告による結果を含む他の臨床特性は平均的に類似していた。治療直後には、膝と股関節のOA患者において同程度の痛みの軽減が認められた。12ヶ月後にも、両群で持続的な痛みの軽減が認められた。
・膝と股関節OAに対する運動療法に関する最新のCochrane-reviewには、それぞれ54と10の無作為化試験が含まれているが、膝と股関節の両方の患者を対象とした試験は5件のみ。
Cochrane-reviewでは、これら5つの試験で算出された疼痛緩和効果は膝OA患者に比べて股関節OA患者の方が大きいことが示されている。
これは、運動が股関節OAよりも膝OAに対して大きな疼痛緩和効果を持つという総合的な結果に反している。
今回の観察研究では、膝と股関節のOA患者が患者教育を受け、混合グループで一緒に運動することで、同じ介入を受けた場合の転帰の変化を直接比較することができ、非常に大規模なものとなっている。