パパイヤをEnterococcus faecalisとAspergillus oryzaeで発酵させたFPPという製剤が経管栄養摂取の高齢者の免疫機能の維持に役立つ可能性があるとの研究。
面白い研究している人が日本にもいますね。
私も参加してみたい。
Fermented Papaya Preparation Restores Age-Related Reductions in Peripheral Blood Mononuclear Cell Cytolytic Activity in Tube-Fed Patients
・パパイヤをEnterococcus faecalisとAspergillus oryzaeで発酵させたFPPは、プレバイオティクスとプロバイオティクスの両方を含む共生体と考えることができる。いくつかの研究では、プロバイオティクスに含まれる生きた細菌が,大腸の免疫系を刺激することでヒトの免疫を活性化することが示されている。
・Carica papaya L.は、多くの種類のポリフェノールを豊富に含む薬用植物で、外果皮にはフェルラ酸、カフェ酸、カフェオイル-ヘキソシド、ルチン、ケルセチン3-O-ルチノシドが含まれている。
さらに中果皮には、カフェ酸,カフェオイル-ヘキソシド没食子酸,没食子酸ヘキソシド、プロトカテク酸、プロトカテク酸ヘキソシド、ケルセチン、ミリセチン、イソラムネチン、ケンフェロールが含まれている。
・ポリフェノールの抗炎症作用については多くの報告がなされているが、ポリフェノールを分析した研究のほとんどはin vitroの研究であり、動物を用いた研究は限られており、ヒトを用いた研究はわずかなため、ポリフェノールの臨床効果に関する多くの疑問が解決されていない。
実際、FPPの化学構造、有効投与量、吸収、代謝に関する情報はない。本研究は、経管栄養患者におけるFPPの臨床効果を評価した初めての研究である。
・ポリフェノールおよび/またはその異化体は,大腸のpH値を低下させ,Bacteroidetesや病原性のClostridium perfringensおよびClostridium difficileを抑制し,乳酸菌を阻害することなくBifidobacteriaおよび真正細菌の割合を増加させることで,腸内細菌叢の組成を変化させる可能性がある。
・この研究では、経管栄養摂取患者の免疫・代謝機能および糞便フローラに対する30日間のFPP補給の効果を調べ、化学分析によりFPPの組成を決定した。その結果、FPPは高齢の経管栄養摂取患者の腸内細菌叢において、NK細胞の細胞毒性を増強し、Clostridium scindensとEggerthella lentaの数を減少させることがわかった。
・C. papaya L.は好気的な条件で発酵する。好気性発酵のポリフェノール異化物は、ブドウのポリフェノールよりも優れた生物学的効果を発揮する。いくつかの研究では、発酵がポリフェノールの生物活性を高めることが示されている。
・ポリフェノールは主に大腸から吸収され(90-95%)、一部は小腸から吸収される(5-10%)。尿や便に排泄されるポリフェノールの濃度は摂取した量よりも少ないのでため、摂取したポリフェノールの大部分が低分子に代謝されて吸収され、その代謝物が生体反応で消費されていることを示している。
・低分子フェノール酸には抗酸化作用をはじめとする様々な生理活性があることを示すin vivoおよびin vitroの実験報告が多数ある、これらの研究では生理活性の分子構造・機能関係は示されていない。
・FPPは単独のフェノール酸や多種類の低分子物質を含み、生体内では重合ポリフェノールと同様の挙動を示す。
・FPPの投与は高齢者のNK細胞の細胞毒性を増強したが、ヘスペリジンで観察されたように、健康な若年者のNK細胞の細胞毒性には影響を及ぼさない可能性がある
・FPPは、Bifidobacteriumを増加させず、Bacteroidetesを減少させなかったが、Firmicutes、特にE.lentaやC.scindensを含むClostridiaクラスの存在量を有意に減少させた。これらの結果は、胆汁酸が減少していることを示唆している。胆汁酸とカフェ酸はClostridiumとBacteroidesの種を抑制することが報告されている。これは正確なメカニズムはまだ明らかになっていないが,我々の研究でも観察された。この結果は、FPPに含まれる低分子フェノール酸が重合ポリフェノールと同様に大腸の微生物叢の組成に影響を与えることを示している。
・研究結果は、長期にわたって経管栄養を受けている高齢者では、NK細胞の毒性が低下していることと、高分子量ポリフェノールを発酵させて生成した低分子フェノール酸に生理活性があることを示しており、これらの低分子フェノール酸は、高サイトカイン血症や高ヘモキミア血症を引き起こすことなく、また腸内細菌叢の成分を変化させることなく、NK細胞活性の増加などの効果を発揮する。