WHOの癌統計によると、乳がんは世界の女性で最も一般的な癌だが、治療法の進歩により、乳がんサバイバー(BCSs)の数は着実に増加しており、高所得国では乳がんの現在の5年生存率は約90%に達している。
しかし一方で、乳がん治療はサバイバーを短期的および長期的な身体構造および身体機能障害発症リスクにさらす。
ICHOMによると、上肢機能障害(ULD)は、乳がんサバイバーが経験する最も顕著な治療転帰の一つで、乳がんサバイバーの日常生活における動作遂行能力に重大な影響を与え、しばしば自立性の喪失、就労能力の低下、および社会活動への参加制限を招き、全体的なQOL低下に寄与する。
一般に報告される同側ULD有病率は幅広く異なり、肩/腕の痛み(最大51%)、肩関節可動域(ROM)制限(最大50%)、腕の筋力低下(25%)、リンパ浮腫(6–52%)。ULD発症の危険因子には、乳房切除術、腋窩リンパ節郭清(ALND)、放射線療法、および高BMIが含まれる。
乳がんサバイバーにおける慢性肩痛は、様々な治療関連因子に起因するとされている。乳房切除術や腋窩リンパ節郭清(ALND)などの外科的処置は、神経損傷、瘢痕組織形成、および肩関節の力学変化を引き起こし、それらすべてが持続的な痛みに寄与する。放射線療法は線維症につながる可能性があり、肩の可動域制限を引きおこす。
リンパ浮腫が存在する場合には肩関節の機能が損なわれ、痛みを悪化させる可能性がある。
また、治療関連因子およびULDに続発して、乳がんサバイバーでは様々な肩関節病態を含む肩峰下疼痛症候群(SAPS)発症するリスクが増加している。
しかし、乳がん治療、肩痛、およびSAPS間の因果関係に関する科学文献や画像研究は少なく、その知見は決定的ではない。
リンクの画像研究は、乳がんサバイバーにおける慢性肩関節痛の理解を深めることを目的に、構造的な両側肩関節変性の有病率を評価したもの。
【結果】
病理学的所見の有病率は、手術側と非手術側で同程度だった。
肩痛を有する参加者において超音波で検出された病変は、右肩の91%および左肩の96%に存在した。
痛みのない肩でも、病変は右肩の59%、左肩の57%に認められた。
乳房手術部位と同側の痛みは参加者の57.7%が報告し、棘上筋病変が56%、肩鎖関節病変が39%、肩峰下滑液包炎が41%だった。
【結論】
乳がんサバイバーにおいて、乳房手術側かどうかにかかわらずローテーターカフ病変が高有病率で存在することが示された。
肩痛と、癌治療、BMI、利き手、またはリンパ浮腫など、既知の危険因子との間に明確な相関関係がないことは乳がんサバイバーにおける慢性肩痛の複雑さを浮き彫りにする。
この所見は、肩機能障害が長期的な治療の影響、変化したバイオメカニクス、および全身的または機械的要因を含む多因子的な原因から生じる可能性が高いことを強調している。
Subacromial Pain Syndrome in Breast Cancer Survivors—Are Structural Shoulder Changes Verified by Ultrasound Clinically Relevant?
・症例の90%以上において肩痛の根本原因は腱板病変だが、同様の病変は無症候性の個人の50%にも認められている。最も一般的な病理学的所見は腱断裂で、このうち、19例が部分層断裂であり、18例が全層断裂だった。
腱板断裂の臨床的病態は有意なばらつきを示し、関連する症状を伴う場合と伴わない場合があることが示された。多くの断裂が無症候性であることを考慮すると、これらの病変が時間の経過とともに症候性の状態に進行するリスクがある。
・患者の20%が両側性病変を示しており、これは乳がん患者に関する先行研究と一致している。両側性病変は非手術側の肩への機械的過負荷の結果である可能性もある。
腱板病変は手術側と非手術側の肩の両方で同等に存在し、これは加齢に関連している可能性がある。これらの所見は、早期検出と包括的な評価のために、定期的な両側肩の超音波検査の重要性を強調している。
・癌治療、BMI(ボディマス指数)、利き手、またはリンパ浮腫などの既知の危険因子と、肩痛発症との間に相関関係は特定されなかった。肩痛および関連病態は、癌治療自体から生じるのではなく、むしろその長期的な結果から生じる可能性があることを認識することが重要。これらには、大胸筋の緊張、線維症、神経障害性の変化、および肩甲帯のミスアライメントが含まれ、これらが複合的にバイオメカニクスの変化と痛みに寄与している。
・・・上記の知見から、手術後早期から上記の関連構造(大胸筋の緊張、線維症、神経障害性の変化、および肩甲骨ミスアライメント、ローテーターカフ)に対してケアを行うことで、乳がん手術後の肩関節障害は高確率で予防可能だと考えられる。
筋骨格系構造の健常性のみならず、全体としての健康を考慮した運動療法との組み合わせが最も効果的だろう。
乳がん手術後の身体機能向上、肩関節障害の予防および治療は、当院のカイロプラクティックとパーソナルトレーニングの組み合わせをお試しください。様々な疾患でお悩みの多くの方に、効果を実感していただいています。
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