様々な大会の試技前に何を摂取すればいいか?とのご質問をよくいただきます。
特にアスリートパフォーマンスにとって非常に重要な炭水化物源はどうすべきか?
会場まで持ち運びが容易で、試技前後に消化吸収しやすく、なるべく栄養価が高い天然食品が理想・・・
スポーツドリンクでいいじゃないかという意見も聞こえてきそうですが、スポーツドリンクは水分補給を最適化することに主眼を置いているため、パフォーマンスとその後の回復を目的とした栄養補給とは目的が変わってしまう。
アスリート、特に持久系競技のアスリートは市販のジェル状サプリで補給するのが一般的だが、中身の配合はマルトデキストリン、ブドウ糖果糖、クエン酸ナトリウム、中鎖トリグリセリド、海塩、クエン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、天然柑橘系香料などの、あくまで成分の集合体であるにすぎず、天然食品が発揮するのは難しい。
一方で、同じジェルでもフルーツベースのジェルは市販のジェルが持つ体内グルコースレベル上昇作用に加えて、抗酸化作用、抗凝固作用、抗血栓作用、抗炎症作用など、競技後の身体回復効果も期待できる。
リンクの研究は、南米産のジェニパップとバナナ・プラタノをベースにした炭水化物ゲルを開発し、様々な観点から分析組成、抗酸化活性、ポリフェノールのプロファイルを提示し、アスリートにおける適用可能性を実証することを目的としたもの
【結論】
ジェニパップとバナナ・プラタノをベースにしたゲルの3つの製剤は、味とテクスチャーに関して同じ官能特性を示した。
調製された製剤の物理化学的パラメータ(pH、可溶性固形分、滴定酸度)および近位組成(水分、タンパク質、脂質、炭水化物)は分析された市販のゲルのものと同等であり、高品質のエネルギー補給製品だった。
ショ糖、果糖、ポリフェノール、抗酸化活性のレベルは、ジェニパップとバナナのジェルで高く、市販のゲルでは観察されなかった。
Development of Fruit-Based Carbohydrate Gel for Endurance Athletes
・ジェル製剤は分析した市販ジェルと同様にpH値の低い酸性特性を示し、微生物学的制御に有利だった。食品の急速な劣化を防ぐには、低レベルの水分とpHが重要である。
・滴定酸度は、特定の濃度の塩基と相互作用する酸の量によって決定できる。フルーツベースのジェル製剤は滴定酸度が6%を超えており、酸度の点で高い分類となった。高濃度のゲニパップを使用した製剤は酸度が高かった。本質的に酸性の食品は劣化を防ぐだけでなく、製品の味や安定性に影響を与え、ジェルの保存に貢献する。
・ジェニパップとバナナ・プラタノのジェルには炭水化物とエネルギーが多く含まれていた。これは筋グリコーゲンの維持、疲労のピークの遅延の意味で重要である。十分なエネルギー補給は運動によるダメージを防ぎ、運動中および運動後の身体パフォーマンスを維持する上で重要である。
・ジェニパップとバナナ・プラタノのジェルはグルコース含量が顕著で、次いでスクロース、フルクトースの順で含量が多かったことから、このジェルは高炭水化物含量食品に分類される。激しい運動中の持久力回復には水分と電解質だけでは効果がないため、高炭水化物含量食品は持久系アスリートのパフォーマンス向上を促進すると考えられる。
・グルコース-フルクトースの組み合わせは、肝臓と筋グリコーゲンを同時に合成する可能性がある。スポーツ選手におけるアナボリック作用は、適切な多量栄養素の摂取によってプラスの影響を受ける。
・市販ジェルは、炭水化物含量が62%であるにもかかわらずわずかなグルコースレベルしか示さなかったことは重要である。
・ジェニパップおよびバナナ・プラタノのジェル製剤で有意なポリフェノール含有濃度が検出された。総ポリフェノール含量のパラメーター分類は、低ポリフェノール含量(<100mg GAE/100g)、中ポリフェノール含量(100-500mg GAE/100g)、高ポリフェノール含量(>500mg GAE/100g)。ジェニパップおよびバナナ・プラタノ炭水化物ジェル製剤は中程度の分類であ、持久力に関連した損傷から筋回復を促進する可能性がある。
・ポリフェノールは抗酸化作用や抗炎症作用など、生物活性の面で利点があり、野菜、果物、種子などに含まれている。ポリフェノールの抗酸化作用と抗炎症作用は高強度トレーニング後の酸化的損傷を予防し、筋回復にプラスに働く。酸化ストレスと筋肉の炎症はポリフェノールがフリーラジカルやその他の活性酸素種を捕捉する作用によって抑制できる。
・高い有酸素運動能力を必要とするスポーツでは、筋肉痛軽減はポリフェノールの摂取に関係している。肺に血液を送るメカニズムを改善し、骨格筋代謝を高めることがそのメカニズムである。
・ジェニパップおよびバナナ・プラタノには、それぞれビタミンCやカロテノイドなどの微量栄養素や生理活性化合物が含まれている。
・・応用できそうですね。フルーツジェル、アスリートの皆さんは自作してみてはいかがでしょうか?ご自身の体質や病歴、競技特性など踏まえてフルーツの種類を選び、都度データを取ってみるのも面白いと思います。
ご紹介したデータでサンプルされているジェニパップおよびバナナ・プラタノに似た成分のもの、同種のフルーツから試してみてもいいですね。
市販と自作の違い・・いがいとこういったちょっとした部分でアスリートとしての寿命が左右されているのかもしれません。
アスリートパフォーマンスにおけるより具体的な栄養戦略をお探しの方は、当院の栄養マニュアルのご利用を是非ご検討ください。
慢性疲労、体質管理にも非常に有益な内容になっています。
Lineまたはメールによるカウンセリングに基づき、皆様の症状や体質に合わせて摂取カロリー数の計算や、食事デザイン、サプリメントの選択、排除すべき食材などを最新データを元にパッケージでデザインし、ご提案いたします。