肘関節後方インピンジメントは、オーバーヘッドの投球モーションを多用するアスリートなど、肘関節を酷使することで生じる障害で、一般的にはまれな疾患。
症状は肘後面の疼痛、関節液貯留、ロッキング、クレピタス音で、肘の過伸展、外反、屈曲の反復により肘頭窩の骨の変性または軟部組織が癒着することで発症する。
後方インピンジメントの一般的な原因として、ルーズボディ(関節内に浮遊する小さな骨片や軟部組織片)、肘頭ストレス骨折、肥厚した滑膜ひだなどが挙げられる。
稀に肥大した後部脂肪パッドの剥離が原因の珍しい症例も報告されている。
先日担当させていただいたプロテニスプレーヤーの肘関節後方インピンジメントは、肘関節のOVER USEによる軽度の滑膜の肥厚が原因だった(上画像のb部分)。
後方インピンジメントは、外側尺側側副靭帯障害のように肘関節の不安定性から生じることもあるが、検査では認められなかった。
治療は肘関節の屈曲・伸展の痛み発現パターンに基づいて、肘頭の関節ポジションと関節運動をアジャスメント。
治療後の検査で実際のテニスプレイ時のモーションを試していただいいたところ、痛みのレベルは問題なさそうだった。
滑膜へのアプローチはほとんど行わずに済んだので、軟部組織への侵襲も極力抑えることができたのでまずまずの結果。
あとは実際にラケットを持って、長時間プレイしてみてどうか。
肘関節後方インピンジメントの治療自体はさほど難しいものではないが、特にアスリートの場合長時間にわたるプレイ中や、プレイ後のケアの仕方次第では炎症物質の貯留が改善されず中長期的な再発リスクが高いままなのでしばらく観察が必要。
肘関節の障害でお困りのかたは当院に一度ご相談ください。