腰痛ヨガで検索すると山ほど情報が出てくるが、果たして本当に効果があり、エビデンスは確立されているのだろうか?
過剰ストレッチによる悪化の可能性は?
非常に興味深いデータをご紹介したい。
成人の慢性非特異的腰痛の治療におけるヨガの有益性と有害性を、偽ヨガ、特定の治療なし、最低限の介入、その他の積極的治療と比較し、痛み、機能、QOL、有害事象に着目して評価。
ヨガ、偽ヨガ、介入なし、その他の介入、他の療法にヨガを追加したものと比較したヨガの無作為化対照試験を対象に、標準的なコクラン検索。
最新の検索日2021年8月31日。
主なアウトカムは以下
1.背中の機能
2.痛み
3.臨床症状改善
4.精神的・身体的QOL
5.うつ病
6.有害事象
マイナーアウトカム
1.労働障害
主要アウトカムはGRADEを用いてエビデンスの確実性を評価。
Yoga for chronic non‐specific low back pain
米国、インド、英国、クロアチア、ドイツ、スウェーデン、トルコの21試験(2223人)が対象。参加者は臨床現場と地域の両方から募集され、ほとんどが40代または50代の女性。
多くの臨床試験でアイアンガーヨガ、ハタヨガ、ヴィニヨガが使用されていた。
すべての試験は参加者と提供者が治療について盲検化されておらず、アウトカムが自己評価であったためパフォーマンスバイアスと検出バイアスのリスクが高かった。
主な結果
3ヶ月の時点で、ヨガは「運動なし」よりも腰の機能と痛みの改善においてわずかに優れているが、その差は腰痛患者にとって十分に”重要ではない”という低~中質のエビデンスがあった。
ヨガによってより臨床的に改善されるというデータは低品質だった。
身体的(活動できる)、精神的(感情的問題)両方のQOLがわずかに改善されるという中程度の質のエビデンスがあり、うつ病はほとんど改善されないという低品質のエビデンスがあった。
3ヶ月時点での背中の機能の改善に関して、ヨガと他のタイプの運動との間にほとんど差がないという中程度の質のエビデンスがあった。
3ヶ月後の痛みに対する効果についてのエビデンスは質が非常に低く、痛みに対するヨガと他の運動との間に違いがあるかどうかは依然として不明。
臨床的な改善や身体的・精神的なQOLの変化についてもエビデンスの質は非常に低いものだった。
試験で報告された最も一般的なヨガの有害性は腰痛の増悪であった。
有害性リスクは、運動しない場合よりもヨガの方が高いという低品質エビデンスがあり、有害性リスクはヨガと背中に重点を置いた運動で同程度であるという低品質のエビデンスがあった。
著者の結論
ヨガは運動療法なしと比較して、背中関連の機能と痛みにわずかで、臨床的に重要でない改善をもたらすという低から中程度の確実性のエビデンスが存在する。
3ヶ月の時点で、ヨガと他の腰痛関連運動との間には、腰痛関連機能についてはほとんど差がなく、痛みとQOLについてはヨガと他の運動との間に差があるかどうかはまだ不明。
ヨガは運動をしない場合よりも多くの有害事象と関連するが、他の運動と同等の有害事象のリスクを持つ可能性がある。
上記の結果から、運動なし、または他の運動の代わりにヨガを使うかどうかは、入手可能性、費用、参加者の好み次第。
すべての研究が非盲検で、パフォーマンスバイアスや検出バイアスのリスクが高く、盲検比較で臨床的に重要な利益が見つかるとは考えにくい。
・・・誰も傷つかないように配慮した言葉選びから、論文著者の方の人間性が滲み出ている。
開院以来当院は一貫して過剰ストレッチや関節可動域のリスクと、治療効果に対する疑問、受傷リスクの上昇を患者さんに伝えてきたが、今回コクランにデータが掲載されたことで患者さんも明確に判断できると思う。