現在、糖尿病は世界的に死亡率と寿命を低下させる主要な原因の一つとなっており、世界的な傾向として、発症率、有病率、死亡率のいずれもが増加している。
コロナパンデミックで潜在的な有病者数はさらに増加しただろう。
世界保健機関(WHO)は、この傾向の解決が緊急の課題であると強調している。
また、糖尿病は、精神的な問題を含む他の合併症とも関連している。
うつ病を分析した他の研究者によるメタ解析では、糖尿病が抑うつ症状およびうつ病発症の独立した危険因子であることが示された。
また、糖尿病と不安症のリスク増大との間にも関連性が認められている。
糖尿病はQOLの低下に加えて、うつ病や不安症のリスクの増大など多くのメンタルヘルスの問題と関連しており、ビタミンDの欠乏は糖尿病患者のこれらの転帰に影響を与える要因の一つであると考えられている。
リンクのデータは、糖尿病患者の精神的健康に対するビタミンD補給の影響に関するデータを提示した文献のシステマティックレビュー。
本研究はPubMedおよびWeb of Scienceデータベースのシステマティックな検索を行い2021年9月までに発表された介入研究をレビューの対象とした。
結果、ビタミンDの補給が糖尿病患者の精神的健康に良い影響を与えることが確認された。
うつ病や不安症に対するビタミンD補給の影響を分析した研究では、ビタミンの有益な効果が確認された。今回のシステマティックレビューでは、ビタミンDの補給が糖尿病患者の精神的健康にプラスの影響を与えることが示され、それは不安と抑うつについて証明された。
糖尿病患者のビタミンDの状態と精神的な健康状態を改善するためには、ビタミンDの補給が推奨されるべきであることを示していると結論。
Influence of Vitamin D Supplementation on Mental Health in Diabetic Patients: A Systematic Review
・糖尿病の効果的な管理(適切な体重の維持、血糖値、血圧、脂質のコントロール、および 糖尿病の長期化に伴う合併症の発症の遅延・予防)には、適切で計画的な食事療法が必要。
・様々な潜在的栄養不足の中でも、ビタミンDの不足は糖尿病患者にとって重要な問題である。多くの大規模研究により、ビタミンDの欠乏と糖尿病患者の関連性が示唆されていることから、ビタミンDの欠乏は重要な問題であると考えられている。
・現在、メンタルヘルスを改善するためのビタミンD補給の役割が広く議論されている。他の研究者によるメタアナリシスでは、ビタミンD補給がネガティブな感情の緩和に有効であることが示唆され、糖尿病患者の生活の質を向上させる役割が明らかにされている。
・今回のシステマティックレビューに含まれる研究結果から、ビタミンDの摂取は、糖尿病患者のメンタルヘルスに有益であることが示された。
ビタミンD摂取は精神疾患を治療するための効率的なアプローチかつ精有望な治療戦略と考えられる。
ビタミンDの補給が糖尿病患者のメンタルヘルスに与える影響を分析した研究の数は少ないが、結果は一貫している。
・うつ病や不安症については、すべての研究でビタミンDの有益な効果が確認されている。うつ病や不安症の存在で糖尿病の治療成績が悪化することが証明されているため、この観察結果は有望である。抑うつや不安の症状を効果的に軽減することで、抗糖尿病治療の効果を高めることができると考えられる。
・さらに効果的な結果を得るためには、認知療法、特にマインドフルネス
に基づいたものが効果的であり、うつ病の症状を軽減し、QOLを向上させることが期待される。
・ビタミンDの正確な作用機序はまだ解明されておらず、精神的な健康状態への影響に関する多くの重要な疑問はまだ解決されていないが、糖尿病患者はビタミンDの良い影響を受ける可能性があり、ビタミンD欠乏症を治療し、精神的健康を改善するために十分な補給を受けるべきである。