前回のブログに続き、今回も骨密度・骨代謝に関する興味深いデータをまとめてみたい。
今回ご紹介するデータの対象は、閉経後女性。
閉経移行期〜閉経後女性で骨密度について検診などで指摘があった方はぜひ参考にしてほしい。
タイトルにあるように、骨減少症に対するプロバイオティクスの補給効果に関するデータだが、過去の研究でもプロバイオティクスは骨代謝に有益な効果を有することが判明している。
プロバイオティクスとは口腔、皮膚、泌尿器、生殖器、腸などの粘膜に存在する乳酸菌、ビフィズス菌、バチルス菌、エシェリヒア菌、エンテロコッカス菌といった細菌や、サッカロミセス菌などの酵母など生きた非病原性微生物を含むサプリメントを指し、発酵製品(乳製品、ビール、肉、キムチなど)にも含まれている。
以前から適切なプロバイオティクスの投与は、特定の疾患の治療や予防(腸ー皮膚軸、腸ー関節軸、腸ー脳軸など)に利益をもたらす可能性があり、in vitroおよびin vivoの研究に基づいてプロバイオティクスの様々な作用機序が提案されている。
真っ先にあげられるプロバイオティクスの作用機序の一つは、上皮バリアの完全性強化と、抗原の移行と腸管免疫細胞の刺激を減少させて腸管機能を調節している可能性があげられる。
また、炎症性サイトカイン、破骨細胞形成促進性サイトカイン、酸化ストレスを減少させる能力もある。
さらに、細菌自身のビタミンD、K、C、葉酸などのマトリックスや骨成長に必要な多くのビタミンや酵素を合成する非常に重要な能力をもつ。
上記の知見に基づき、リンクの研究は骨減少症の閉経後女性における多種類プロバイオティクスの3ヵ月間補充後の標準的血清骨吸収マーカーCTXと骨形成マーカーP1NPの変化を評価したもの。
閉経後骨粗鬆症予防の補助または代替としての多種プロバイオティクスサプリメントの可能性を探っている。
骨減少症の閉経後女性40人を対象に無作為に2群に分け、介入群には多種プロバイオティクスを投与、対照群には同一のプラセボを毎日投与。
【結果】
両群のベースラインの特徴は同様だったが、血清骨吸収マーカーであるI型コラーゲンのC末端テロペプチド(CTX)の中央値は多種プロバイオティクス群の方がプラセボ群よりもわずかに高かった。
12週後、ベースライン時と12週時の血清CTXの平均差は、多種プロバイオティクス群とプラセボ群で有意差があった。多種プロバイオティクス群ではベースライン時と比較して12週後の血清CTXが有意に減少した。
プラセボ群では血清CTXに有意な変化は認められなかった。
【結論】
閉経後女性はエストロゲン欠乏と加齢プロセスによって骨減少が進行し、最終的には骨粗鬆症に至るリスクが避けられない。
この研究では、骨減少症の閉経後女性に12週間、多種類のプロバイオティクスを補充することで有意な副作用なしに破骨細胞誘発性骨吸収を抑制し、血清骨吸収マーカーCTXの増加を遅らせる可能性があることを証明した。
・この研究で使用されたプロバイオティクスは、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus rhamnosus、Bifidobacterium animalis ssp. lactis、Bifidobacterium longum ssp. longum、Bacillus coagulans、および270ミリグラムのイヌリン(プレバイオティクス)で構成された。
・プロバイオティクス群では血清骨吸収マーカーCTXの有意な減少が、ベースライン時と12週時の血清骨吸収マーカーCTXの平均値の差として観察された。しかし、血清骨形成マーカーP1NPの群間平均差に有意差は認められなかった。これは、閉経後の骨量減少に対する多種プロバイオティクス補充による保護効果を示している。
・破骨細胞誘発性骨吸収を遅らせるプロバイオティクスの効果が実証された。他の研究では、プロバイオティクス投与は腸や骨髄における炎症性メディエーターやサイトカインレベルを低下させる可能性が指摘されている。それらの変化は幹細胞、骨芽細胞、破骨細胞にシグナルを送り、骨のホメオスタシスに影響を与える。
炎症性サイトカインや骨溶解性サイトカインの減少が抗破骨細胞形成性サイトカインの発現を変化させ、破骨細胞の形成や骨吸収のダウンレギュレーションにつながる可能性がある。
・カルシウム、セレン、亜鉛、マグネシウム、カリウムなどのミネラル吸収と利用能を高める能力がいくつかの菌株で確認された。吸収促進メカニズムとして、腸管上皮細胞間のタイトジャンクションの調節、腸のpHの変化、細胞増殖に不可欠なタンパク質の発現の増加、細胞輸送に不可欠なタンパク質の発現増加、酢酸やプロピオン酸などの短鎖脂肪酸(SCFA)産生などがあげられる。
・プロバイオティクスはミネラルや栄養素の利用性を高めることで閉経後女性のような骨折しやすい集団の骨密度(BMD)を改善し、骨折リスクを低下させる可能性がある。この研究は、12週間の多種プロバイオティクス補給が、骨減少症の閉経後女性の骨吸収を阻害することを示している。
・乳酸菌やビフィズス菌などの異なる系統のプロバイオティクスをホルモン欠乏マウスや卵巣摘出(OVX)マウスに投与すると、骨量減少が効果的に回復することが示されている。
ラクトバチルス・パラカゼイとラクトバチルス・プランタラムで発酵させた豆乳のOVXマウスに対する効果を検討した8週間の研究では、プロバイオティクス摂取によりアグリコン型イソフラボン、可溶性カルシウム、ビタミンD3濃度が上昇することが示された。
さらに、OVX群および偽OVX対照群と比較して、治療群では海綿骨の体積と数が増加した。
・ビフィズス菌の利点を明らかにするためにOVXラットにビフィズス菌を16週間投与した研究では、骨密度、海綿体の数と厚さ、大腿骨の強度が増加した。プラセボ投与群と比較して、大腿骨の骨表面におけるOVX誘発破骨細胞の増加を抑制することで破骨細胞の形成と活性が調節された。
・Tスコアが-2.5以上の健康な閉経後女性249人を無作為に2群に分け、1カプセルあたり1010CFUのプロバイオティクスサプリメント(Lactobacillus paracasei DSM 13434、Lactobacillus plantarum DSM 15312、Lactobacillus plantarum DSM 15313)またはプラセボを12ヵ月間摂取させた研究では、プラセボ群では腰椎の骨密度(BMD)が有意に減少したのに対し、プロバイオティクス群では骨量減少はごくわずかだった。これは、非骨粗鬆症で健康な閉経後早期の女性において、3株の乳酸菌を用いた12ヵ月間のプロバイオティクス投与はプラセボと比較して腰椎BMDの低下を有意に抑制したことを示唆している。
・骨減少症の閉経後女性にラクトバチルス・ロイテリ6475を12カ月間投与したところ、プラセボを投与した場合と比較して脛骨の総体積BMDの減少が抑制されたことが示された。
・2018年、健康な閉経後日本人女性を対象にプロバイオティクスBacillus subtilis C-3102(C-3102)の6カ月間の投与による骨密度(BMD)に対する治療効果と腸内細菌叢への影響を検討する研究を行った結果、プロバイオティクス摂取群では12週目に骨吸収マーカーである骨型酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ・アイソフォーム5b(TRACP-5b)の減少が認められ、24週目には股関節BMIの有意な増加が認められた。さらに、ビフィドバクテリウムの相対量が12週間後に有意に増加し、フソバクテリウムの相対量が投与12週後と24週後に減少した。
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