今回のブログはアナボリック効果のある筋肥大系サプリの発がん性リスクについての考察をデータを元にまとめていきたい。
精巣生殖細胞癌(TGCC)は、14〜44歳の男性に最も多く見られるがんで、精巣癌の家族歴を持つ男性は発症リスクが8-12倍高く、停留睾丸の既往がある場合もリスクが著しく高くなる。
しかし、TGCCの発生率が1975年の10万人あたり3.73人から2017年の10万人あたり6.31人に増加した理由を停留睾丸を含む遺伝的要因では説明できない。
近年では、環境曝露、特に思春期の曝露がホルモン動態の破壊による精巣機能の変化や感受性遺伝子の機能の損傷・修飾によって精巣がんリスクを高める可能性を示唆する証拠が増えている。
近年、特にスポーツ選手の間でパフォーマンスを向上させるために筋肉増強効果のあるサプリ(MBS)が広く使用されている。
ある研究では、エリートアスリートの87.5%が摂取していることが判明。
MBSの健康リスクのうち、唯一の発がん性リスクはMBSの使用と関連しているTGCC。
TGCC患者の約20%が診断時にアナボリック物質を服用していたことが報告されている。
コネティカット州とマサチューセッツ州のTGCC患者の追跡集団ケースコントロール研究では、MBSの使用がTGCCと関連する潜在的な危険因子であること、特に25歳以前にMBSを使用した人であることが確認されている。
発表されたすべての論文は、MBSは単なる栄養補助食品であることを示しているが、2つの集団研究においてアンドロステンジオン(A-dione)の使用をMBSの使用とみなしている研究者もいる。
A-dioneは栄養補助食品とされていたが、2004年にアナボリックステロイドに再分類された。その研究者は、アンドロステンジオンが30種類のMBS分析で見つかったと述べている。
栄養補助食品の含有成分として、あるいは特定のMBSの汚染物質として出現した可能性もある。
アンドロステンジオンと他のAASの精巣癌における関係は調査する価値があるだろう。
現在、米国内で合法的に販売されているMBSに含まれる有害な可能性のある成分は、不純物、プロホルモン、禁止物質、医薬品など多岐にわたる。
さらに、これらのサプリメントの多くにはラベルに記載されていない化合物を含んでいる。
また、ビスフェノールA(BPA)や鉛などの環境汚染物質が含まれているものもある。
また、合法でラベルに記載されていても、有害な可能性がある物質や未調査の物質が含まれているものも存在する。
Can Muscle Building Supplements Increase Testicular Cancer Risk?
・よく使われるサプリメント
NCAAの男子アスリートを対象とした全米調査によると、プロテイン、クレアチン、アミノ酸、エナジーブースター、利尿剤、減量サプリメントなどが最もよく使用されるサプリメントであった。
純粋なクレアチンは研究機関で安全に使用できるとみなされている。
プロテインの補給と発がんリスクを明確に関連づけた研究はいまのところない。
A-dioneは規制薬物に分類され、使用が減少している。
最も使用されているMBSであるクレアチンおよびプロテインが発がんとの関連性があるとする証拠はほとんどない。
一部で報告されている関連性は、クレアチンまたはプロテインと表示されている製品に他の化合物が含まれていた可能性や、クレアチンまたはプロテインを摂取する人々が他のワークアウトサプリメントまたはアナボリックステロイドも摂取しているという可能性も考慮すべき。
下の画像は、発癌性、ホルモン障害、または精巣障害の潜在的リスクとして特定されているいくつかのMBS成分、汚染物質、不純物をまとめたもの。
・サプリメントに含まれる汚染物質
FDAはサプリメントを規制しないため、環境汚染物質に関する情報の多くは民間部門から提供されている。
MBSから検出された重金属には、カドミウムと鉛がある。
カドミウムは内分泌かく乱物質として知られており、比較的低いレベルの暴露でも精巣障害が起こる可能性があるが、過去の動物実験ではTGCCとの直接的な関連は確認されていない。
鉛は発がん性グループ2Aに指定されており、テストステロン値の上昇を含むホルモン作用や睾丸への特異的な影響との関連も指摘されている。
MBSのユーザーの多くがアナボリックステロイド(AAS)も併用している可能性もある。
一般的なアナボリックステロイドであるナンドロロンとスタノゾロールは、動物モデルにおいて精巣ライディッヒ細胞増殖を促進し、腫瘍発生のリスクを高めることが示されている。
精巣がんはまへの関与は不明だが、アナボリックステロイドは複数のホルモン関連の癌に寄与し、IARCにより発がん性物質としてグループ2Aに分類されている。
MBSとアナボリックステロイドの併用確率が高いことが、発がんリスクの一因である可能性は否定できない。
結論
MBSは、発がん性物質を含む有害成分を含むことが多く、MBSに関連する化学物質の暴露はホルモン経路を乱し、精巣がんの一因となる可能性がある。