マグネシウム(Mg)の健康効果に関する文献が指数関数的に増加している。
16のメタアナリシスと50の独立したアウトカムを含むレビューでは、Mgはいくつかの健康効果と関連していることが示唆されている。
Mgは600以上(!)の酵素反応に関与し、妊娠、心臓血管、胃腸、感染症 および糖尿病など代謝疾患において幅広い作用を持つ。
いくつかの論文において、Mgは炎症性パラメーターを改善することが報告されている。
ある観察研究では、肥満患者の食事性マグネシウム摂取量と炎症パラメータ値(特にCRP)の間に逆相関があることが報告されている。
また2つのメタアナリシスでは、Mgの補給はCRPのような炎症性及び抗炎症性のいくつかの指標に影響することも示された。
また、Mgが炎症状態を改善するメカニズムは明らかではないものの、Mgの欠乏が炎症プロセスの引き金となることは動物モデルやヒトの研究で証明されている。
Mgの減少がマクロファージを刺激してカルシウムイオンを細胞内に流入させた結果、神経細胞内のカルシウムイオンが増加し、神経伝達物質やIL-6のようなサイトカインが放出されることで炎症反応を起こすCRPの放出が促進されるという説明が可能。
しかしこのテーマに関する過去の観察研究は、研究デザインなどの面で信頼性が引い。
リンクのレビューとメタアナリシスは、慢性炎症の血清パラメータに対するMg補給とプラセボの効果を調べたすべての無作為化対照試験(RCT)の現状を要約することを目的としたもの。
2021年11月23日まで複数のデータベースでRCTを検索。
2484の論文のうち、17のランダム化比較試験(889人、平均年齢46歳、女性:62.5%)が含まれた。
バイアスリスクは低かった。
メタ分析では、Mg補給は血清C反応性蛋白(CRP)を有意に減少させ、一酸化窒素(NO)濃度を増加させた。
またMg補給は、血漿フィブリノーゲン、酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ5、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー13B、ST2タンパク質、およびIL-1を有意に減少させた。
Mg補給は、様々なヒトの炎症マーカー、特に血清CRPとNOレベルを有意に低下させる可能性があると結論。
・800人以上が参加した17のRCTを含む今回のメタアナリシスでは、Mg補給が血清CRP値を有意に低下させることが明らかになり、過去の文献を支持する結果となった。さらに、Mgの補給はNOレベルを増加させることも判明した。
・最近のエビデンスでは、Mgの補充が血漿フィブリノーゲン、酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ5、TNFリガンドスーパーファミリーメンバー13B、ST2タンパク質、IL-1の減少を著しく改善したことが報告されている。
・動物モデルでは、Mgの欠乏は最終的にTNF-αなどの炎症カスケードに関与するサイトカインの産生を増加させる活性酸素の生成につながることが報告されている。
これらのサイトカインの放出は、炎症プロセス開始シグナルと考えられる細胞内Ca2+レベルの上昇によって誘導され、これはMg不足の場合に発生する可能性がある。
Mg欠乏に関与するすべてのシステムは、特に炎症に関与する経路を制御する細胞内Ca2+の調節を介して、炎症反応に影響を与える可能性がある。
・今回の結果は、MgがNOレベルを改善することができることを示す最初のメタアナリシス。
この発見は、炎症メカニズムの観点からだけでなく、心血管系の観点からも重要である。
興味深いことに、低Mgレベルは心房細動と冠状動脈性心臓病のリスクの増加と関連していることを示すエビデンスがあり、Mgの補充は不整脈の二次予防として提唱されている。
・Mgの効果は、男性よりも女性で血清CRP値を下げる効果が高かった。しかし、正確な理由は不明であり今後の研究が必要である。
結論
系統的レビューとメタアナリシスにより、Mg補給が様々な炎症マーカー、特にCRPを有意に減少させ、NOレベルを増加させる有益な効果があることが示された。
今回のデータは、特に心血管疾患に焦点を当てた患者においてMg補充を考慮することの重要性を示唆し、臨床における新しいシナリオを開く可能性がある。