大学生の不眠症の有病率はもともと高かったが、パンデミック下の生活様式(運動不足、日照不足による体内時計の狂い、腸内環境の変化など)でさらに高くなったと予想されている。
不眠症はうつ病の誘因となることが報告されており対策は重要。
不眠症発症には、年齢、性別、併存疾患など、さまざまな要因が関わるが、それら危険因子をコントロールすることは比較的困難と考えれられている。
一方で、慢性疼痛は大学生の不眠症と正の相関を示すことが明らかにされており、コントロール可能な因子として注目されている。
不眠症と慢性疼痛は密接に関連し、不眠症患者の40%以上が身体の1箇所以上の慢性疼痛を有していると報告する研究もある。
高齢者を対象としたこれまでの研究でも、慢性疼痛が不眠症の予測因子であることが報告されている。
また、慢性疼痛は睡眠時間だけでなく睡眠の質にも影響を及ぼす。
睡眠の質の悪化から負のフィードバックループが生じ、睡眠の質がさらに悪化し、慢性疼痛がさらに悪化する。
長期の不眠は不安やうつなどの症状を悪化させる。
慢性疼痛と睡眠の質を調査した先行研究では、半数以上の被験者が痛みの悪化、睡眠中に3回以上目が覚める、睡眠時間が5時間未満、入眠に30分以上かかるなど、睡眠の断片化を訴えたと報告されている。
しかし先行研究の多くは高齢者を対象にしたものであり、大学生の不眠と慢性疼痛の関係を調べたものは少なく、十分な検証はなされていない。
また、身体の一部の慢性疼痛が不眠症と密接に関連しているかどうかは、依然として不明のまま。
慢性疼痛の強度や身体部位についての詳細な評価が必要とされている。
高齢者の慢性疼痛の部位について調査した先行研究では、下肢と足に53.5%、頭部に23.6%、腹部と骨盤に21.1%、首と肩関節に19.1%、前腕と手関節に18.8%、胸部に15.7%、腰部に14.4%、顔面に3.3%発現している。
しかし、筆大学生における慢性疼痛の部位と不眠の関係を調べた研究はない。
リンクの研究は、大学生の不眠症と密接に関連する慢性疼痛の部位を明らかにすることを目的としたもの。
大学生494名にウェブベースのアンケートを使用して9つの質問。
性別、年齢、慢性疼痛の有無、慢性疼痛の強さ、慢性疼痛の部位、慢性疼痛の期間、およびAthens Insomnia Scale(AIS)、Pain Catastrophizing Scale、Hospital Anxiety and Depression Scaleのスコアを集計。
結果、腰部の慢性疼痛とAISスコアとの間に有意な正の相関が認められた。
Chronic Lumbar Pain and Insomnia in College-Aged Students
・大学生の不眠症は慢性腰痛と正の相関があることが明らかになった。
過去の研究では、慢性腰痛は睡眠の質の低下、睡眠時間の増加、入眠に要する時間、日中機能の低下、と相関があることが分かっている。
また、慢性腰痛を持つ被験者ほど睡眠障害の頻度が高いことが示されている。
慢性腰痛と睡眠との間に有意な相関があることも報告されており、今回の研究で明らかになった傾向を裏付けている。
・慢性疼痛(慢性腰痛に限らず)は運動や歩行動作の低下を伴い、うつ病の発症率も高いことから、身体的・精神的健康に影響を及ぼす。
腰痛発作時には交感神経が活性化されるが、慢性腰痛が続くとその活性が過剰になり体内の炎症性サイトカインの濃度が上昇する。
それらは睡眠障害と関連する一連のプロセスである。
・大学生の1週間の座位時間は平均30時間以上。
座っている時間が長いと、身体的・精神的な不調を引き起こし、健康への負担が大きくなる。
座位は腰椎を変位させて腰部への内圧を増加させる。したがって、大学生は腰に機械的ストレスを受け続け、慢性的な腰痛を発症する可能性が高くなる。
論文中では、慢性腰痛の治療において鍼灸、認知行動療法などの心身医学的介入が有効であること示されているが、カイロプラクティックも非常に有効。
長時間の座位で圧迫される臀部や、股関節の機能低下に起因する場合、カイロは優先順位の高い選択肢になり得る。
不眠と腰痛を併発している方は是非一度当院にご相談を。