舞台上で腰背部を痛めてお越しになられた患者さん、いろいろ治療法を試みるもあまり芳しくなかった(とはいえ、治療後ペインレベル10→2くらいにはなる)のだが、起立筋をリリースしたら一発で改善。
起立筋は私の中で優先度が低い部位なのだが、あれこれ難しく考えず、時にはシンプルなアプローチも必要と….
さて、今回のブログも乳がんに関するデータをまとめてみたい。
先日のブログにも書いたとおり、身の周りで乳がんと診断される方が増えているため、少しでもご本人やご家族に参考になりそうなデータがあれば随時紹介していくつもりだ。
今回ご紹介するのは、悪性腫瘍と性格的特徴、ストレス、抑うつ、社会的孤立、感情的反応などの心理的要因との相関についての研究。
感情的反応などの心理的因子と悪性腫瘍の相関は長年にわたって研究されている。まだ完全に解明されていないものの、ある種の性格特性はウェルビーイングを向上させるが、一方で病気の発生を助長するものもあることがわかっている。
一般に「BIG 5」と呼ばれる性格特性(神経質、外向性、経験に対する開放性、同意性、良心性)は普遍的な性格特性であり、疾病負担、自覚的健康状態、生活様式、対処メカニズム、ストレスの多いライフイベントに対する反応など、個人の健康の重要な側面に影響を及ぼす。
ストレスはエピネフリン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどのカテコールアミン産生を促進し、慢性化するとNK細胞の活性やリンパ球の増殖などの免疫機能を著しく損なう可能性がある。また、ストレス関連プロセスが、血管新生、浸潤などの腫瘍進行シグナル伝達経路にも影響を及ぼす可能性があることが示されている。
従って、慢性ストレスに対する個々の反応は免疫学的機能に直結しており、適応システムが体内の炎症を解決できない場合、腫瘍性疾患の発症に関与する可能性がある。
乳がんに罹患した女性におけるストレスと生活習慣の関連性に関する研究では、ストレスと神経質な性格が危険な生活習慣と相まって、乳がん発症の一因となる可能性があることが示されている。
リンクの研究は、遺伝性乳がん・卵巣がん素因を持つ357名の女性を対象に、食行動および身体活動への関与と、ビッグファイブ性格特性との関係を分析したもの。
【結果】
同意性スコアの高さは乳がん・卵巣がん高リスク女性における1日の食事回数が多いことと相関していた。
神経質スコアが高い女性は、新鮮な果物や野菜、穀類を摂取する傾向が低かった。
経験に対する開放性スコアが高い女性は、乳製品の摂取、植物性脂質の摂取、高い身体活動により多く関連していた。
BIG5性格特性
・性格特性モデルは、パーソナリティを内的特性の結果として捉える最も一般的な概念の一つ。BIG 5性格特性モデルと食品摂取頻度との関連を調査した研究はこれまで数えるほどしかない。この研究では、健常者群とがん患者群との間で性格特性有病率に有意差はなかった。
・性格特性と食行動との間には統計的に有意な相関関係があることが証明されている。
それらの特徴は、食事の選択、摂食障害、遺伝子組み換え食品に対する態度、地元産やエコロジカルな食品の消費に関する嗜好などと関連する
・経験に対する開放性と同意性は健康的な食事パターンやよりバランスのとれた食事の選択と関連する一方、外向性と神経質はあまり健康的でない食事パターンと関連していた。
・良心性と経験に対する開放性は果物や野菜の1日摂取量と正の相関があった。また、いわゆる地中海食の摂取とも正の相関があった。良心性は豚肉などの肉類の消費量の少なさとも正の相関があった。
・この研究では、健康な患者でも同意性スコアが高い人ほど規則正しい食事に関する推奨を遵守する傾向が強かった。他の研究では、同意性の高さは肉食の頻度と逆相関があることが証明されている。
・神経質は強い否定的感情や自己憐憫を経験しやすい素因と定義され、高い不安、罪悪感の増大、いらいら、臆病、ストレスに対処できないなどの症状として現れる。
神経質は自制心を妨げ、否定的感情やストレスに対処するために高カロリー、脂肪分と糖分の多い製品の消費を促進する傾向がある。他の研究では、神経質スコアが高い女性ほど癌発症リスクが高く、悪性腫瘍の危険因子と正の相関があった。
・神経質スコアが高い女性は果物や野菜の摂取量が少なく、運動習慣が少なく、タバコを吸い、BMIが高かった。同様の相関は健常者群においても認められ、神経質スコアが高いほど新鮮な果物や野菜、穀類製品の摂取頻度が低いことが示された。
・神経質や情緒不安定な人は食事の規則性が低いという研究結果もある。また神経質は、インターロイキン6やC反応性蛋白質といった慢性炎症バイオマーカーのレベル上昇と関連していることがわかった。
・経験に対する開放性スコアが高い人は創造的で柔軟性があり、魅力的で進歩的である。
経験に対する開放性は多様性や知的好奇心の高さとして現れることが多い。そのような人は、多様で型にはまらない食生活を送り、幅広い商品を食べる傾向がある。この研究では、経験への開放性が高い健康なグループの食習慣はフードピラミッドにより準拠し(乳製品と植物油脂がピラミッドの底辺)、適切な栄養摂取に関心が高いことが示唆された。
・がん患者に関しては、経験に対する開放性のスコアが高い者ほど乳製品の摂取頻度が高いと報告された。タンパク質、カルシウム、ビタミンD、プロバイオティクス、ヨードなどの貴重な栄養素の供給源である低脂肪牛乳、ヨーグルト、チーズなどの様々な乳製品を食事に取り入れることはある種のがん発症リスクを低下させる可能性がある。他の研究では、ビタミンDとカルシウム摂取を増やすと、主にBRCA1遺伝子の保因者において乳がん発症リスクが低下することが報告されている。また、乳製品に含まれる必須アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン)の摂取量が多いほど、乳がん患者の生存期間が長くなることも証明されている。
・乳がんリスクマーカーとして知られるマンモグラフィによる乳房密度と、穀類、野菜、果物、植物性油脂の摂取が少ないことは反比例していた。
・健康なグループでは、同意性が高い人ほど1日の食事量が多かった。神経質スコアが高い人は野菜や果物、シリアル摂取量が少なかった。経験に対する開放性が高い人ほど、乳製品と植物性脂肪摂取量が多く、身体活動も活発だった。がん患者群では、経験に対する開放性が高い人ほど乳製品を多く摂取し、身体活動に従事していた。
・近年、がん予防や治療中、治療後における身体活動の意義に関する報告が増えている。身体活動は、食道がんだけでなく大腸がん、乳がん、腎がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、胃がんの発症リスクを低下させることが証明されている。悪性腫瘍のリスク低下と身体活動量の増加の関係には正の相関がある。
・定期的な身体活動は、乳がんや大腸がん患者の生存率を改善する可能性がある。免疫系機能の向上、内分泌系機能の調節(ホルモン依存性腫瘍の場合に特に重要)および脂肪組織の減少による体組成の修正は、がん患者に対する身体活動の最も重要な効果である。
がん患者には少なくとも週5回、最低30分の中強度トレーニングを行うことが勧められている。
・経験に対する開放性スコアが高い女性(乳がんや卵巣がんを発症する家族性および/または遺伝的リスクが高い女性やがん患者)は、他の性格特性を持つ同世代の女性と比較して、身体活動を行う傾向が高かった。経験に対する開放性が優勢な人は、新しい人生経験を探求し、肯定的評価、認知的好奇心、高い新規性耐性を示す可能性が高い。また、経験に対する開放性が高い人は健康増進や予防に向けた姿勢を示し、新しい情報を求める生来の欲求からガイドラインを遵守する傾向がある。
・BRCA1およびBRCA2遺伝子変異の保因者で神経質スコアが高い場合、気分の低下、不安、睡眠障害の領域でQoLが低下した。一方で、良心性、経験に対する開放性、外向性、同意性のスコアが高いことはQoLの改善と関連していた。
….私も多くのクライアント様の治療やパーソナルを担当させていただいてきて神経質な方に偏食傾向がみられることは明らかだったので、クライアント様ごとの個別化された栄養戦略アプローチへと発展していくためにも適切な栄養摂取に関する情報を適宜ご提供しています。
がんでお悩みの方も、適切な栄養コントロールと身体活動は合併症や再発リスクを低下させる可能性があります。
より具体的な栄養戦略をお探しの方は、当院の栄養マニュアルのご利用を是非ご検討ください。Lineまたはメールによるカウンセリングに基づき、皆様の症状や体質に合わせて摂取カロリー数の計算や、食事デザイン、サプリメントの選択、排除すべき食材などを最新データを元にパッケージでデザインし、ご提案いたします。
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