プライオメトリックス、ミックスストレングス&コンディショニング、HIITバスケットボールプログラム、反復スプリントトレーニングを含む集学的介入は、ユースバスケットボール選手のジャンプ能力、多方向のスピード、また持久力にプラスの変化を誘発することが可能と結論づけるデータ。
エビデンスに基づく、よりスマートなトレーニングをプログラムする上で参考になるだろう。
・このメタ分析およびメタ回帰を伴う系統的レビューは、ユースバスケットボール選手のパフォーマンスに対する集学的な神経筋および持久力介入の効果を、バスケットボール選手の年齢、レベル、性別に関して、また実施した介入の種類に従って収集、分析することを目的としたもの。利用可能なデータのメタ回帰分析を通じて、上記のパラメータを考慮したNPVとNPHの変化に関する予測モデルの確立を試みている。
ユースバスケットボール選手を対象に、上記のテーマに焦点を当てたメタ分析およびメタ回帰を含む初の系統的レビュー。
主な結果
・プライオメトリックス、ミックスストレングス&コンディショニング、HIITバスケットボールプログラム、反復スプリントトレーニングを含む集学的介入は、ジャンプ(NPV)、多方向スピードとアジリティ(NPH)、持久力(E)に全体的にプラスの効果があることを示した。
しかし、NPHおよびEの結果には中程度から高いばらつきが認められた。
Eに見られる中程度の異質性を考慮すると、決定的なエビデンスを得るためにより多くの研究が必要。
・年齢別サブグループ分析では、垂直跳びは、U-16と U-18でのみ有意な増加が見られた。
これはメタ回帰分析でも支持されており、U-16のモデルは垂直跳び能力の変化を予測することができた。U-18でさらなる研究が必要とはいえ、このモデルで垂直跳び能力の変化の50%を有意に説明することができる。
NPHの結果では、U-12群でのみ多方向の速度と敏捷性の有意な向上が見られた。
・年齢と成熟には、特定能力の発達を最大化する神経およびホルモンの変化に関連した成長と発達の加速期が含まれる。特に、青少年のバスケットボール選手は、異なる成熟段階における個人の発達を通して、パフォーマンスの変化を促す体格的・生理的パラメータの変化を経験する。成熟期の変化は、協調運動制御の進化と同時に起こることを考慮することが重要。
筋力およびパワーの発達ピークは、ピーク高速度(PHV)の12~18ヶ月後、つまり16歳前後から成人になるまでに現れると考えられている。
トップバスケットボールアカデミーのユースプレーヤーにおける変化のピークがU-16であることを指摘する研究もあり、今回の結果は過去の先行研究と一致しており、垂直跳びの増加は、U-16とU-18の年齢層においてのみ優位であった。この成熟段階での筋力とパワー開発の重要性を強調している。
・複数の介入(特にプライオメトリックトレーニング)は、アスリートの幼年期から晩年期までのさまざまな段階においてスピードを向上させる方法として確立されている。
幼少期における神経機能、運動採用、協調性に起因の変化と高い神経可塑性は、U-12グループにおいて顕著な変化が見られたことを説明する。
PHV中またはPHV後に高いスプリント能力と俊敏性能力が見られるのは、成熟に関連した変化によるものと考えられる。
・性別も結果に影響を与えた。垂直跳び、多方向のスピードと敏捷性は、女性も男性も同じように向上した。一般に、男女のアスリートには性差や体格差はあるものの、パフォーマンスを向上させるために同様のトレーニング負荷が適用される。
女子アスリートは男子アスリートと比較して、I型筋線維の割合が低く、II型筋線維の断面積も低いことを示す証拠がある。この生理的・解剖学的な違いは、男性の方が力の発生と収縮速度が大きく、その結果パワー出力が大きくなることと関連する。
・男性ユースアスリートはより多くの運動ユニットをリクルートすることが可能。これは女性のユースアスリートよりも、PHV後により多くのパーワーを生み出し、伸張-収縮サイクルをうまく利用する能力に貢献する。このため、性別による個人トレーニングの可能性を考慮する必要がある。性別を考慮してユースの適応を比較した研究では、女性ユースアスリートでは、男性と比較して、レジスタンストレーニングによる改善が有意に大きいことが示されている。
・アマチュアとエリートのバスケットボール選手の両方が、複数の介入によってジャンプ能力と多方向のスピードと敏捷性を同じように改善したが、アマチュアにおける多方向のスピードと敏捷性サブグループでは効果が中程度だった。
・他のシステマティックレビューでは、複数回の介入後のジャンプパフォーマンス、スプリント、方向転換において一致しない結果が得られている。
エリートアスリートにおいてプライオメトリックトレーニングの垂直跳びに対する効果が大きいことを発見した研究がある一方、アマチュアおよびノンエリートアスリートがエリートアスリートに比べてより効果的に垂直跳びを向上させることを示す研究もある。これは、おそらく介入未経験のアスリートの方が高い反応を示したためと考えられている。
・多方向スピードを調査した他の研究では、エリートアスリートが30m直線スプリントと方向転換トレーニングに大きな反応を示した。この結果は、アマチュア選手と比較してエリート選手の方が筋力レベルが高く、速筋繊維が多いためであるとしている。
一方で、今回のメタ分析で最も高い正の効果が見られたのは、アマチュアの多方向スピードとアジリティのサブグループだった。
・介入の種類については、プライオメトリックスとストレングス&コンディショニングの混合介入は垂直跳びを改善し、プライオメトリックトレーニングのみが多方向の速度と敏捷性に有意な変化を誘発することが示された。
一方で、レジスタンストレーニングとプライオメトリックトレーニングの両方を組み合わせることで、ユースのジャンプ能力をさらに向上させることができる可能性もある。
プライオメトリックトレーニングは、全筋繊維の剛性、平均断面積、ピークパワーを最大化することで、力の発生率、筋パワー、筋収縮速度を向上させる。
レジスタンストレーニングは、筋肥大、ミオシン重鎖IIa(MHC IIa)の増加、運動単位の頻度や活性化などの神経適応の変化を通じて、同様の適応を誘導することが可能。
スピードの向上について、思春期や小児においてはプライオメトリックトレーニングと比較して、レジスタンストレーニングを適用した方がより高い向上が得られることを発見した研究もある。
・他の研究結果も、多方向スプリントとアジリティを向上させるためにはプライオメトリックトレーニングが有効であることを示唆したメタアナリシスの知見を支持している。
プライオメトリックトレーニングは垂直跳びと多方向のスピードの両方にプラスの効果があることは明らかであるが、怪我のリスクを避けるためにテクニックとトレーニング量に関する特定の配慮が必要。