本日は筋損傷に関する非常に興味深いデータをまとめてみたい。
イタリア・セリエA プロサッカー選手におけるCOVID-19の流行前と流行中の傷害の発生率を評価した研究。
イタリアセリエAの4期競技シーズン(2016-17、2017-18、2018-19のパンデミック前と2020ー21パンデミック後)中のプロサッカー選手の筋損傷の発生率を評価。
結果
ポストパンデミックシーズンとそれ以前のシーズンとの間で、筋損傷に有意差が認められた。
選手の陽性期間の中央値は15日。
選手の陽性期間が長い(PLP)グループは、選手の陽性期間が短い(PSP)グループと比較して、有意に多くの筋損傷を示した。
また、チーム全体の陽性日数はチーム全体の筋損傷の数と有意に関連していた。
COVID-19ロックダウン後の競技シーズンは、パンデミック前の競技シーズンと比較してイタリアセリエAのサッカー選手における筋損傷の発生率が高いことを示している。
・分析したパンデミック前後の試合はいずれも定期的に同じ時間軸で行われ、1チームあたりの選手数や出場試合数に大きな差はない。データ解析の結果、サッカーセリエAの2020-21シーズン(ポストパンデミックロックダウンシーズン)において筋損傷の発生率が上昇し、チームの総陽性日数とチームの総負傷数が有意に関連することが示唆された。
実際、パンデミック・ロックダウン前のセリエAシーズンと比較して、ロックダウン後では筋損傷に有意差が認められた。
・ロングポジティビティの影響を受けた選手は、ショートポジティビティの選手よりも、非接触型筋損傷を起こす傾向があった。この結果は、英国プレミアリーグで観察されたものと一致している。
・競技復帰までの期間が長い選手は、より筋損傷リスクにさらされ、場合によっては損傷を繰り返す傾向が見られた。興味深いことに、全チームに所属する感染選手の全体陽性日数で表される競技復帰前期間は、受傷回数と正の相関を示した。
・現在、SARS-CoV-2ウイルスが筋組織に及ぼす有害な形態的・機能的変化についてはほとんど調べられていないが、ACE2受容体に現在注目が集まっている。
骨格筋にはACE2が多く発現しており、COVID-19で見られる筋骨格系への直接的なダメージは筋組織におけるACE2の発現と本質的に関連している可能性が考えられる。
関節損傷に変化が見られなかったのは、ウイルスの主な標的であるACE 2レセプターが存在しないことによるものかもしれない。
・ウイルス感染による直接的な筋損傷に加えて、筋組織は酸素供給と心血管系障害関連の他の要因によって悪影響を受ける可能性もある。
実際に、COVID-19に感染した患者に見られる好中球の不適切な活性化は、血栓性微細血管障害や毛細血管漏出症候群の潜在的な説明の1つとなり得る。
活性酸素種(ROS)の増加は、赤血球(RBC)のような多くの循環系細胞にダメージを与える可能性や、酸素や二酸化炭素の拡散能力、毛細血管内を移動する際の変形などの機能障害を増大させることで血小板減少を助長し、その結果としてガス交換に障害をもたらす可能性も考えられる。これらの条件が代謝組織である骨格筋に関与していること可能性もありえる。
・他の組織(心臓、肺、神経など)で既に観察されているようにCOVID-19と筋肉組織の損傷との因果関係を立証できないが、SARS-CoV-2の筋肉組織に対する生化学的および形態学的影響の可能性を調査する今後の研究と、それに関連した具体的な管理が強く求められる。