加齢に伴う身体活動の低下はサルコペニア発症に影響を及ぼす。
また、現代の座りっぱなしの生活習慣もサルコペニアの主な原因の一つ。
一方で、より高レベルの身体活動はサルコペニアの進行を抑制する可能性がある。
女性は生涯を通じて、男性と比較すると筋肉量、筋力、身体機能が生理学的に低い。
レジスタンストレーニング(RET)は、骨格筋の形態・機能を促進し、高齢者の筋力、筋量、機能的パフォーマンスを改善することから、RETはサルコペニア管理のための重要な方法の一つと言える。
リンクの研究は、サルコペニアの高齢女性のレジスタンストレーニングに対する筋肉の適応反応、身体能力、炎症性サイトカインの血清レベルにおける魚油の補給効果を調査することを目的としたもの。
65歳以上のサルコペニア女性34名を運動と魚油(EFO)、運動とプラセボ(EP)群に分け、両グループとも14週間にわたってレジスタンス運動プログラムを実施。
すべての参加者は、4g/日のサプリメントを摂取。
EPグループはヒマワリ油のカプセルを、EFOグループは魚油のカプセルを摂取。
両群とも介入後、大腿四頭筋の断面積(CSA)と筋力に改善が見られた。
筋力については、EPと比較してEFOの変化が有意に大きかった。
魚油の補給と筋力トレーニングの併用は、トレーニングによる同化刺激に対する神経筋反応を増強し、サルコペニア高齢女性の筋力と身体能力を向上させた。
サルコペニア高齢者の筋力と筋肉量を増加させるためにはレジスタンストレーニングが重要な要素であることに変わりはないが、オメガ3脂肪酸の補給はサルコペニアにおける筋力低下とその合併症に対抗するための安全でシンプルかつ低コストな介入を提供する可能性がある、と結論。
・主な結果は、両群の参加者が身体トレーニング後に筋力とCSAの増加を示したが、魚油を補給した群の方がより高い増加を示した。
・筋力の向上には複数のメカニズムが関与しており、初期の向上はトレーニングの最初の数週間に起こる神経調節によるもので、その後筋肉の断面積が増加することが知られている。
魚油補給の筋肉への効果のメカニズムはまだ完全には解明されていないが、抗炎症作用、インスリン抵抗性の減少、mTOR経路の活性化の増加が可能性として指摘されている。
・高齢者における魚油の補給による抗炎症作用はすでに十分に説明されている。
・以前の研究では、オメガ3サプリメントに反応してインスリン抵抗性の減少が観察されることが示唆されている。インスリンシグナルはmTORの活性化に重要な役割を持つため、オメガ3PUFAの補給が高齢者の代謝抵抗性を緩和し、タンパク質合成を刺激する可能性がある。
・現在までのところ魚油の筋肉量に対する作用は、mTORの活性化が最も可能性の高い説明である。
・レジスタンストレーニングの結果、両群とも下肢筋力(ピークトルク)とハンドグリップ筋力の有意な増加を示した。しかし、プラセボ群と比較して魚油を補給した群ではピークトルクの増加がより顕著であった。
・ベースライン時の6分間歩行試験で評価される身体能力に2群間の差はなかったが、介入後サプリメント投与群は歩行距離の有意な増加を示した。この結果は、他の研究結果と一致する。
・高齢者のレジスタンストレーニング研究では12~16週間のトレーニングが含まれるケースが多いが、高齢者の筋肥大を誘導するには18回のRETセッション、合計9週間で十分である。