先月発表の研究で、投球時の肘関節安定性に寄与する筋肉が明らかになった。
本日ご紹介するのは、ピッチングモーション時の立位体幹伸展角と肘関節傷害の関係を調査した研究。
安定化筋群のデータも含め、野球ピッチャーにおける肘内側傷害のリスク要因とメカニズムがさらに明確になってきている。
選手生命に関わる傷害やトミージョンに無縁のまま、多くの野球選手が活躍することを願いたい。
リンクの研究は、立位体幹伸展角と肘関節内側部損傷との関係を検討することを目的としたもの。
少年野球チームに所属する男子野球投手(10~12歳)90名を対象に、整形外科医が超音波検査と身体診察所見を用いて投球肘損傷を評価。
体幹伸展の測定は光学式3次元動作解析装置を使用し体幹の全体、上部、下部の角度を解析。
結果
立位体幹伸展時の体幹伸展角は、超音波検査で肘内側損傷が陽性だった参加者で有意に小さかった。
(陽性:71.4°±10.3°、陰性:75.7°±9.2°、t = 2.05, p < 0.05 )。
理学検査で肘関節内側部損傷が陽性であった被験者の体幹上部伸展角は、体幹下部伸展角よりも有意に小さかった(上部:33.0°±6.9°、下部:41.2°±8.2°、t = -2.42, p < 0.05 )。
肘内側部痛のある被験者は、体幹の胸椎伸展位が低下していた。
結論
立位体幹伸展時の体幹伸展角は肘関節内側部損傷と関連する。
胸椎伸展ROMが肘へのストレスに寄与していることを示唆している。
胸椎伸展ROMを改善することで、肘関節損傷の発生を予防できる可能性がある。