乳癌はホルモン受容体陽性(エストロゲンまたはプロゲステロン受容体)、ヒト上皮成長因子受容体2陽性(HER2+)、およびこれらの受容体を欠くトリプルネガティブ乳癌(TNBC)の3タイプに分類できる。
卵巣癌は癌関連死亡原因の第5位を占める。この高死亡率は、卵巣癌が進行した段階で診断されるケースが多いことによるもので、多くの場合診断の時点で癌は卵巣を超えて広がっている。初期症状は通常曖昧で”深刻でない”と簡単に誤診される可能性があり、診断と治療の遅れにつながってい。卵巣癌の5年生存率は特に疾患の進行期において低く、限局性卵巣癌の5年相対生存率は約93%であるに対して、遠隔転移(ステージ4)卵巣癌では31%に低下する。
最近の論文では、プロバイオティクスが免疫システムにどのように役立つか議論が続いており、これは癌患者にとって非常重要。プロバイオティクスは体の免疫応答を高め、炎症を軽減し、腫瘍細胞アポトーシスを誘導することで癌細胞の成長を阻害する可能性がある。
具体的には、in vitro研究で特定のプロバイオティクス株が乳癌細胞の成長を阻害できることが示されている。例えばラクトバチルス・アシドフィルスとビフィドバクテリウム・ラクティスは、乳癌細胞株アポトーシスを誘導する。
また複数の研究で、ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株の使用がヒト乳癌発生率を低下させる可能性があることや、ラクトバチルス・ガセリが子宮頸癌細胞の生存率を低下させることが報告されている。
プロバイオティクスは、癌との闘いにおいて重要な免疫応答と炎症を調節する可能性がある。
リンクの研究は、ストレプトコッカス・サーモフィラス、ラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリクス、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・プランタルムなど複数の株が、MDA-MB-231(トリプルネガティブ乳癌)とOVCAR-3(卵巣腺癌)の2つの女性癌細胞株に与える影響を検証したもの。
ウェスタンブロッティング法とスクラッチアッセイ法を用いて、細胞周期調節(pP53、Cyclin D1、pERK1)、細胞生存(AKT)、細胞遊走(RhoA)に関与するタンパク質を解析。
【結論】
上記のプロバイオティクス株が癌細胞の増殖活性に対抗する可能性が示唆され、癌治療における補助療法としての可能性を強調した。
観察された細胞周期の進行と遊走に関与する主要タンパク質の減少は、これらのプロバイオティクスの抗腫瘍効果を裏付けている。
Probiotics as Anti-Tumor Agents: Insights from Female Tumor Cell Culture Studies
・プロバイオティクスは、十分な量を摂取した際に健康上の利益をもたらす生きた微生物で、「善玉菌」または「フレンドリー」細菌としばしば呼ばれ、ヨーグルト、ザワークラウト、チーズなどさまざまな食品に含まれている。プロバイオティクスは腸の健康を増進する能力で知られており、下痢、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患など消化器系問題の予防と治療にも役立つ。また、免疫システムを強化して感染症や病気と戦う能力を高める。最近の研究ではプロバイオティクスが腸脳相関に影響を与えることで精神的健康にプラスの影響を与える可能性があり、気分を改善し、不安や抑うつ症状を軽減する可能性があることが示されている。
・癌の治療と予防の分野で、プロバイオティクスは大きな有望性を示している。化学療法誘発性下痢など癌治療関連症状の重症度と頻度を軽減することで、癌患者の生活の質を向上させることがわかっている。
・プロバイオティクスは免疫細胞を活性化し、炎症を抑制することで癌と戦う上で不可欠な体の免疫応答を強化する。ラクトバチルス・アシドフィルスやビフィドバクテリウム・ラクティスなどの特定のプロバイオティクス株は、in vitroで癌細胞の成長を阻害し、アポトーシスを誘導する。
・プロバイオティクスはプロ発癌物質を発癌物質に変換する病原体に結合する可能性があり、それによって癌発症リスクを低下させる。この利点は、癌の治療と予防における補完的なアプローチとしてのプロバイオティクスの可能性を強調している。
・本研究の結果は、特定のプロバイオティクス株がトリプルネガティブ乳癌細胞株MDA-MB-231および卵巣腺癌細胞株OVCAR-3の増殖と遊走を著しく阻害できるという説得力のある証拠を提供している。BrdUアッセイの結果ではプロバイオティクスの抗増殖活性が確認され、E株などの株は細胞増殖の著しい減少を示した。これは、特定のプロバイオティクスが癌細胞の細胞周期を効果的に妨害できることを示唆している。D + Eの組み合わせで処理されたOVCAR-3細胞では活性型p53の増加が観察され、p53活性の潜在的な回復と、それによる細胞周期の停止とアポトーシスにつながった。
・プロバイオティクスは細胞周期調節とアポトーシスに関与する他の主要タンパク質にも影響を与えることが明らかになった。両方の細胞株におけるサイクリンD1レベルの低下は、G1/Sチェックポイントでの細胞周期の停止を示唆した。これはサイクリンD1が様々な癌で過剰発現しており、予後不良および治療抵抗性と関連し、そのレベルが腫瘍の大きさと相関していることが知られているため重要。
活性型AKTの減少はプロバイオティクスがアポトーシス抵抗性を阻止し、癌細胞の死滅を促進できるという仮説を支持している。
リン酸化ERKレベルの低下は、細胞生存と増殖を促進するERK1/2経路の既知の役割と一致している。プロバイオティクスはこの経路を阻害することで癌細胞の生存と増殖を減少させ、治療に対する感受性を高める可能性がある。
・スクラッチアッセイの結果は、D + Eおよびすべてのプロバイオティクスの組み合わせが、両癌細胞株において細胞遊走を効果的に減少させたことを示した。この抗遊走効果は、細胞遊走と転移に関与するタンパク質であるRhoAレベルの低下によってさらに確認された。これらの知見は、プロバイオティクスが癌細胞の増殖を阻害するだけでなく、転移能も低下させることを示唆している。重要なことは、プロバイオティクスは非癌細胞に対して有害な影響を示さず、癌細胞に対するある程度の特異性を示すことである。
観察対象になったプロバイオティクス株の中には市販でゲットできるものもあるので、癌治療中の方は是非試していてはいかがでしょうか?