今回のメモでご紹介するデータ、対象はサッカー選手ですが様々な種目のアスリート、またスポーツ選手以外の筋骨格系傷害でお悩みの方にも一読していただきたい内容です。
スポーツ障害受傷後の身体機能の回復に大いに役立つ可能性があるMIに関するデータをまとめてみます。
例えば、サッカーの試合ではスプリント、ランニング、カッティングテクニックを含む高強度の断続的運動と、ジョギングやウォーキングなど低強度の運動が様々な時間と強度で行われ、運動と低~中強度の回復が交互に繰り返される。
プロ・アマ共に高い身体パフォーマンスが要求され、そのことが必然的にスポーツ傷害(足関節捻挫など)の受傷数の増加につながっている。
足関節捻挫は下肢における筋骨格系傷害の中で最も多く、サッカーでは足関節捻挫は全損傷の10%~36%を占める。
足関節外側靭帯損傷(LAS)は、外側靭帯複合体の外傷の重症度によってグレードⅠ、Ⅱ、Ⅲに分類される(グレードⅠ:前距腓靭帯(ATFL)の部分断裂、グレードⅡ:ATFLの完全断裂と踵腓靭帯(CFL)の部分断裂、グレードⅢ:後距腓靭帯(PTFL)の損傷を伴うATFLとCFLの完全断裂)。
足関節捻挫のようなスポーツ傷害は自信喪失、抑うつ、不安などを引き起こし、プレー復帰期のアスリートのパフォーマンスに影響を与えるトラウマ的体験となりうる。
またLASは、様々な生理学的障害を引き起こすため、治療家が正確なプレー復帰期間を予測することは難しい。また、不十分なリハビリテーションや早すぎるプレー復帰は長期的な合併症を引き起こす可能性もある。
アスリートがスポーツ活動に復帰できる時期を決めるには様々な評価基準が適用される。例えば、関節機能制限が完全に回復していること、心肺機能が受傷前と同等かそれ以上であること、選手が心理的にプレー復帰の準備ができていることなど。
運動イメージ(MI)は身体の動きを伴わない実際の動作の心的表現と定義され、スポーツパフォーマンスの最適化を目的として広く使用されている。
MIの使用能力はMIのタイプ(内的/外的)によって異なる。内的視覚イメージは、アスリートが動作を行っているように感じる一人称視点と定義できる。外的視覚イメージは、アスリートが観客としてパフォーマンスのような動作を見ている三人称の視点と定義される。選手はMIを応用することで、自己効力感、運動学習、スポーツパフォーマンスを向上させることができる。
MIの有効性は、身体活動(サッカーなど)中に誘発される自律神経系(ANS)反応や、Vividness of Movement Imagery Questionnaire(VIMQ-2)などの有効な心理測定ツールを用いて評価することができる。
MIは補完的治療介入としてスポーツ傷害治療に取り入れられるようになってきているが、プレー復帰期におけるその有効性はまだ十分に検討されていない。
また、スポーツパフォーマンスに対するMIの有益な効果は十分に立証されているが、LAS後の競技復帰基準を満たす上での役割については限られた研究しかない。
リハビリ段階におけるMIのような心理学的戦略は、VO2maxや乳酸値のような体力パラメーターを向上させ、スポーツ活動の再開に必要な時間を短縮する可能性がある。
リンクの研究は、グレードⅡの足関節捻挫から回復したプロサッカー選手におけるプレー復帰期のVO2maxと乳酸値の改善におけるMIの補完的役割を評価したもの。
58名のプロサッカー選手を無作為にMI群(n=29)、プラセボ群(n=29)に分け、MI群にはMI指導、プラセボ群にはリラクゼーション指導のみが行われた。
【結果】
一元配置分散分析の結果、両群とも介入後最初の4週間で統計的有意な結果が得られた。
t検定ではVO2maxと乳酸値において両群間に統計学的に有意な差が認められた。
【結論】
スポーツ復帰期のパフォーマンス向上を望むスポーツ選手にとってMIが有効な補完的役割を果たすことを証明した。
MI介入を用いることでプロサッカー選手のプレー復帰を早め、同時にスポーツパフォーマンスを向上させることができる。
・MI介入はバランストレーニングプロトコルと並ぶ補完的方法として、特にVO2maxと乳酸値の対して有意な治療効果を示した。4週間の介入前後で2群(MI介入群とプラセボ群)の間に統計学的有意差が認められた。MIはスポーツ傷害の管理およびリハビリテーション、さらにはスポーツパフォーマンスの最適化において効果的な補完的治療法であることが証明された。
・乳酸値は介入前と介入後(4週間)のレベルを2群(第1群:MI介入群、第2群:プラセボ群)で比較したところ、被験者内で統計的有意差が認められた。MI介入群は2番目のプラセボ群と比較して乳酸値の顕著な減少を示した。この差はブルース・プロトコル(BP)終了後の末梢血サンプルにおける乳酸蓄積において観察された。
・ワーキングメモリーパフォーマンスが血中乳酸値の影響を受けるかどうかを調べたある研究では、血中乳酸値が高いとワーキングメモリが悪化することが示されている。この研究では、MI介入群はプラセボ群と比較して血中乳酸の蓄積に統計学的有意な減少がみられ、このことはアスリートのMI能力とワーキングメモリ能力を包含する運動課題の実行力が関連している可能性が示している。
・研究では、プロサッカー選手全員が4週間の介入後(6回のMIセッション)に、外的視覚イメージ(EVI)、内的視覚イメージ(IVI)、運動学的視覚イメージ(KVI)の3つの視点すべてにおいてMI能力の向上を示した。
・スポーツ経験が豊富なアスリートではIVI視点が最も好まれ、効果的であると結論づけられた。
・・・非アスリートの患者さんにMI介入を実勢していただいた結果どうだったか?
またKメモでご紹介させてもらいます。
気になった方は是非実践してみてください。