米国では妊娠前に肥満を患っている女性の数は、米国人口のほぼ3分の1(!)にまで増加しているという…。日本では慢性的な運動不足と座りがちなライフスタイルの影響で、見た目は普通でもBMIは要改善状態の女性は少なくない。したがって、妊娠前の肥満が妊娠と乳児の健康に及ぼす影響を理解することは非常に重要と考えられる。
妊婦の腸内細菌叢は、妊婦自身の健康と乳児の健康転帰指標として重要視されている。
腸内細菌叢は炭水化物やその他の食事成分を消化し、ビタミン、ペプチド、短鎖脂肪酸を産生する役割を担っており、これらは胎児の健全な発育に不可欠な因子である。
また、腸内細菌叢は妊娠中女性の代謝と免疫系の調整に重要な役割を果たしている。
乳児の腸内マイクロバイオームは出産時に細菌コロニー形成を受けるが、これは母親のマイクロバイオームによって形成される。母親から乳児への微生物の直接的な垂直伝播は、乳児の健康を決定する重要因子である。
近年、母親の妊娠前BMIと栄養状態が子孫のエピジェネティック・プロファイルに影響を与えるという仮説を支持する証拠が増えている。エピジェネティクスは、メチル化やアセチル化などのDNAヒストン修飾による遺伝子発現および活性の変化を特徴づける。
母親の栄養曝露は乳児のエピジェネティック・プロファイルと将来の表現型の変化を確立する上で重要な役割を果たし、その変化は疾病リスクにも影響を及ぼす。
過去の研究では、母親の妊娠前BMIと新生児の血液DNAのメチル化との間に多くの相関関係があることが同定されている。
この関連性の背後にあるメカニズムはよくわかっていないが、腸内細菌叢の変化を測定することで、妊娠前BMIと新生児の発育との間の複雑な相互作用をさらに解明できる可能性がある。
リンクの観察研究は、妊娠前BMIと関連する母親の特性を評価し、さらに母親の特性と関連する微生物の多様性を評価することを目的としたもの。
ミシガン州内の複数の産科クリニックから、妊娠第3期の妊婦84人を募集し、自己申告による妊娠前BMIを含む登録アンケートを実施。便サンプルを採取し、糞便微生物群集組成を評価。
【結果】
妊娠前の肥満(BMI30以上)は、妊娠前の抗生物質の使用、喫煙経験、低学歴、未婚と関連していた。
妊婦の腸内細菌叢α多様性は、妊娠前のBMIカテゴリー(正常、過体重、肥満)により有意に異なっていた。
β多様性は、各BMIカテゴリー内の妊婦の腸内細菌叢で、教育レベル別、婚姻状況別に特異的だった。
多変量モデルでは、妊娠前BMI、母親の学歴、配偶者の有無、母親の年齢が、妊娠中の腸内細菌叢の微生物多様性と関連していることが明らかになった。
プレボテラ(Prevotella)を含む特定の細菌群はBMIと関連していたが、ブラウティア(Blautia)とラクノスピラ科(Lachnospiraceae)は他の様々な出生前特性と関連していた。
Maternal Body Mass Index Associates with Prenatal Characteristics and Fecal Microbial Communities
・妊娠前BMIが出生前の様々な特性および妊娠第3期の糞便微生物多様性と関連していることを立証した。
・肥満女性は喫煙経験、未婚、大学を卒業していない、抗生物質を使用したことがある傾向が有意に高かった。
・肥満女性の細菌叢はアルファ多様性が有意に低く、過体重女性はマイクロバイオーム中の細菌分類群が有意に異なっていた。β多様性によって測定された群集構造の違いの主な要因はプレボテラの相対的存在量で、過体重女性はその割合が有意に低かった。
抗生物質の使用は、ヒトと動物の両試験において肥満の有病率と関連することがわかっていたが、この研究でも体重過多または肥満女性は、妊娠前に抗生物質を使用する可能性が有意に高いことがわかった。このことは、抗生物質の使用が腸内細菌叢を変化させ、肥満を防ぐことが知られている細菌の数を減少させる可能性があることを示している。
・肥満女性は喫煙経験がある可能性が有意に高いことがわかった。
・肥満女性は未婚である可能性が高かった。米国の先行研究では、既婚女性は肥満である可能性が21%低かった。背後にあるメカニズムや、喫煙の有無や結婚の有無との関係を理解するためにはさらに研究を進める必要がある。
・全体的なエビデンスとして、教育水準がBMIと逆相関にあることが指摘されている。
ある研究では、教育を受ける年数が1年増えるごとに肥満リスクが2~9%減少するという。
・全体として、肥満と特定の出生前特性との関係は複雑であり、母親の妊娠前BMIは妊娠第3期の妊婦の微生物叢のαおよびβ多様性の両方と有意に関連していた。BMIの違いによる糞便微生物群集の豊かさ(Chao)には差がなかったが、肥満女性では均等性(”逆シンプソン”、優勢な分類群により重点を置く)と多様性(”シャノン”、希少な分類群に重点を置く)のレベルが異なっていた。
・他の研究では、マイクロバイオームの多様性レベルの差は、食物繊維、肉類、脂肪摂取などの食事成分によって説明できる可能性が指摘されている。高脂肪の赤身肉を大量に摂取する人は、アルファ多様性が低く、BMI値が最も高いことが示されている。
・母親の年齢もアルファ多様性解析において、均等性(逆シンプソン、優勢な分類群)および多様性レベル(シャノン、希少な分類群)と有意に相関した変数である。母体年齢と腸内微生物の多様性との関係はよく分かっていないが、若年成人の腸内細菌叢ではα多様性が高いことを示唆する研究もある。この研究におけるα多様性の結果は、母体年齢の上昇がより大きな均等性(逆シンプソン)とより低い多様性レベル(シャノン)に関連するという考えを支持している。
・肥満女性では、微生物叢組成(Sorensen index)および構造(Bray-Curtis)も健常女性および過体重女性と比較して有意に異なっていた。微生物分類群の違いを調査したところ、妊娠前の母親のBMIカテゴリーで細菌、特にプレボテラの相対的存在量に差があったのは過体重の女性だけだった。これまでのエビデンスでは、プレボテラ菌の多さは食物繊維の多量摂取、喫煙、およびアルファ多様性の低さと関連していた。
・喫煙、喘息、配偶者の有無はいくつかの細菌分類群の存在量と関連していた。喫煙および喘息はBlautiaの相対的存在量が高かった。Blautiaは人種に関係なく腸内に最も多く存在する属のひとつで、糖尿病成人や他の疾患を持つ人ではあまり目立たない。さらに、高タンパク・低炭水化物食や動物性食品中心の食事はBlautia属の数を減少させる可能性がある。
・食事、運動レベル、病歴の違いは、ヒトの腸内細菌叢とエピジェネティック・プロファイルの形成に重要な役割を果たす。大量の赤身肉、加工食品、アルコールを含む 西洋食を好む妊婦は妊娠前のBMI高値や妊娠中の体重増加過多と関連している。また、妊娠中の母親の高脂肪食は腸内細菌異常を引き起こし、エピジェネティックな老化に関与する炎症性マーカーへの曝露を増加させることが示されている。
・最近の臨床試験では、妊婦にプロバイオティクスのサプリメントを摂取させると、母親とその乳児の双方において肥満関連遺伝子のDNAメチル化レベルが有意に低下することがわかっている。
妊娠が確認されてからアレコレ生活習慣を変える方は多いと思うが、実は妊娠前の生活習慣こそが新生児の健康転帰に重要であることを示す興味深いデータでした。
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