胸部痛のご相談で先日来院された女性から連絡があり、ペインレベルがだいぶ落ち着いたとの嬉しいご報告。
心臓の検査はクリアされて、肋間神経痛ではないか?とのアドバイスを受けてお越しになられた。痛みの出ている部位は胸の前側、前皮枝がちょうど走行するポイント↓。
肋間神経の電撃痛はほんとにキツイので、とにかく寛解されてよかった。
胸や脇腹の痛みでお困りの方は心臓の検査後、当院にご相談ください。
さて、今回のブログは中年女性の鬱症状と食事内容の関連性を調査した韓国のデータを簡単にまとめてみたい。
女性は閉経後のホルモン変化により、抑うつ、不安、睡眠障害などの感情の変化を体験するが、中でもうつ病は中年女性に最も多くみられる症状。
中年女性のうつ病高発症率には、更年期の身体的症状、心理的・社会的変化、ストレス、否定的思考、生活の質の変化、ホルモン変化など多くの要因が関与し、更年期移行期の女性はそうでない女性に比べて抑うつ症状を発症するリスクが2倍になることが示されている。
残念ながらうつ病の根底にあるメカニズムは現在まで完全に解明されていないが、ノルエピネフリン系やセロトニン系の機能障害、腸内細菌叢異常、炎症性サイトカインなどが原因となる可能性が示唆されている。
食事要因は、腸内細菌叢、セロトニン神経伝達、抗炎症活性に大きな影響を与える。
栄養素と食物繊維が豊富な食事は腸の健康を改善し、腸内微生物の多様性を高め、多様な腸内細菌叢は、腸-脳軸とトリプトファン-セロトニン代謝に関与している。
米国の研究では、健康的な食事パターン摂取量が最も多い人は、最も少ない人に比べてうつ病のリスクが低いことが判明している。
また、イランの成人女性を対象とした症例対照研究では、野菜、果物、卵、魚、全粒穀物の摂取量が多い健康的な食事パターンはうつ病リスクを低下させることがしめされている。
一方で、中国の研究では赤身肉や加工肉、スナック菓子、デザートの摂取量が多いことを特徴とする欧米型食事パターンの摂取量が最も多いグループでは、摂取量が最も少ないグループと比較してうつ症状リスクが増加することが報告されている。
オーストラリアの中年女性でも、赤身肉、アイスクリーム、ケーキ、デザートの多量摂取などの不健康な食事パターンが抑うつ症状の高値と関連することが判明。
上記のように、うつ病と食事パターンとの関連を分析した研究は複数あるが、いまだ食事パターンに関する研究は不足している。
リンクの研究は、45~69歳の韓国人女性2190人を対象に、食事パターンと抑うつ症状の関連を明らかにすることを目的としたもの。
【結果】
食事パターンは主成分分析から導かれ、2つの食事パターンが同定された。
「健康的」食事パターン:全粒穀物、豆類、野菜、果物、魚の摂取が多い。
「不健康」食事パターン:麺類、餃子、菓子類、赤身肉、炭酸飲料、コーヒーの摂取が多い。
すべての交絡因子を調整後、健康的食事パターンの得点が最も高い人は、最も低い人に比べて抑うつ症状のリスクが0.56倍低かった。
逆に、不健康食事パターンの得点が最も高い人は、最も低い人よりも抑うつ症状のリスクが1.85倍高かった。
【結論】
中年女性では、全粒穀物、豆類、ナッツ類、野菜・果物、魚介類、牛乳・乳製品を摂取する健康的食事パターンは抑うつ症状リスクを軽減する。
これらの食品には食物繊維が多く含まれており、神経伝達物質を調整し、有益な微生物環境を作ることによって抑うつ症状を軽減するようだ。
一方で、ケーキ、クッキー、チョコレート、炭酸飲料、コーヒー、肉類などの摂取を含む不健康食事パターンが抑うつ症状のリスクを増加させた。
したがって、中年女性の抑うつ症状を予防・管理するためには、食物繊維を豊富に含む様々な食品を含む食事が重要である。
Healthy and Unhealthy Dietary Patterns of Depressive Symptoms in Middle-Aged Women
・すべての交絡因子を調整後、全粒穀物、豆類、ナッツ類、野菜・果物、魚、海藻、牛乳、乳製品の多量摂取を特徴とする「健康的」食事パターンは抑うつ症状リスク低下と有意に関連していた。対照的に、パン、ケーキ、スナック菓子、チョコレート、ソーダ、コーヒー、アルコールなどを多く摂取する「不健康な」食事パターンは、抑うつ症状リスクを高めることが示された。
・他の研究でも、健康的食事パターンスコアが最も高い人(野菜、豆類、きのこ類、海藻類、白身魚、果物の摂取量が多く、白米の摂取量が少ない)は、スコアが最も低い人に比べてうつ病のリスクが0.59倍低かった。対照的に、白米、赤身肉、ラーメン、麺類、パン、コーヒーの摂取量が多く、不健康な食事パターンの得点が最も高い人は得点が最も低い人に比べてうつ病のリスクが1.65倍高かった。
・10,000人近くの参加者を4年間追跡したSUNコホート研究では、地中海食の遵守度が最も高い人は、最も低い人に比べてうつ病リスクが低いことが明らかになった。果物、ナッツ類、豆類の摂取量が多いほどうつ病リスクが低下するのに対し、高脂肪の乳製品や赤身肉の摂取量が多いとうつ病リスクが高かった。
・脂肪、赤身肉、精製糖質、過剰カロリーの摂取制限、地中海食の採用など、食事介入に関する16研究をレビューしたメタ解析では、健康的な食事の遵守がうつ症状の有意な減少と関連していることが明らかになった。また、10ヵ国の21研究を対象とした別のメタ解析では、野菜、果物、全粒穀物、オリーブ油、豆類を多く摂取することを特徴とする食事パターンを守っている人は、そうでない人に比べてうつ病リスクが低いことが明らかになった。
・加工肉、精製穀物、砂糖、バターなどを多く摂取する欧米食パターンの人は、うつ病のリスクが高いことがわかった。
・うつ病の病因の仮説の一つであるモノアミン仮説は、炎症性サイトカインに長期間さらされることは、ノルエピネフリンやドーパミンなどのモノアミン神経伝達物質の機能不全につながることを示唆している。この炎症反応は腸内細菌叢の構成に影響を及ぼし、うつ病発症を助長する可能性がある。健康な腸内細菌叢は神経伝達物質の合成、前頭前皮質のニューロンの髄鞘形成、海馬の発達に影響を与え、うつ病や不安症などの精神衛生にプラスの影響を与える。
・健康的な食事の主要成分である食物繊維は腸内細菌叢によって短鎖脂肪酸に分解され、炎症を調整するだけでなくγ-アミノ酪酸とセロトニンの産生を通じてうつ病を軽減する。
・トリプトファンは、セロトニン合成に必要な必須アミノ酸で、牛乳や乳製品、魚、卵、バナナ、豆腐、ナッツ類などの食品に含まれている。トリプトファン摂取量が少ないと脳内セロトニン合成が損なわれ、不安やうつ病を引き起こす可能性がある。
・精製穀物、砂糖、飽和脂肪酸を多く含む欧米食パターンは、腸内微生物の多様性を低下させる。特に、加糖の過剰摂取は腸内微生物の環境を乱し、炎症反応、インスリン抵抗性、酸化ストレス、エンドルフィンやドーパミンの調節障害、ひいてはうつ病を引き起こす。
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