「孤独感」は糖尿病や心血管系疾患リスクと関連すると聞いたら皆さん驚くだろうか?
最近の研究では、孤独感とうつ病の増加、認知能力の低下、加齢による老人ホーム入所の可能性の増加といった関連が認められており、孤独感は生活習慣に直接影響を及ぼすケースが多い。
例えば、English Longitudinal Study of Ageingのデータでは孤独感は禁煙成功と負の相関があることが明らかになっている。
生物学的には、炎症バイオマーカーやストレスバイオマーカーの上昇との独立した相関によって証明されるように、孤独感は生物学的機序を介して健康に悪影響を及ぼす。
栄養学の文献をレビューすると、孤独感と糖尿病の相関における食事クオリティが及ぼす影響に関する研究はまだ少ない。
食事の質は糖尿病予備群リスク上昇と関連し、糖尿病患者においては食事の質の四分位が高い場合に比べて食事の質の四分位が低いほど高血糖および過体重/肥満オッズが高いことが認められている。
ヨーロッパ9カ国では、社会的に孤立している人は身体的に不活発である可能性が高く、ヨーロッパ14カ国では、社会的に孤立している人は果物や野菜の摂取が不十分である可能性が高いことがわかっている。
また、大学生の孤独感が健康的食事指数(HEI)スコアの低さに反映される不健康な食生活や運動不足と関連していることが明らかになっている。孤独感をあまり感じない青少年と比較して、貧しい食習慣の傾向が強く、地中海食へのアドヒアランスの低いこともわかっている。
60~94歳の成人では、孤独感は栄養不足と関連していたことも報告されている。
肥満が2型糖尿病の危険因子であることは広く認識されているが、孤独と肥満の関連についての研究が行われているが研究間の知見に一貫性がないため、肥満が孤独の関連症状症であるかどうか結論は出ていない。
リンクの研究は、36~77歳のアフリカ系アメリカ人と白人の中高年を対象に食事の質、身体活動、体格指数(BMI)が孤独感と糖尿病の関連性を媒介するかどうかを明らかにすることを目的としたもの。
結果
孤独感は食事の質および身体活動と有意に逆相関していた。
有意な経路は、孤独>身体活動>BMI>糖尿病だった。
孤独は身体活動の低下や食事の質の低下と強く相関しており、集団における糖尿病発症に関与している可能性がある。
他の慢性疾患と同様に糖尿病は炎症が関与する慢性疾患であり、対照的に身体活動と健康的な食事は炎症を軽減する可能性がある。
・この研究は、孤独感とアフリカ系アメリカ人または白人の成人糖尿病予備群または糖尿病の関連を初めて報告したもの。予想されたように、孤独感は食事の質および身体活動の両方と直接的に有意な逆相関を示した。孤独感スコアが高いほどHEIスコアが低く、余暇や中等度または強度の身体活動に費やす時間が短かった。
・BMIに対する孤独感、食事の質、身体活動の複合効果を検討したところ、活動のみが有意かつ負の予測因子だった。他のレビューでも身体活動と孤独感は一般に逆相関しており、身体活動の低下がBMI上昇につながる可能性があることがわかっている。また、孤独な人は一般的にBMIが高いことも報告している。
・BMIは糖尿病の正の有意な予測因子だった。遺伝と修正可能な生活習慣の危険因子は、多くの慢性疾患や精神疾患発症の根本的な原因であることが多い。
・2型糖尿病とうつ病には慢性炎症という共通の病態がある。劣悪な精神衛生は劣悪な健康行動と関連している。
・果物や野菜が少なく、清涼飲料水やファーストフードが多い食事、不十分な身体活動、睡眠不足が精神的苦痛の高確率と関連していた。これらの行動をとる人は世帯収入が低く(7万ドル未満)、大学教育を受けていなかった。
・都市部のサンプルでは、孤独感はうつ病と有意な相関があった。うつ病は孤独感と同様に、食事の質の低さと有意に相関していた。
・ポジティブな精神的健康は、果物や野菜の消費量の多さと関連していることがわかった。HANDLS研究のデータを用いた以前の研究では、男性におけるより抗炎症性の食物摂取は、年齢が上がるにつれて精神的健康の増進と有意に関連することがわかった。
・身体活動は精神的健康と心代謝リスクとの関連を間接的に予防する効果があることが示された。さらにこのサンプルでは、社会経済的地位の高さがより低い心代謝リスクと関連していた。
・食事と身体活動に加えて、精神的健康を修飾する重要な生活因子は社会的相互作用である。社会的なつながりは精神的健康に有益であると考えられる。
糖尿病に関連する健康転帰を改善するために、精神的健康と生活習慣的健康行動との関係をよりよく理解することが不可欠である。