ビタミンDの健康効果は賛否両論議論が分かれているが、過去の研究では、がん、心血管疾患(CVD)、自己免疫疾患、感染症および糖尿病に対するビタミンDの保護的役割が示されている。
73コホート研究のメタアナリシスでは、血中ビタミンD濃度が高いほど、全死亡、CVD、癌による死亡リスクが低いことが示されている。
また、遺伝子研究におけるエビデンスで、ビタミンDと死亡率の相関を裏付けている。
一方で、食事性ビタミンD摂取に関する研究では全死因死亡率との関連は観察されていない。
これは日光曝露による皮膚ビタミンD合成の寄与が食事性ビタミンD曝露よりもはるかに大きいためで、食事からの摂取量との関連があるとしてもそれが隠されている可能性がある。
全死因死亡率に対する食事性ビタミンD摂取の効果は、日光曝露量の少ない人においてのみ明らかなのかもしれない。
また、ビタミンDとカルシウムの相乗効果は、骨格系および非骨格系疾患の予防に関与することが示唆されていることから、ビタミンD摂取の死亡リスクへの影響はカルシウムの摂取量が多い者において顕著になる可能性もある。
リンクの研究は、一貫性のないビタミンDの全死因死亡率との関連性を解決するために、伝統的にビタミンD豊富な「魚」を日常的に摂取している日本での大規模な人口ベースコホート研究において、ビタミンD摂取と全死亡、がん、CVDおよび呼吸器疾患死亡リスクとの関連を前向きに調査したもの。
日光曝露の代替指標(性別、居住地域、職業、身体活動)、カルシウム摂取量、既知の慢性疾患の危険因子(肥満、喫煙、高血圧、糖尿病)により関連が修飾されるかどうかも検証。
参加者は、日本保健所前向き調査(1995~1998年)の調査に回答し、2018年まで追跡調査を受けた男性42,992人、女性50,693人。
追跡期間中22,630人の死亡が確認された。
全体として、ビタミンD摂取量の第3および第4五分位(最高五分位ではなく)は、それぞれ全死因死亡の有意な低リスクと関連していた。
日光への露出が少ないことを特徴とするサブグループでは、ビタミンD摂取量の増加とともに全死亡リスクが直線的に減少した。
高血圧の参加者では全死亡、カルシウム摂取量の多い参加者では心疾患死亡リスクが低いことが観察された。
ビタミンD摂取量の多さは、虚血性脳卒中および肺炎死亡リスク低下と関連していた。
食事性ビタミンD摂取量の多さは、日光照射量が少ない人または高血圧の人の死亡リスク低下と関連していた。
ビタミンDが潜在的に低い人は、早死予防のために食事性ビタミンDの摂取量を増やすことが有益であると結論。
・ビタミンDの摂取量がやや多い(第3および第4五分位)ことが、全死亡リスクの低下と関連していた。女性、高緯度地域の住民、カルシウム摂取量が多い人、高血圧の人ではビタミンD摂取量の多さに関連した全死亡リスクの有意な低下が観察された。
・ビタミンD摂取は虚血性脳卒中と肺炎による死亡リスク低下と関連していたが、あらゆる種類の癌リスクは低下していなかった。
・ビタミンD摂取は日光曝露が少ない参加者(女性および高緯度地域の住民)では全死亡リスク低下と関連していたが、日光曝露が多い参加者(男性および低緯度地域の住民)では関連しなかった。食事性ビタミンDを罹患率/死亡率と関連付ける研究では日光曝露を考慮する必要がある。
・ビタミンDはカルシウムの高摂取は血管石灰化を介して心血管系疾患(CVD)に有害な影響を及ぼすことが懸念されてきたが、この研究ではビタミンD高摂取に伴うCVD死亡リスクはカルシウムの摂取量が多い被験者では減少し、少ない被験者では減少しなかったことから、カルシウムがビタミンDの心保護効果を増強している可能性が示唆された。
日本人のようにカルシウム摂取量の少ない集団では、十分な量のカルシウムを摂取している人であれば食事性ビタミンDはCVDを予防する可能性がある。
・脳卒中による死亡率は冬季の日照時間が短い日本の北西部で高い。この研究では、ビタミンD摂取量の多さは虚血性脳卒中による死亡リスクの有意な低下と関連していた。この関連は、高緯度地域の住民や高血圧の参加者でより顕著だった。
この知見は、日系アメリカ人を対象とした研究で、ビタミンD高摂取が出血性脳卒中ではなく、血栓/塞栓性脳卒中リスクの有意な低下が示されたことと一致する。
この発見は、高緯度地域の住民や高血圧患者において虚血性脳卒中予防に食事性ビタミンDが重要な役割を果たすことを示唆している
・ビタミンD摂取量とがん死亡リスク低下に関する証拠は一致しない。
これは、がん予防に必要なビタミンD量によって説明されるかもしれない。
例えば、他の研究ではビタミンD摂取に関連した大腸癌リスク減少は、ビタミンD摂取量の最高5分位の上位半分の人にのみ観察されている。食事からの摂取だけでは不可能な極めて高いビタミンD摂取量が、がん予防には必要なのかもしれない。
・ビタミンD摂取量の多い参加者において肺炎死亡リスクが有意に減少していた。
ビタミンD補給と急性呼吸器感染症に関するメタ分析では、BMI<25kg/m2の参加者ではビタミンD補給の効果が示されたが、BMI≧25kg/m2の参加者では示されず、肥満がビタミンDと肺炎死亡率の関連性を修飾している可能性が示唆されている。
日本人のBMIが欧米人に比べて低いことを考えると、ビタミンD摂取量と肺炎死亡率の関連は日本人でより明確に観察される。
結論
ビタミンD摂取は日光への露出が少ない個人の全死因死亡リスクの有意な低下と関連していた。
ビタミンD摂取は虚血性脳卒中および肺炎死亡リスクの低下と関連していた。