先日のブログで肥満と癌の相関について書いた。
肥満は世界的な流行であり癌の他に全死亡率、心血管疾患、認知症など、健康上の有害な結果をもたらし、医療制度に大きな負担をかけている。
肥満症は長期的な栄養障害と認識され、過剰なエネルギー摂取依存に加えてビタミン、特に脂溶性ビタミン、葉酸、ビタミンB12、ビタミンC欠乏も併発している。
ビタミンBはエネルギー代謝、酸化ストレス、炎症抑制、脂質代謝に影響を与え、肥満やその他の代謝性疾患の発症に重要な役割を果たす。
一方で、ビタミンB血中濃度と肥満に関する研究は限られており結果に一貫性がなく、研究の多くはその多くは肥満度(BMI)で定義される肥満に着目しており、他のタイプの肥満とビタミンBの関係は不明である。
リンクの研究は、中国の中高年成人におけるビタミンB(B1、B2、B6、B9)濃度と肥満(それぞれBMI、WC、VFA、BF%で定義)の関連性を調査することを目的としたもの。
45歳以上(45-82歳)の887人が対象。
ロジスティック回帰モデルを用いてビタミンBレベルと肥満のオッズの関連を評価。
ビタミンB1レベルとWC、VFA、BF%の基準による肥満との間に負の相関が観察され、調整オッズ比(OR)はそれぞれ0.47、0.52、0.46だった。
WCとBF%を用いて肥満を定義した場合、ビタミンB2の四分位が高いほど肥満オッズと負の相関があった。
ビタミンB6はVFAで定義された肥満とBF%で定義された肥満と逆相関していた。
VFAとBF%を用いて肥満を定義した場合、ビタミンB9に負の相関が認められた。
結論
ビタミンB(B1、B2、B6、B9)レベルは、中国人中高年者の肥満と負の相関があった。
Association between Vitamin B and Obesity in Middle-Aged and Older Chinese Adults
・この横断研究では、ビタミンB1濃度は肥満(WC、VFA、BF%)と負の相関があり、ビタミンB2濃度はWCおよびBF%で定義された肥満と負の相関があることが示された。
VFAまたはBF%を用いて肥満を定義した場合、ビタミンB6とビタミンB9はともに肥満と負の相関があった。
・肥満の人は高カロリー、低栄養食品を常食しているため栄養摂取不足になりやすい。
また、肥満状態はビタミンの吸収や代謝にも影響を及ぼす。ビタミンBは多くの重要な生理的プロセスに関与しており、欠乏するとさまざまな症状を引き起こす。
・ある研究では、肥満者(BMI >25kg/m2)の血清葉酸濃度が健常対照者より低く、血清葉酸はBMIおよびウエスト・ヒップ比と関連していた。
閉経後女性を対象とした研究では、肥満女性(BMI >30kg/m2)は、正常体重の女性よりも血清葉酸濃度が低く、血清葉酸はBMIおよびBF%と関連していた。
・ビタミンBはエネルギー代謝に重要な役割を果たしており、その欠乏はエネルギー代謝を損なって脂肪生成を促し、肥満を引き起こす可能性がある。
また、ビタミンBには抗酸化作用と抗炎症作用があり、ビタミンが不足すると酸化ストレスや炎症が増加する可能性がある。
ある研究では、腸の酸化ストレスが食事性葉酸の腸管吸収を低下させて葉酸欠乏を引き起こし、悪循環を形成する可能性があることがわかっている。
葉酸とビタミンB6欠乏はホモシステイン(HCY)濃度を上昇させ、HCYはAMP-activated protein kinase経路を活性化することで脂肪分解を阻害する可能性がある。
さらに、肥満は慢性的な低レベルの炎症状態と関連している。炎症は、さまざまな組織におけるビタミンB6代謝に影響を与える可能性がある。
・WC、VFA、BF%を用いて肥満を定義した場合、ビタミンB(B1、B2、B6、B9)が肥満と負の相関を示すことが実証された。ビタミンB濃度が高いほど45歳以上の成人の体脂肪分布が改善され脂肪量が減少する可能性がある。