過去の研究やレビューの結果から、ビタミンD濃度とうつ病の関連が指摘されている。
最近の英国のコホート研究では、ビタミンD欠乏が中年成人のうつ病のリスクを高めている可能性が報告されている。
またビタミンDはセロトニン合成を調節し 、ストレス反応を活性化することで気分転換のきっかけとなる免疫反応に影響を及ぼすとする報告もある。
ビタミンDはエストロゲンなどの女性ホルモンの生合成や、アンチミューラリアンホルモン(AMH)の発現調節に重要な因子の一つであり、性ホルモンのバランスが崩れている続発性無月経にビタミンDが関係している可能性がある。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や原発性卵巣不全(POI)、続発性無月経の女性では、うつ病の有病率が高いことが研究により報告されている。
PCOS患者のうつ病は、AMHやプロラクチンなどの性ホルモンと高い相関があることもわかっている。
以上の点から、性ホルモンとうつ病の両方に関連するビタミンDは、続発性無月経を有する女性のうつ病に直接的または間接的に影響を与えている可能性がある。
しかし、続発性無月経患者におけるビタミンDと抑うつ症状の関連に関する研究はまだ少ない。
リンクの研究は韓国人女性の続発性無月経患者を対象に、血清25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)値と抑うつ症状との関連について検討したもの。
63人の続発性無月経患者を対象に血清25(OH)D値を含む臨床的および生化学的パラメータを測定。
結果、続発性無月経患者の女性の41.3%がビタミンD欠乏症だった。
韓国版ハミルトンうつ病評価尺度(K-HDRS)スコアは、年齢とBMIを調整後、血清25(OH)D値、遊離テストステロン、血清抗ミューラーホルモン(AMH)と負の相関があった。
続発性無月経患者にK-HDRSを用いた場合、血清25(OH)DレベルとAMHレベルが最も強力な抑うつ重症度予測因子だった。
ビタミンDレベルとAMHレベルが低い続発性無月経の患者は、より重度のうつ病リスクの可能性があると結論。
・本研究は続発性無月経の女性における血清25(OH)D濃度とうつ病の関係を調べた初めての研究。
・うつ病は血清25(OH)D値と負の相関があることを見出した。特に、血清25(OH)D値の低値と血清AMH値の低値は続発性無月経患者のうつ病の重症度と関連した。
・脂溶性セコステロイドの一種であるビタミンDは脳機能に重要な役割を担っている。例えば、神経栄養因子の調節や免疫調節により、神経保護効果を発揮することが示されている。
・ビタミンD濃度の低下と気分障害の関連について、多くの研究で有意な結果が報告されている。
高齢者では、ビタミンDの活性型である25(OH)D(カルシトリオール)が抑うつ気分と認知機能の低下の両方に関連していることが分かっている。
また、大うつ病性障害の閉経後女性は、健康な女性と比較して25(OH)Dの血清レベルが有意に低いことが報告されている。
・大うつ病性障害や季節性感情障害の有病率は、ビタミンD欠乏のリスクが高い北緯の国々で比較的高いことがよく知られている。しかしこのテーマに関する各地域での研究報告はまだ不十分であり、今後各地域での追加研究や多国籍を背景としたさらなる研究が必要。
・ビタミンDがうつ病に影響を与えるメカニズムとして、ビタミンD欠乏がドーパミン、セロトニン、ノルエピネフリンといった神経伝達物質異常と関連していることが考えらる。
またビタミンD受容体は、前頭前野、海馬、小脳など、精神神経疾患で障害される脳部位に存在する。
セロトニン遺伝子のプロモーター領域にビタミンD応答因子が存在するという研究もある。
・AMHは続発性無月経患者のうつ病を予測する重要因子であることがわかった。
以前の研究では、PCOS女性における血清AMH濃度とうつ病重症度との間に負の相関があることを報告されている。
AMHと抑うつ症状の負の相関は、卵巣摘出女性、さらには若年女性や無産婦においても報告されている。
・ビタミンD欠乏症と血清AMH値との関連性についての先行研究の結果は一貫していない。血清25(OH)D値とAMHの関係を確認するためにより多くの人口でのさらなる研究が必要。