人類が癌を克服する日は来るのだろうか?
がんに関する広範な研究、また革新的な診断・がん治療の開発が進むにもかかわらず、多くの種類のがん発症率は依然として増加している。
また、現代医学は革新的な化学療法剤を導入しても腫瘍の治療効果が十分でないという問題を抱えている。
そのため、がん細胞に有効な新しい化学療法薬の開発・合成だけでなく、がん発症のリスクを低減させることが証明されている野菜や果物を多く摂取するなど適切な食習慣の導入など、がん予防に重点を置くことが強く推奨されている。
近年、抗がん作用を持ち、正常細胞に対する細胞毒性が低い天然化合物の探索が大きな課題となっており、がん治療を非薬理学的手法でサポートする必要性から植物由来の原料、特に予防にうまく利用できる植物への関心が高まっている。
注目されている植物の1つにビート(Beta vulgaris L.)がある。
過去の研究では、成長段階にあるビートルート(Beta vulgaris L.)の新芽は、完熟した根と比較して、総タンパク質、脂肪、総ミネラル化合物の含有量が有意に高いことが確認されている。
さらに、レッドビートの若い芽は抗発癌作用を有する総ポリフェノールの豊富な供給源であり、高い抗酸化活性を示す。
リンクの研究は、ビーツの新芽果汁と完熟した根の果汁のヒト乳がん細胞および正常細胞に対する影響を比較したもの。
新芽果汁は、レッドビーツ果汁と比較して乳がん細胞株(MCF-7およびMDA-MB-231)の増殖を著しく強く阻害することが判明した。
果汁の種類にかかわらず、エストロゲン非依存性細胞(MDA-MB-231ライン)よりもエストロゲン依存性細胞(MCF-7ライン)の増殖において有意に大きな減少が示された。
分析したすべてのタイプのビーツ果汁、特に、新芽と根の果汁は癌細胞に対して抗増殖効果とアポトーシス効果を発揮した。
・現在、知的・身体的能力を含む健康の維持および癌などの非伝染性疾患発症リスクの低減における食事組成の役割が重視されている。現在行われている癌治療はまだ有効とは言えず、化学療法に対するがん細胞の抵抗性が急速に高まっていることも研究結果で確認されている。そのため、天然由来の新たな有効物質の探索が急務となっている。
・野菜や果物には健康に役立つ貴重な栄養素や非栄養素が含まれている。
武漢肺炎の件ですっかり信頼をなくしたWHOの勧告によると、果物と野菜の1日の摂取量は少なくとも400gであるべきとされている。
植物由来食品の有益な効果として、抗酸化作用、抗炎症作用、抗変異原性、抗発がん作用がある。
・ビーツ(Beta vulgaris L.)は、生物学的な可能性と健康増進特性が大きい野菜の一つで、
ポリフェノール、ビタミン(葉酸、ビタミンC)、ミネラル(カリウム、鉄、カルシウム)、ベタレイン(ベータニン)など多くの成分を含み、抗発がん活性など複数の活性が証明されている。
・ビーツの若芽には健康増進効果が証明された栄養素や非栄養素が多く含まれることから人気が高まっている。ビーツの新芽は完熟期のビーツの根と比較して、総タンパク質、脂肪、総ミネラル化合物の含有量が有意に高く、総ポリフェノールの豊富な供給源として高い抗酸化活性を示す。
・植物性ポリフェノールには、抗酸化作用、抗炎症作用、抗変異原性、抗発癌作用があり、慢性非伝染性疾患の予防に役立つ。
ポリフェノールは化学構造によってフェノール酸、フラボノイド、リグナン、スチルベンに分類され、ビーツ新芽果汁からはフェノール酸とフラボノイドが検出されている。
フェノール酸とフラボノイド含有量は、成熟期のビーツの根果汁よりも新芽果汁で有意に高いことが判明した。
・ビーツ新芽の主要な化合物はシナピン酸で、根ではカテキンだった。
・過去の研究では、ポリフェノールがT47D、MCF-7、MDA-MB-231乳がん細胞株に対して、時間および用量依存的に抗増殖作用を示すことが確認されている。
これらの化合物は、発癌に関連する細胞メカニズムや分子に影響を与える。
ポリフェノール化合物は、NF-κBやAP-1などの転写因子の活性を抑制する能力がある。
NF-κBやAP-1などのタンパク質複合体は増殖やアポトーシスを制御する多くの遺伝子を制御しており、その経路の乱れは発がんを引き起こす可能性がある。
・ポリフェノールの抗増殖・アポトーシス作用は、細胞膜から細胞質、核へのシグナル伝達経路や細胞周期の制御に関わる重要なタンパク質の阻害、さらにカスパーゼ3の開始、p53タンパク質の活性化、細胞増殖と分化に影響を及ぼす因子の阻害によって説明できる。
ポリフェノールはがん細胞に対してより強い効果を発揮することが注目されている。