過敏性腸症候群(IBS)は、主に下痢(IBS-D)、便秘(IBS-C)、またはその両方(IBS-M)として現れ世界的の約11%が罹患しているとされている。
IBS患者の約3分の1は便秘が主症状(便秘型IBS(IBS-C)サブタイプ)。
IBSの女性は、IBSの男性の2倍以上、IBS-Cの基準を満たしやすいとされている。
IBS-Cの症状基準を満たす1667人を対象とした米国(US)の調査では、患者が報告した最も一般的な症状は、腹痛(83%)、鼓腸(78%)および緊張(75%)。
IBS患者では、糞便および小腸の微生物組成の変化も認められている。
IBS患者の糞便中のビフィズス菌や乳酸菌の数は健常者より少ないとする研究報告もあれば、健常者より多いとする研究報告もあり一貫していない。
既存のエビデンスから、IBSは多因子疾患で、その正確な病因や病態は完全には明らかにされていないが、消化管内細菌叢の乱れ、軽度の粘膜炎症、慢性的な免疫活性化、腸管透過性の変化、心理社会的要因がIBSに関与しているとされている。
リンクの研究は、便秘優位の過敏性腸症候群(IBS-C)治療におけるプロバイオティクスの有効性と安全性を評価するための系統的レビューとメタ解析。
IBS-C患者を対象にプロバイオティクスケアとプラセボを比較した無作為化対照試験(RCT)を5つの総合データベースで検索した(2022年3月時点)。
バイアスリスクはCochrane Collaboration Risk of Bias Toolを用いて評価。
757人の患者を含む10件のRCTが含まれた。
メタ解析の結果、プラセボと比較して、プロバイオティクスは便の粘性を有意に改善し、糞便中のビフィズス菌と乳酸菌の数を増加させたが、腹痛スコア、鼓腸スコア、QoLスコア、有害事象発生率には有意差が見られなかった。
確信度の低いエビデンスから、プロバイオティクスはIBS-C患者の便の粘性を改善し、便中のビフィズス菌と乳酸菌の数を安全性よく増加させる可能性があることが示唆された。
サンプルサイズの大きな、より質の高い研究を実施する必要があると結論。
・フランス、米国、インド、カナダ、韓国、イタリア、南アフリカ、中国の757人のIBS-C患者を含む10RCTが含まれている。
・メタ解析の結果、プラセボと比較して、プロバイオティクスはIBS-C患者の便の粘性を改善し、便中のビフィズス菌と乳酸菌の数を増加させるが、腹痛、鼓腸、QOLに対するプロバイオティクスの有効性は不明確だった。
・治療期間が短い方が長いよりも便の粘性の改善や便中のビフィズス菌や乳酸菌の増加に効果的であった可能性が判明。
・安全性については、プロバイオティクスの忍容性は良好であり、重篤な有害事象は認められなかった。プロバイオティクス群とプラセボ群の間で有害事象に有意差はなく、これらの症状はプロバイオティクスの使用と密接な関係がない可能性が示唆されました。
・既存の結果から、プロバイオティクスは有害事象の発生率を高めることなく、IBS-Cに対して安全かつ有効な治療法となる可能性が示唆された。
・IBS患者の腸内フローラはアンバランスであり、異なるサブタイプのIBS患者さんの腸内フローラの変化は必ずしも一定ではないことが示された。
より一般的な結果としてLactobacillusやBifidobacteriumなどの減少(健康なコントロールと比較して)により、腸内コロニー形成に対する抵抗力が低下していることが観察された。
・プロバイオティクスの介入は、IBS患者の腸内フローラの乱れを改善するのに有用である。
・腹痛、QoL、腹部膨満感のメタ解析では治療期間の違いにより効果が異なることがわかった。
腹痛とQoLは8週間の介入で改善したが、腹部膨満感の緩和は12週間後改善した。
・プロバイオティクスは便の粘性を改善し、便中のビフィズス菌と乳酸菌の数を変化させる貴重なアプローチであり、この分析では短期間の投与がより効果的だった。
また、便の粘性の改善は、便秘患者の排便困難を直接的に緩和した。
同時に、糞便中のビフィズス菌と乳酸菌の増加によりディスバイオーシスが改善され、正常な消化管機能が維持される可能性が示された。