難病指定されている骨形成不全症に対する世界初の治療薬が開発されそうだというニュースを目にしました。創薬の世界にいる方に尋ねてみたところ、AIの進歩によってよりスピーディーに様々な難病の治療薬が開発されていくだろうとのこと。
遺伝子治療の進歩も踏まえると、この地球上で治療できない病気は一切なくなる日が来るのでしょうか。
さて今回のブログは、閉経後女性の骨粗しょう症に関するデータをまとめてみます。
骨粗鬆症は主に高齢者にみられ、骨密度(BMD)の低下や骨折リスクの上昇、またそれらに起因する死亡率の増加や多額の医療費支出に強く相関している。
骨粗しょう症は、骨形成と骨吸収の動的平衡における調節障害に由来し、骨芽細胞死の亢進と骨形成分化の低下が主な病理学的特徴。したがって、骨芽細胞の生存を促進し、骨芽細胞の機能を強化することは骨の動的平衡を回復するために不可欠であり、骨粗鬆症マネジメントにおいて中心的な役割を果たす。
パイロトーシスは炎症に基づくプログラム細胞死(PCD)であり、主にインフラマソームの活性化を通じて骨粗鬆症の発症に重要な影響を及ぼす。パイロトーシスが加齢や、慢性炎症によって悪化する様々な代謝性疾患と複雑に関連していることが多くの研究で示されている。
骨粗鬆症には多くの炎症因子やシグナル伝達経路が関与しており、炎症と骨粗鬆症発症との相関が示唆されている。
いくつかの研究は、パイロトーシスが骨芽細胞や破骨細胞の機能に影響を与えて骨粗鬆症の一因となることを示唆しており、パイロトーシスを標的とする戦略は骨粗鬆症治療の有望な手段となる可能性がある。
”オートファジー”は細胞質成分の輸送を仲介する細胞内分解メカニズムで、長寿タンパク質、ミスフォールドタンパク質、欠陥のあるまたは余分な小器官などの細胞質成分をリソソームに輸送し、二重膜のオートファゴソームを介して分解することを仲介する。
近年、オートファジーが骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞の生存と機能維持に重要な役割を担っていることを裏付ける証拠が増えつつある。
研究者の間では、オートファジーがパイロトーシスを抑制することによって骨粗鬆症における骨芽細胞死を制御しているのではないかという仮説が有力である。
オートファジーの力を利用してパイロトーシスを阻害する薬剤を発見することが急務となっている。
トレハロースは、植物、細菌、酵母、真菌などの生物に存在する天然の二糖類で、様々な細胞において有望なオートファジー活性化剤として注目されている。
過去の研究では、トレハロースはオートファジーにおける役割を超えて、酸化的損傷、脱水、温度変動などの細胞ストレスに対する保護効果を示している。
最近の研究では、トレハロースのコラーゲン分解を阻害能にによって骨粗鬆症に対抗できることが示唆されている。
いくつかの研究によると、トレハロースはAKT/TFEB経路依存的なオートファジーの流れを促進することにで骨粗鬆症に対抗することが示され、別の研究では、トレハロースがオートファゴソーム形成を促進することで肝硬変ラットの骨量を増加させ、骨粗鬆症治療における潜在的機能を示している。
一方で、骨粗鬆症におけるパイロトーシス緩和に対するトレハロースの役割については十分に研究されていない。トレハロースがオートファジーを刺激することによってパイロトーシスを抑制するのかどうかは依然として不明。
リンクの研究は、トレハロースがいかにしてオートファジーとパイロトーシスに影響を与えるかを深く掘り下げ、骨粗鬆症ラットの骨量回復におけるトレハロースの有効性を評価したもの。
トレハロースによる骨粗鬆症治療のための新たな分子標的を提供し、閉経後骨粗鬆症におけるトレハロースの治療的使用の可能性を示す証拠となるかもしれない
【結果】
トレハロースは卵巣摘出ラットの骨喪失を効果的に軽減し、オートファジーを上昇させ、パイロトーシスを抑制した。
3-メチルアデニンはトレハロースの保護効果、特にオートファジーの促進とパイロプトーシスの抑制効果を減弱させた。
【結論】
トレハロースはin vitroおよびin vivoにおいて、骨芽細胞のパイロトーシスおよびOVXが介在する骨喪失を抑制することが示された。
トレハロースは骨粗鬆症治療の有望な治療剤候補となりうることが示されたが、トレハロースが骨芽細胞においてオートファジーを促進し、パイロトーシスを抑制する分子メカニズムは不明であることからさらなる研究が必要。
Trehalose Rescues Postmenopausal Osteoporosis Induced by Ovariectomy through Alleviating Osteoblast Pyroptosis via Promoting Autophagy
・近年、骨粗鬆症に関する研究が著しい進歩を遂げており、増加する研究はトレハロースが骨粗鬆症の潜在的バイオマーカーおよび治療薬として役立つ可能性を示唆している。
・この研究では、トレハロースがオートファジーを活性化し、パイロトーシスを阻害することでOVX誘発の骨喪失を予防し、骨代謝を改善することが示唆された。エストロゲン欠乏は骨芽細胞パイロトーシスをもたらすが、オートファジーの活性化はパイロトーシスの発生を抑制する。
・炎症は骨粗鬆症の主因として認識されている。TNF-α、IL-1β、IL-18を含む多くのサイトカインやケモカインが骨吸収過程に関与している。TNF-αレベルが慢性的に上昇すると、骨粗鬆症のような炎症関連疾患のリスクが高まる。トレハロースには抗炎症作用があり、女性の骨喪失をより深く予防できる可能性がある。
・骨芽細胞のパイロトーシスとトレハロースの役割を細胞および動物モデルで評価した結果、OVXラットの骨組織ではパイロトーシス関連タンパク質の発現が増加し、OVXラットの骨芽細胞でパイロトーシスが起こっていることがわかった。In vitroでは、トレハロース処理した骨芽細胞において、これらのタンパク質の発現が減少していることが確認された。この基盤において、エストロゲン欠乏が誘発する骨粗鬆症は骨芽細胞パイロトーシスを経験する可能性があり、トレハロース療法は骨芽細胞のパイロトーシスを減少させるために重要と考えられる。
・オートファジーは細胞内分解経路として、損傷した小器官、細胞分子、タンパク質凝集体を標的としてリソソーム分解を行う。オートファジー異常は、IL-1βやIL-18の過剰分泌に関与している。トレハロースはmTOR非依存的オートファジーの誘導物質としても認識されており、AMPK/mTOR/ULK1経路を通じてオートファジーを調節することでパルミチン酸誘導骨芽細胞アポトーシスに対抗することが示されている。さらに、トレハロースは肝硬変ラットの骨量を増加させる能力を示し、トレハロースを介した骨粗鬆症治療におけるオートファジーの極めて重要な役割を示唆している。
・細胞モデルと動物モデルの両方において、骨芽細胞のオートファジーに対するトレハロースの効果を評価した結果、トレハロースはエストロゲン欠乏誘発性骨粗鬆症と、骨芽細胞においてH2O2によって誘発される骨形成阻害を緩和することが示唆された。
・・・骨粗しょう症でお悩みの方には興味深いデータだったのではないかと思います。あくまでラットモデルの研究ですが、閉経移行期〜閉経後のの方で特に運動量が少なく、骨粗しょう症リスクを指摘されている方はトレハロース摂取を試してみてもいいのではないでしょうか?
骨粗鬆症と関連する骨格障害に対するより具体的な栄養戦略をお探しの方は、当院の栄養マニュアルのご利用を是非ご検討ください。
トレハロース以外にも骨量維持に有益な栄養素は存在します。
Lineまたはメールによるカウンセリングに基づき、皆様の症状や体質に合わせて摂取カロリー数の計算や、食事デザイン、サプリメントの選択、排除すべき食材などを最新データを元にパッケージでデザインし、ご提案いたします。