先日ご紹介したPlant-based dietと卵の組み合わせの記事にリンクするデータをまとめてみたい。
健康的な食事とは何か再考する上で役立つだろう。
欧米諸国では健康や環境への影響など持続可能性の観点から、動物性タンパク質を植物性タンパク質に置き換える傾向が近年顕著だ。
同様に世界中の多くの食品ガイドラインが植物由来食品群の消費を増やし、動物由来食品群の消費を減らすよう勧告している。
具体的には、果物、野菜、豆類、ナッツ類の消費を増やし、赤身肉や加工肉の消費を減らすことを推奨している。
植物性食品を多く含む食事は慢性疾患のリスクを下げると言わる。
ベジタリアン食など植物由来の食事は、より健康的な食品選択と関連し、心血管疾患、脳血管疾患、2型糖尿病、慢性腎臓病のリスク低下につながる。
しかし一方で、ベジタリアン食はタンパク質やアミノ酸の欠乏リスクは小さいか存在しないが、食事の種類によっては一部のビタミンやミネラル(ビタミンB12など)の摂取不足や欠乏のリスクが指摘されている。
一方、赤身肉の摂取量が多いと大腸がん、心血管疾患、2型糖尿病リスクが高まると考えられているが、タンパク質が豊富な動物性食品はいくつかの重要なミネラルやビタミンも豊富に含んでいる。
リンクの研究は、フランスのデータを用いて植物性食品指数(PDI)と食生活の質の関係における植物性タンパク質と動物性タンパク質の重要性を読み解くためにパス解析を行ったもの。
PDIは長期死亡リスクと正の相関を示したが、栄養の充足性や安全性とは有意な相関を示さなかった。
PDIと食事の質との関連は、主に果物、野菜、豆類のグループのタンパク質食品および全粒穀物によって正に媒介された。
食事の質に対する植物性食品のプラスの影響は、植物性タンパク質食品、特に果物-野菜-豆類と全粒粉の高摂取量によってドライブされることを示唆した。
逆に動物性タンパク質の摂取量が少ないと、植物性食が全体的な栄養素の充足度に及ぼすプラスの影響が制限される傾向にあるが、安全性には影響しなかった。
健康的な植物ベース食にはタンパク質源が不可欠であり、食生活の質に対する植物性タンパク質の重要性を示している。
植物性タンパク質パターンの中で、果物-野菜-豆類-全粒穀物のタンパク質に関連する栄養パッケージの重要性が強調されてた。
動物性タンパク質の摂取量が少ないと長期的な健康リスクの低下と関連するが、逆に、植物性タンパク質の摂取量が多いと、栄養素の安全性はともかく、全体的な栄養素の充足度に対する恩恵が制限される傾向がある。
卵タンパク質は食事の質に対して有意な正の効果を持つことが明らかになった。
・重要な発見の一つは、植物性食への高いアドヒアランスによる好影響は、関連する植物性タンパク質の変化に依存的であること。
植物性タンパク質がPDIと全体適正と長期的健康との関係を有意に媒介することを見いだした。
・PDIが高いほど植物性タンパク質の摂取量が多く、動物性タンパク質の摂取量が少なかった。PDIが高いほど植物性タンパク質と動物性タンパク質の摂取量のバランスがとれる傾向がある。
・PDIが高いほど脂肪と総エネルギー摂取量(EI)も少なかった。
PDIが高いことに伴うEIの低下は、食の質のスコアに負の間接的影響を及ぼした。これは食事に含まれる大栄養素のエネルギー割合に関係なく、エネルギーと栄養素を豊富に含む一部の食品の消費量が植物ベース食では少なくなっていることを意味する。
いくつかの植物性食品のエネルギー密度が低いことに由来している可能性もある。
・植物性タンパク質の摂取によってもたらされる栄養素は「タンパク質パッケージ」として知られ、本研究では植物性タンパク質が栄養素の充足度と長期的なリスクの両方に好ましい影響を与えることがわかり、植物性タンパク質パッケージの重要性が証明された。
植物性タンパク質の中でも、果物-野菜-豆類タンパク質食品群のタンパク質と全粒粉が、栄養の適切性と安全性の最も顕著な植物性タンパク質メディエーターであることを見いだした。
・精製穀物は栄養価が低いため、植物性タンパク質が豊富な食事の質を阻害することが指摘されている。
・PDIが高いほど栄養の質が向上するのは、食物繊維が一因であると考えられる。
食物繊維は全粒穀物や果物、野菜、豆類に多く含まれ、慢性疾患のリスク低減の一翼を担っている。
・一般的な微量栄養素の不足を埋めるためにどの食品カテゴリーを優先すべきか分析した他の研究では、濃い緑の葉野菜を除いて、動物性のみであることが明らかになった。
先行研究でも栄養摂取における動物性タンパク質の重要性が指摘されている。
・食事全体のレベルでの栄養充足性と安全性を分析した結果、果物・野菜・豆類タンパク質群と全粒粉タンパク質群が、栄養充足性を確保するための重要なレバーであることがわかった。
栄養充足性だけでなく、これらの食品群の消費と死亡率、特に心臓血管系疾患のリスクとの関係はよく確立されている。
長期的な健康に寄与するこれらの食品群の摂取は、植物由来の食事における潜在的な栄養素の充足率の低下を防ぐために重要である。
動物性タンパク質の割合は、植物性の高い食事で減少することが予想されるが、食事の質のスコアとは複雑な関係が見出された。
・動物性タンパク質は食事の栄養素の充足度に対して負の媒介をする。動物性タンパク質が減少すると栄養充足性の向上が制限される。タンパク質が豊富な動物性食品は、いくつかのビタミンやミネラルの摂取に重要な貢献をする。特に、基準値と比較して最適とはいえない量で伝達される鉄と亜鉛、カルシウム、ヨウ素、B12が一般的である。
詳細モデルでは、卵と魚の動物性タンパク質が貢献する。
・卵からの動物性タンパク質摂取は欠乏症リスクに対してより顕著で有益な意味を持つことがわかったが、これはそのタンパク質パッケージがヨウ素、リボフラビン、レチノール、B12摂取に寄与するためと思われる。
動物性食品を控えた食事に移行する際には、他の動物性タンパク質源よりも卵タンパク質を優先すべきであると示唆された。
これは、赤肉とは対照的に、卵が長期的な健康への悪影響とほとんど関連しないという事実とも一致している。