妊娠前の肥満が世界的に増加しており、特に中・高所得層で徐々に増加傾向にあるという。
世界保健機関(WHO)によると、母親の栄養状態は本人と新生児において中長期的に不利な出産転帰の予測因子とされている。特に妊娠前の過体重/肥満は、妊娠糖尿病(GDM)、高血圧、胎児発育異常の重要な決定因子として認識されている。最近の研究では肥満が心血管疾患、代謝障害、呼吸器疾患、精神障害、がんなどを引き起こす可能性を高めるためることが示されている。
注目すべきは、妊娠前に肥満に罹患した女性は、胎児の発育にあらゆる段階で悪影響を及ぼす可能性があることである。
母親の肥満が出産時の体重に影響するか調査した複数の研究結果により、肥満の影響を受けた妊婦は出産時の体重が大きい新生児(マクロソミック新生児)を出産するリスクが高いことが示されている。これは母体のグルコースレベル上昇が新生児の高血糖と高インスリン血症を引き起こし、胎児の成長を加速させるためと説明されている。
また、肥満の妊婦は帝王切開や器械分娩を必要とする複雑分娩のリスクが高いことが示されている。
さらに、肥満に罹患した母親では小児喘息などの呼吸器合併症が観察され、母親の肥満が胎児の肺の発達や妊娠初期の胎児の免疫系に影響を与える可能性があることが示唆されている。
英国で行われた研究では、母親のBMI値上昇と小児期の呼吸器疾患のリスクとの関係が指摘され、米国ボストンでも同様の結果が報告されている。
スウェーデンで行われた研究では、妊娠前に肥満の影響を受けた女性の子供に1型糖尿病が発症する可能性が高いことが示された。
また、両親が不健康な食生活により過体重または肥満である場合、その子供も家族と同様の不健康な栄養パターンをとる可能性が高いため、過体重または肥満の子供に育つ可能性が高い。
リンクの研究は、妊娠適齢期女性の妊娠前の過体重や肥満、過剰なBMIが子どもの体格的特徴や周産期および出生後の転帰と関連するかどうかを評価したもの。
ギリシャの9つの異なる地域の2~5歳の子どもとその母親5198人を対象とした横断研究。
結果
産後2~5年の子供とその母親において、体重過多/肥満の有病率は24.4%と30.6%だった。
母親の妊娠前の過体重・肥満は、高出産体重、早産、新生児高ポンデラル指数、帝王切開分娩、1型糖尿病、就学前の小児期の過体重・肥満と関連していた。
・妊娠前の母親の過体重と肥満は、2~5歳の子供の過体重と肥満リスクを高める(2倍以上)ことが報告された。
・母親が妊娠前に過体重または肥満に罹患していた子どもは在胎不当過大児の発症率が高いことも示された。
・母親が妊娠前に過体重または肥満であった場合、帝王切開による分娩率が高かった。
・母親が妊娠前に過体重または肥満に罹患していた子供は、その後の人生で1型糖尿病を発症する傾向が(28%)高かった。
・ある研究では、母親の妊娠前の肥満が9~13歳の子どもの総脂肪および内臓脂肪の増加とも関連している可能性を示した。
・過体重や肥満の母親におけるインスリン抵抗性は妊娠中のグルコースレベル上昇につながる可能性があり、これは胎児の発育促進や新生児の出生時体重の増加と関連していた。
母親の肥満と代謝異常が子宮内での子どもの肥満「プログラミング」経路に影響を及ぼすことを支持するデータもある。
・体重超過と代謝異常の世代間連鎖と闘うために、妊娠前の早い段階での肥満予防プログラムや政策の重要性が浮き彫りになった。
・最近のメタアナリシスでは、地中海食に基づく介入は3歳から18歳の小児および青年におけるBMI低下と肥満の減少にかなりの影響を及ぼす可能性が示された。
地中海食は、全粒穀物、果物、野菜、豆類を毎日一定量摂取し、白身肉を週に1回少量摂取し、たまにお菓子やチョコレートを少量摂取する形式である。
若い女性と子供の肥満が世界的な健康問題として認識されていることを考慮すると、より健康的な栄養習慣、より健康的なライフスタイルへの介入が極めて重要であることをこのデータは強調している。世代間ライフサイクルを最適化し、小児の糖尿病、心血管疾患、内分泌疾患、自己免疫疾患、がんの発症可能性を抑制する必要がある。
当院では最適な栄養戦略とトレーニングプログラムをデザインし皆様にご提案しています。
将来的に妊娠・出産をお考えで、中長期的な健康度を重視したい方は是非当院のパーソナルトレーニングをお試しください。