スポーツ障害におけるハムストリング損傷・・・受傷される方多いですね。
最近だと日本人NBA選手や同僚の選手がハムスト損傷で離脱が話題になった。
ハムストリングス損傷は頻繁に再発するため、最もポピュラーで破壊的な損傷の1つと考えられている。
ストレッチをすれば予防になるかといえばそうとも言えない。ヨガやダンスなど、筋肉を大きく伸長するジャンルでも発生する。
男性アスリートは、女性アスリートよりも64%急性ハムストリングス損傷を受ける確率が高いことがわかっている。これは体の構造的な特徴によるものかもしれない。
ハムストリングスの損傷の多くが大腿二頭筋近位部で起こる。
ハムストリングス損傷の57~72%はスプリント中に起こると報告され、このうち94%近くが大腿二頭筋長頭に発生している。
なぜハムストリングス損傷は近位部で起こりやすいのか、その理由やメカニズムは不明。
損傷も、平行断裂、組織の剥離、筋繊維の不整列など多岐にわたり不明な点が多い。
ハムストリングス損傷の根本的なメカニズムを探った研究者たちは、歩行周期における遊脚期における筋-腱の長さと力発揮の不一致に焦点を当てているが見解は一致しない。
ハムストリングスの形態的・連結パターンの多様性は、筋緊張下で不均質な負荷を示すことから、不均質な荷重条件下では腱-骨接合部付近の構造の剥離につながりやすいのかもしれない。
またハムストリングスは複数の関節にまたがるためハムストリングスの機能不全は、運動中の多関節動作を行う際に傷害を引き起こす可能性があり、構造的特徴も多くの損傷がそれらの構造付近で発生する主な理由であると考えられている。
・半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋の長頭は二関節性で大腿二頭筋短頭は単関節性。
歩行周期において股関節伸展と膝関節屈曲に不可欠なハムストリングス二関節筋群は、動力不足や受動的伸展不全といった機能不足を有する。具体的には、股関節伸展の際に膝関節屈曲力が弱くなり、膝を屈曲させた際は股関節伸展力が弱くなる。
・スプリントでは母指球で地面に接地して前進する勢いをつける。前方に素早く振り出し、より強い前進力を得るために、脚を後方に振り出すことで地面に触れる動作をより積極的に行う。
この急性屈曲活動と伸展活動の間でハムストリングス機能が急激に変化することで、急性障害を引き起こすと推測されている。
・スプリント中の突発的ミスや異常動作の持続はハムストリング損傷の重要な危険因子。
最大速度での加速やスイング時のハムストリング筋の機能的要求の違い(協調性や刺激の強さの非同期性によるもの)も危険因子となる。
また、形態的多様性や組織要素の違いによる構造的な違い(筋骨格系にかかる負荷が異なることに起因)も潜在的危険因子となる。
・ハムストリングス損傷は頻繁に再発し、障害が長引くため予防が重要。
最も効果的な予防プログラムを具体的に定義するために行われたメタアナリシスの結果、ノルディックハムストリングエクササイズはハムストリングス損傷発生率を減少させる効果があることが示唆された。
ノルディックハムストリングエクササイズを傷害予防プログラムの一部として使用したチームは、ハムストリング損傷発生率を最大51%減少させた。
別のデータでは、等速性エクササイズや敏捷性を加えたエクササイズを行うことで、ハムストリングス損傷発生率が減少することが確認されている。
・歩行周期やスプリント中に骨盤前傾や胸椎側屈が著しく大きくなることは、いずれも突発的または持続的な不正動作や動作異常につながり、ハムスト損傷や再損傷の要因として反論の余地はないと思われる。また、加速時や最高速度でのスイング時のハムストリング筋の機能的要求の違いもリスクファクターとなる
・ハムストリングス損傷の多くは急性損傷で、大腿二頭筋に現れる。
ハムストリングス腱の形状の違いが急速な筋収縮の際に異なるストレス状態をもたらす。
多くの損傷がこの部位で発生する主な理由として、多関節にまたがる解剖学的特性や、機械的特性の異なる組織器質間コンプライアンスが複雑に絡み合うことで、急激な応力条件下では接合部付近で筋組織が剥離しやすくなることが挙げられる。
・スプリント時にハムストリングスが同心収縮から偏心収縮に急激に切り替わる際、膝伸展状態で大腿を前に振り出そうとすると急激な偏心収縮が起こりハムストリングスに負担がかかりやすくなる。スイング中の脚の不必要な過伸展には最大限の注意を払い、スイング中の股関節の角度と膝の角度を適切に保つようにすることが重要。