月経困難症/月経痛は原発性と続発性に分類され、月経時の疼痛症状は下腹部のみならず腰や大腿部にまで及ぶ。
続発性月経困難症の症状は子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、骨盤内炎症性疾患など様々な解剖学的病態に起因する。
月経痛の程度は腎疝痛と同じくらい強いと報告されており、身体的・社会的機能、感情・精神衛生への影響、健康に対する一般的認識の低下などさまざまな側面に影響が及ぶ。
月経困難症の現在の標準治療は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と経口避妊薬(OCPs)だが、NSAIDsには消化性潰瘍、肝障害、腎障害、アレルギー反応などの副作用があり、OCPはPGレベルを低下させるが、排卵を抑制するため血液凝固亢進傾向が強まる。
月経困難症状を緩和する非薬物療法の有望な候補としては、定期的な運動、温熱パッドの局所的使用、ショウガ、シナモン、クルクミン、魚油、ビタミン、ミネラルの摂取がある。
また、ビタミンD/ビタミンD3(Vit. D)はその抗炎症性から月経困難症に対するもう一つの有望な治療法として注目されている。
Vit. D受容体(VDR)遺伝子は月経機能障害の病因に関与していることがわかっており、Vit. Dは月経困難症症状緩和のための実行可能な治療法と考えられている。
筋肉の過収縮はカルシウム流入に関係しており、カルシウムは筋収縮安定化剤として神経シグナルと関連する月経困難症症状を調節する可能性がある。カルシフェロールとしても知られるビタミンDはPGレベルとカルシウムホメオスタシスを調節することから、その経路からも月経困難症症状を緩和する可能性がある。
リンクの研究は、原発性月経困難症の症状緩和におけるビタミンD(vit. D)補給効果を評価したもの。
メタアナリシスには695人が参加した8件のランダム化比較試験が含まれた。
結果
月経困難症の患者において、痛みの程度はビタミンD投与群でプラセボ投与群より有意に低かった。
1週間の平均ビタミンD投与量が50,000IUを超えると痛みが軽減することが明らかになった。投与期間が70日以上であるか70日未満であるか、また投与間隔に関わらず月経困難症は緩和された。
vit. D投与が原発性月経困難症患者の疼痛レベルを大幅に軽減したことから、vit. D補充は月経困難症の疼痛症状を緩和するための代替治療法であると結論。
・Vit. Dが欠乏している原発性月経困難症の女性への補充は、月経困難症に関連する疼痛の重症度を軽減した。また、Vit. D補充は鎮痛剤の使用を減少させ、血清25(OH)Dレベルを上昇させた。血清25(OH)D濃度と疼痛強度との間に有意な負の相関があることは特筆すべき所見。
・月経5日前に300,000IUのvit. Dをローディング期として単回投与し、その後60~120日間の持続期間を設けることで、原発性月経困難症の痛み/苦痛の程度を効果的に緩和することができた。
・ビタミンDD欠乏症(<12ng/mL)と月経困難痛のスコア、およびその他の月経症状である抑うつ、疲労、頭痛との間には臨床的に正の相関関係が認められた(トルコ人女性を対象とした研究(サンプル数683))。
・原発性月経困難症はカルシウム摂取不足とVit. Dレベルと関連している。25(OH)D介入はカルシウムのホメオスタシスを変化させ、原発性月経困難症の病因を調節する。カルシウムの流入は平滑筋の収縮/弛緩の調節に関与しているため、血中カルシウム濃度の低下は子宮平滑筋の収縮につながる。1000mgのカルシウム介入は患者報告による疼痛を減少させることが報告されている。
・月経困難症は重要因子であるプロスタグランジン(PG)に関連しており、そのレベルは月経困難症患者の月経液中で高いことが判明した。PGは子宮細胞膜のオメガ6脂肪酸に由来する。月経前にプロゲステロンが減少するとオメガ6脂肪酸、特にアラキドン酸が放出されて子宮内でPG形成のカスケードが引き起こされる。それらのPGは炎症性で子宮けいれんと吐き気、嘔吐、頭痛などの全身症状を引き起こす。特にPGF2αとPGE2は強力な血管収縮(VC)と子宮筋収縮を引き起こし、子宮虚血(原発性月経困難症の原因)を引き起こし、痛みを引き起こす。
ビタミンDはいくつかの経路を介して子宮組織におけるPG産生を低下させる。
・子宮過収縮からなる月経困難症は、カルシウム流入によって誘導されるミオシン軽鎖キナーゼ活性化に寄与している可能性がある。、生体外モデルにおいて、ビタミンDはL型カルシウムチャネルに関連した収縮と放出されたカルシウムを緩和することがわかっている。
・最近の報告では、最適な25(OH)D値は30~150ng/mLであることが示唆されている。
30,000IUを週1回投与した場合、参加者の95%でビタミンD濃度を30ng/mL以上に上昇させた。対照的に1日1000IUの低用量投与では参加者の14%しか望ましいビタミンDレベルである30ng/mLに到達できなかった。
・推奨される1日の経口ビタミンD投与量は600IU/日である。国際骨粗鬆症財団(International Osteoporosis Foundation)は高齢者に1日800~1000IUを推奨している。
内分泌学会(Endocrine Society)のClinical Practice Guidelineは、成人に対して1日1500~2000IUのvit. Dを推奨している。