血糖や低悪性度慢性炎症と同様に、TMAOのような腸内細菌代謝産物は心臓病リスクを媒介する上で血中コレステロールや血圧よりも重要かもしれない。
米国タフツ大学の興味深い研究。
動脈硬化性心疾患(ASCVD)に対する動物由来食品(ASF)の影響とそのメカニズムについてはまだはっきりとわかっていない。
リンクの研究は、様々なASFとASCVD発症との関連、および腸内細菌叢産生物と従来のASCVDリスク経路による媒介の可能性を検討したもの。
65歳以上の米国人参加者3931人を対象に、ASF摂取量およびトリメチルアミンN-オキシド関連代謝物を経時的に測定。
12.5年の追跡期間中にASCVD(心筋梗塞、致死性冠動脈疾患、脳卒中、その他のアテローム性疾患による死亡)の発症を判別。
未加工赤身肉、赤身肉、総ASFの摂取量が多いほどASCVDリスクが高かった。
トリメチルアミンN-酸化物関連代謝物がこれらの関連を有意に媒介していた。
加工肉の摂取はASCVDの上昇に有意でなかった。
魚、鶏肉、卵の摂取も有意な関連を示さなかった。
血圧や血中コレステロールではなく、血糖値、インスリン、CRPがそれぞれ赤身肉とASCVDの関連を有意に媒介した。
Dietary Meat, Trimethylamine N-Oxide-Related Metabolites, and Incident Cardiovascular Disease Among Older Adults: The Cardiovascular Health Study
・肉の摂取量の多さがASCVDの発症と関連し、赤身肉に豊富に含まれるL-カルニチンの微生物叢由来の代謝物が部分的に介在していた。この新しい知見は、食肉、腸内細菌叢経路およびASCVDの間の生化学的関連を支持する。
・肉の摂取量が多いほどASCVDリスクが高くなることが明らかになった。
1日あたり約1.1サービング(一食分として食べる量)ごとにリスクが22%高くなり、このリスク上昇の約10%は肉に豊富に含まれる栄養素から腸内細菌によって生成される3つの代謝産物(TMAO、γ-ブチロベタイン、クロトノベタイン)レベルによって説明された。
・肉の摂取によるASCVDの高リスクは、血糖値とインスリンのレベルによっても部分的に媒介された。加工肉の場合、血圧や血中コレステロールレベルではなく全身性炎症によって媒介された。
・より高いリスクと腸内細菌代謝物との結びつきは赤身肉摂取で認められたが、家禽類、卵、魚では見られなかった。
・動物性食品を選択する際に、総脂肪、飽和脂肪、またはコレステロールの違いに注目することはそれほど重要ではなく、動物性食品に含まれるL-カルニチンやヘム鉄の影響についての理解がより重要であることを示唆している。