本日のブログは、妊娠糖尿病(GDM)管理において重要な栄養学的アプローチについて。
食事はGDMリスクに重要な役割を果たし、イノシトール、ビタミン、ミネラル、脂肪酸、プロバイオティクスといった栄養補助食品はGDM治療に安全かつ効果的な手段であると考えられている。
食物繊維も糖尿病治療のために重要視されている栄養素の一つで、最近のメタアナリシスでは、高繊維食は血糖コントロール、脂質、体重、炎症マーカーを改善し、早期死亡を減らすことが示されている。
どの食物繊維タイプ、用量、どのタイプの糖尿病でも有意な効果があるが用量依存関係があり、繊維摂取量を1日15または35g増やすことが妥当とられている。
一般に食物繊維は、植物の可食部またはそれに類する炭水化物で、アラビノキシラン、イヌリン、ペクチン、ふすま、セルロース、β-グルカン、レジスタントスターチに分類される。
食物繊維の健康効果のメカニズムは、腸の粘性、栄養吸収、伝達速度、短鎖脂肪酸の生成、腸内ホルモンの生成の変化と関連している。
中国の9317名の女性を対象とした解析では、妊娠前の食物繊維摂取量が多い女性は妊娠糖尿病発症リスクが有意に低いことが判明している。
また、妊娠中のグリセミック・インデックス(GI)またはGL値増加と食物繊維摂取量の減少は、空腹時血糖値、糖化ヘモグロビン、インスリン抵抗性発現不良と独立して関連していた。
さらに、妊娠中期における各種食品に含まれる食物繊維の摂取は妊娠糖尿病(GDM)リスクと関連する可能性がある。
特に、総繊維と果物繊維が豊富な食事は血糖値の改善に役立つと考えられる。
ブルーベリーおよび水溶性食物繊維サプリメントは、肥満女性におけるGDMリスクを低減させたことが示されている。
食物繊維のGDM予防・改善効果は多くの研究で報告されているが、食物繊維の追加摂取や食物繊維の種類・用量の違いによるGDMへの影響についての研究は少ない。
リンクの研究は、食物繊維強化がGDMの血糖コントロール、脂質、妊娠転帰、新生児転帰の指標に及ぼす影響を評価し、食物繊維の種類と強化量の違いがこれらの転帰に及ぼす影響を検討したもの。
結果
食物繊維の強化は、空腹時血糖値、食後2時間血糖値、糖化ヘモグロビン、TC、TG、LDL-Cを有意に減少させることがわかった。
また早産、帝王切開分娩、胎児苦痛、新生児体重を有意に減少させた。
食物繊維の種類と量を比較した分析では、不溶性食物繊維は水溶性食物繊維よりも空腹時血糖の低下に効果的だった。
1日12g以上の食物繊維は、1日12g未満よりも血糖値、脂質レベルおよび妊娠転帰の改善に効果的である可能性がある。
*食物繊維強化食の血清グルコースに対する効果
・食物繊維は糖尿病患者における食後グルコースおよびインスリン反応の制御に重要な役割を果たす。
食物繊維の摂取は健常者において胃排出を遅らせ、同様に2型糖尿病患者で胃排出を遅らせることは食後グルコースの改善と関連している。
短期間の介入期間中に水溶性食物繊維の摂取量を増やすと、糖尿病患者の血糖値、インスリン抵抗性、および代謝プロファイルが有意に改善したが、膵島分泌は改善されなかった。
不溶性オート麦食物繊維も血糖に効果的に作用し、単独でも空腹時血糖値が低下している被験者で顕著な効果がある。
・食物繊維の種類によって、炭水化物の取り込みと代謝に違いがある可能性がある。
中国人の研究では、果物からの食物繊維は糖尿病予備軍と負の関連があることが明らかになった。総食物繊維、水溶性食物繊維、果物からの食物繊維の摂取は糖尿病前症のリスク低下と関連していた。
・メタ解析の結果、食物繊維の強化は妊娠糖尿病患者の空腹時血糖、食後血糖、糖化ヘモグロビンを有意に改善する。
不溶性食物繊維は空腹時血糖の改善効果が高い可能性がある。
・日本では食物繊維摂取量が多いほど、2型糖尿病発症リスクが低いことが研究で示されている。食物繊維摂取量と2型糖尿病リスクに関する研究では、食物繊維の総摂取量と2型糖尿病リスクとの間に非線形関係があることが示された。食物繊維の強化は12g/日以上だと12g/日未満よりも空腹時血糖の改善に有効で、食後2時間血糖には有意差がなかったことが示された。
*食物繊維強化食が脂質代謝に及ぼす影響
水溶性食物繊維の摂取によりコレステロール値やLDL値は5〜10%程度低下するが、HDL値やトリグリセリド値の変化は小さく、高分子食物繊維の方が脂質値の低下に効果的であることが分かっている。
食物繊維の脂質低下作用には食物繊維の粘性が関係していると考えられ、食物繊維の粘性が高いほど脂質低下作用が優れていると考えられる。
食物繊維の摂取量も血中脂質に影響を与える。
食物繊維の摂取量の減少は、糖尿病患者においてコレステロール値およびLDL値と正の相関があった。
・妊娠前の食事パターンも妊娠中の脂質値と関連しており、ファーストフードやお菓子のパターンスコアが高いと妊娠中のトリグリセリド値が高くてHDL-Cの変化が遅く、野菜や乳製品の食事パターンスコアが高いと妊娠中のHDL-C変化が速いとされている。
この研究の結果、食物繊維摂取量が多いほど血中脂質低下効果が高い可能性が示されたが、両群間の差は統計的に有意ではなく、両群の食物繊維の強化が推奨摂取量をはるかに超えている可能性もあり、食事などの交絡因子を除外する必要がある。
*食物繊維強化食の妊娠および新生児予後への影響
・妊娠初期の食事介入は、母親の消化管指数、栄養摂取量および妊娠中の体重増加にプラスの影響を与える。食物繊維の摂取量増加は母親の過度の体重増加を防ぎ、乳児の出生時体重を減少させる可能性がある。
妊娠前の食事パターンも新生児の転帰と関連しており、野菜や乳製品の食事パターンは早産の可能性を低下させた。高脂肪・低繊維の加工食は腸内細菌叢のα多様性を低下させ、自然早産に影響を与える。
食物繊維は早産、帝王切開の発生率を低下させ、新生児体重も有意に減少させた。