変位株感染拡大が止まらない。
コロナへの感染はヒトにとって強いストレス刺激で、高レベルのリスク知覚、恐怖、怒りを誘発する。同時に、政府が主導するロックダウンや自宅隔離といった政策は、社会的孤立と人体の不活化を誘発し、精神的・行動的にネガティブな反応を引き出す可能性が高い。
パンデミックによる社会的孤立は、座りっぱなしの生活など身体活動の低下、睡眠パターンの乱れや食生活の変化など、ライフスタイルに大きな影響を与えている。
その結果、深刻な精神的・感情的反応が見られるようになった。
また、余暇の過ごし方、社会活動、教育レベルなどが著しく低下した。
子供におけるパンデミックの副次的な影響は、栄養不足による過体重や低体重のリスク増加、デバイス(スクリーン)中毒、学校教育の欠如、心理社会的障害などが挙げられる。
高齢者においては、閉鎖的な環境に適応できずうつ病や認知機能障害などの症状が現れる。
ご紹介するのは、PubMed/Medline、Scopus、Embase、ScienceDirectなど入手可能なすべての文献で、Covid-19パンデミック時のライフスタイルの変化とメンタルヘルスへの影響に焦点を当てた最近の研究のレビュー。
本レビューの結果、COVID-19パンデミックは健康的で活動的なライフスタイルに悪影響を及ぼし、その結果、精神的健康や生活の質が低下したことが多くの研究で認めらた。社会的孤立による精神的苦痛は、性格的特徴だけでなく、いくつかの生活習慣(睡眠障害、食習慣の変化、身体活動の低下)にも関連していることが示唆された。
一般人や高リスク群に対して、それぞれのニーズに合わせたメンタルヘルスの予防、診断、治療の介入が緊急に必要とされていると結論。
Will Nothing Be the Same Again?: Changes in Lifestyle during COVID-19 Pandemic and Consequences on Mental Health
・パンデミック下でもより多くの身体活動を行い、健康的な食生活や睡眠習慣を身につけている人は、精神的にも肉体的にも健康な状態にあると考えられる。
・パンデミック下の不健康な生活習慣は、慢性疾患の発症に関係する。身体的制限や効果的でない体重管理は,ストレス,不安,抑うつと頻繁に関連している。身体活動、睡眠、食行動、時間の使い方、メンタルヘルスの劇的な変化には前例がなく、世界的にパンデミックが生活様式とうつ病の関連性を強めていると指摘する著者もいる。ロックダウンやcovid-19への恐怖によって誘発される心理社会的症状は、被験者の心身の正常な機能を強く制約し、日常生活の活動を著しく悪化させる可能性がある。特に思春期は、大人になるための生理学的な発達の著しい変化を特徴とする人生の重要な時期であり、将来の健康を保証するために健康的な生活習慣を守ることが重要である。
・家に閉じこもっている時間が長くなるほど、その結果として生じる精神的、感情的、生活習慣上の問題が激しくなるようだ。パンデミックの副次的な被害として、過体重や低体重のリスクを伴う不十分な栄養状態、デバイスへの依存、社会的孤立、睡眠の妨げ、座りがちになることによる身体活動の低下などが挙げられる。COVID-19の発生によるこれらの間接的な影響は、特に脆弱なグループのメンタルヘルスに影響を与える可能性があり対策が必要。
・ロックダウン中は健康的な食事など、体重増加に対する行動の達成・維持することが難しくなる可能性が高い。食生活の多様性の低下、ロックダウンによる消費パターンの乱れ、不安障害の症状の上昇、身体活動レベルの低下、体重増加の自覚は太り過ぎや肥満のリスクを高める。家にいる時間が長くなると、座りっぱなしに加えて、間食が増える。(アルコールも)
・英国で実施された調査では、参加者の79%が、健康的な食事、暴飲暴食、運動、睡眠、飲酒のうち、少なくとも1つが低下したと報告している。特に精神疾患の診断を受けている被験者や肥満の被験者は、COVID-19危機において体重増加のリスクが高まる結果となった。
スペインの研究では、数カ月の自粛期間中の感情的な食事摂取、「食への渇望」(特定の種類の食べ物を摂取したいという欲求)、退屈や不安を補うための食事の増加が、体重の増加とともに観察された。
肥満や精神的な問題を抱えながら生活している人は、COVID-19危機の際に体重増加に関連する生活行動を示すリスクが高まる可能性がある。
・ソーシャルディスタンスやテレワークは、日中の座っている時間の増加に加えて身体活動に従事する時間の減少、身体活動へのモチベーションの低下、疲労感を助長する可能性がある。定期的な身体活動が、糖尿病、高血圧、心血管疾患、がん、慢性腎臓病、肥満、変形性関節症など、いくつかの慢性疾患の予防に役立つことはよく知られているが、裏を返せば身体活動が低下すると体重が増加し、炎症性疾患や心血管疾患などの病気のリスクが高まり、その結果、感染症に罹患するリスクも高まるということである。
・定期的な身体活動は精神的な健康を守り、生活の質を高める。精神的健康と身体的健康は強く関連し、互いに影響し合っているため、身体活動への参加を維持・強化することで自主隔離/孤立に関連する抑うつ・不安症状を軽減できる可能性がある。
・パンデミック中に運動量の減少を報告した妊婦は、変化がなかった妊婦に比べて、産前うつ病のスコアが有意に高かったことが指摘されている。
・運動はより健康的な栄養の選択(果物、野菜、魚)につながる。
・男性よりも活動量が少ない女性は注意が必要である。女性は男性に比べて全身性不安を有意に多く経験し、精神的健康度のスコアが有意に低くなっていた。
・短期的な介入による身体活動の回復はメンタルヘルスを改善するのに十分ではなく、より長期的な介入が必要であることが観察されている。適切なレベルの身体活動を維持または導入することは、パンデミックに関連する精神的および身体的問題を軽減する可能性が高いことが実証されているため、この困難な時期に身体活動の安全な実践を促進することは、より良い精神的健康と幸福を促進するための公衆衛生上の優先事項であるべき。
・ロックダウン下では、世界中の多くの人々が睡眠障害に襲われた。家に閉じ込められたことによる日常生活の喪失、仕事や家族の習慣、経済的な不安、自然光を浴びる機会の制限、運動する機会の減少などが、睡眠に悪影響を及ぼしている。日々のスケジュールの変更は、概日リズムとエネルギーバランスに大きな影響を与えている。観察される睡眠症状は、不眠症/睡眠障害、日中に不意に居眠りをするなどの日中の症状、入眠/就寝困難、就寝時刻の遅延、睡眠中の異常行動、睡眠時呼吸障害、レストレスレッグス、悪夢などである。
・韓国で行われた研究では、メンタルヘルスへの影響(抑うつ症状と不安)は、入眠困難、睡眠障害、悪夢、日中の眠気と最も強く関連していた。睡眠の質の悪化は座りがちな行動(身体活動の低下、テレビの大量視聴、パソコン・タブレットの大量使用)とメンタルヘルス指標(孤独感、悲しみ、不安)との関連性が示唆されている。
・ロックダウンによる学校の閉鎖によって子どもたちは、教育環境、社会活動、仲間との接触を長期間にわたって奪われており、感情、認知、身体的な刺激が著しく減少している。身体活動の減少、座りっぱなし、スクリーンタイムの増加、カロリーの高い甘い食べ物の消費、その結果、体重増加の可能性が高くなり、小児肥満の大きな問題を助長している。
・長期にわたる運動の制限が、青少年の健康の重要な特徴である心肺機能に悪影響を及ぼす懸念がる。