先日のブログで書いて以降も、頭痛のご相談が続いている。
今年に入ってから頭痛の治療をしない日はなかったなのでは?というくらいの頻度。
食いしばりによる顎関節の緊張や肋骨の機能低下も併発しているケースが多く、細かい触診と関連部位の総合的な治療が必要なケースばかり。
顎関節の症状に自覚がある方は、放置して慢性化→治癒スピードの鈍化の前にお早めに当院にご相談ください。
さて、本日のブログは慢性腎臓病(CKD)とDIIの関連性についてのデータをまとめてみたい。
腎臓のスコアに不安がある人にとって、食事要因に関する知識を常にアップデートすることは症状の悪化を防ぐ上で非常に重要だろう。
1990年から2016年の間にCKDによる死亡率は100%上昇し、世界的に非伝染性疾患の死亡原因の上位を占めるようになった。近年では顕著な高齢化に伴って、CKDを患う高齢者が増加している。CKDの予防と治療のためには、中高年者におけるCKDの根底にある原因を積極的に探ることが極めて重要といえる。
食事は炎症過程の調節に中心的な役割を果たし、様々な慢性疾患の発生と進行に密接に関係している。食事性炎症指数(Dietary Inflammatory Index:DII)は個々の食事の炎症可能性を評価するために広く用いられている指標で、45の食品栄養素から構成されている。各食品パラメータは、炎症性マーカーであるインターロイキン-1β(IL-1β)、IL-6、腫瘍壊死因子α(TNFα)、C反応性タンパク質(CRP)、および抗炎症性マーカー(IL-4、IL-10)に対する影響に従ってスコア化されている。「1」は抗炎症効果を、「+1」は炎症促進効果を、「0」はその食品パラメータが炎症マーカーに影響を及ぼさなかったことを示す。重要なことは、DIIは1つの栄養素や食品だけでなく複数の食事成分の複合的影響を評価することで、DIIスコアが正であれば炎症促進食を、負であれば抗炎症食を示し、絶対値が大きいほど抗炎症・炎症作用が強いことを示す。
肥満、糖尿病、心血管系疾患など多くの炎症性疾患はDIIスコアと相関関係があることが報告されている。CKDにおいても全身性低悪性度炎症は重要な発症プロセスの1つであり、患者の食事状態に影響される。
しかし、中高年集団におけるDIIとCKDの関連を調査しした研究はこれまでほとんどない
リンクの研究は、40歳以上の中高齢者における食事性炎症指数(DII)とCKDとの関連を検討すしたもの。
99年から2018年までの10周期の国民健康栄養調査(NHANES)で構成。
DIIとCKD、低EGFR、アルブミン尿との線形関連は多重ロジスティック回帰を用いて検討し、非線形関連は平滑化曲線フィッティングにより評価。
【結果】
23,175人の中高年のうち5,847人がCKDに罹患し、すべての共変量で調整した結果、DIIスコアの上昇はCKDのハザード上昇と正の相関を示し、DIIと低EGFRの間でも同様の結果が示された。DIIをカテゴリー変数に変換した後も、この相関は維持された。
また、年齢、性別、BMI、喫煙の有無、高血圧の有無、糖尿病の有無が異なっても一貫しており、有意な層別差は認められなかった。
共変量で調整後では、DIIとアルブミン尿との統計的に有意な相関は認められなかった。
完全調整モデルでは、DIIと低EGFRとの間にU字型の関連性が認められ、DIIが1.6のときにターニングポイントとなった。
【結論】
DIIのレベルが高い中高年者はCKDリスクが有意に高いことが示された。
グループのCKDリスクを減少させる上で抗炎症食が重要であることが強調された。
・米国の40歳以上の中高齢者23,175人におけるDIIとCKDの関係を評価。これらの中高年者においてDII高値がCKDおよび低EGFRリスクの高さと有意かつ正の相関があることを見いだした。この相関は、年齢、性別、BMI、喫煙の有無、糖尿病の有無、高血圧の有無の層別で安定しており、有意な層別差はみられなかった。DIIと低EGFRの間にはU字型の関係があり、その転換点は1.6だった。
・食事誘発性炎症と慢性疾患との関連は、先行研究の数々で示されてきた。DIIが関節リウマチリスクと正の相関があり、他のリスク変数と重なっていることを発見した研究もある。
・メタ解析では、DIIスコアが大きいほど大腸がんリスクが上昇する可能性があり、閉経後女性では卵巣がんのリスク上昇と強く関連していることがわかっている。
・DIIスコアが高ければ高いほど、その食事は炎症性であるということに注意する必要がある。
従って、バランスのとれた抗炎症性の食事の摂取が癌の発症リスクを低下させる可能性がある。
・食事が心血管系疾患(CVD)の発症に重大な影響を及ぼすことを示す研究が増えている。
米国の18歳以上の個人48,733人のを対象とした研究では、DIIの上昇がCVDの危険性を高める可能性が示された。この現象は女性により大きな影響を与えた。同時に、この集団におけるDIIと死亡率との相関を示す証拠も存在した。例えば、DIIは糖尿病の有病率と正の相関があり、炎症性化合物を多く含む食事は糖尿病患者の死亡率を高める可能性があることが示されている。
・ここ数年、DIIとCKDの間に一定の関連性があることが多くの研究で証明されている。
ある横断的研究では、DIIの上昇がCKD患者におけるサルコペニアの発症に寄与している可能性があること、そして抗炎症性食がCKDに関連したサルコペニアを予防する可能性があることを発見した。また、抗炎症食を用いた治療がCKD患者の副甲状腺機能亢進症の発症率を低下させる可能性も示唆されている。
・血漿中には抗老化タンパク質である可溶性Klotho(S-Klotho)が存在する。ある研究では、S-Klothoと、DIIに基づいて評価した40歳以上の炎症性食品パターンとの間に負の相関があることが示されている。
・DIIスコアが高いこれらの中高年者は、低HDLコレステロール、高血糖、メタボリックシンドロームに罹患する可能性も高かった。
・DIIとCKDに関する疫学的研究では、50歳以上の成人においてDIIスコアが高いほどCKDステージ3〜5のオッズが高いことが明らかになった。年齢、性別、民族の層別解析においても、その直線的相関は安定していた。
・平均追跡期間132.03ヵ月の大規模レトロスペクティブコホート研究では、米国のCKD成人集団において、死亡リスクはDIIスコアの高い人、特に65歳未満の人でより顕著であった。
・高カロリー・高脂肪食は肥満の原因となり、肥満が引き起こす慢性低悪性度炎症はCKDの発症因子の一つ。脂肪組織はTNF-αやIL-6のような脂質メディエーターやサイトカインを放出し、これが全身炎症を引き起こし、腎臓に直接ダメージを与える。長期の高糖質食による高血糖状態は、糖化最終産物(AGEs)の産生を誘発して炎症経路を活性化し、インスリン抵抗性を引き起こし、炎症の発症をさらに助長する。
・亜鉛、セレン、ビタミンCやEなどの抗酸化微量栄養素は、生体の健康維持に不可欠。不適切な食事はこれらの栄養素の欠乏を招き、腎臓を酸化ストレスによるダメージを受けやすくする。
また、慢性的な高塩分食は腎小動脈の構造と機能を変化させる可能性があり、高塩分摂取はマクロファージの免疫活性化を独立して促進して炎症を悪化させ、腎臓機能の悪化を伴うことが示されている。